得意分野のITを活かし、職域開発に配慮した障害者雇用
1. 事業所の概要
サンケンビジネスサービス株式会社は、サンケン電気株式会社のグループ起業向けシェアードサービス会社として、平成17年に設立された。
主な業務内容は、給与計算、福利厚生、経理、情報システム、技術情報調査などのサービス業務である。現在社員数は 130名 （本社・川越オフィス・新座事業所・東京オフィス・大阪オフィス）で、重度視覚障害者1名を雇用している。
親会社であるサンケン電気株式会社は、埼玉県新座市に位置しサンケングループの本社としてグループ28社を統括している。管理・技術・生産・品質に関するグループの中心的機能があり、クリーンルーム棟を有する半導体技術センターは、最先端の半導体の技術開発を行っており、パワーモジュール製品の技術開発部門とともに両技術の融合による新製品開発などが進められている。
2. 障害者雇用の経緯
（1）きっかけ
視覚障害者の就職が厳しいと言われる状況の中、面接時において高いパソコンスキルと本人の熱意が決め手となり平成16年1月にサンケン電気株式会社に採用となる。視覚障害者のための専門学科を持つ「筑波技術短期大学」の卒業生で、ITに関する技術を持ち合わせており、正社員として登用される。平成18年1月、所属部門の移管に伴い同じ敷地内のサンケンビジネスサービス株式会社へ転籍となる。
（2）業務内容
・人事・総務事務（グループ関連）
・保険代理店業務
・情報サービス（技術・情報調査等）
3. 取り組みの効果
サンケンビジネスサービス株式会社の社屋がバリアフリー設計で、物理的なバリアーは存在しない。ノーマライゼーションの精神で、特別扱いせず待遇面も他の社員と同等に扱っているが、一般的に障害者というと勝手にイメージを作ってしまいがちだが、サンケンビジネスサービス株式会社内では必要以上に介助せずに他の社員の中でとけ込んで仕事をしている姿は、良い影響を与えている。健常者と同じ処遇や評価で日々仕事をこなし、技術力も同じで成果も上げている。
開発の仕事を任され、社内システムの変更も責任を持ってこなし、リリースしている。本人もやりがいを感じながら取り組んでいる。
＝障害のある社員のコメント＝
今のところ勤務に当たって、特に困ったり、問題となることはありません。
仕事を一通りの流れのなかで、完結した形で、任せてもらえるので、責任も発生し、業務をこなすための知識も必要となって、とてもやりがいがあります。
4. 定着への配慮
就労支援機器を導入
本人の意向を尊重し、助成金を活用し就労支援機器を整備する。
(ア) 活用した制度や助成金
Aさんの雇用に際し、第1種作業施設設置等助成金
(イ) 画面の大きなディスプレイ
実務上、一般の人といかに同じように職務遂行ができるかという点で、周期的に取り替えながら、新しい機種に変更して、画面の拡大で対応している。
他の社員とのコミュニケーションを重視したソフト面での配慮
挨拶・声かけは、特に視覚障害者に対しては、会話の前に必ず名乗るように配慮している。
(ウ) 部内会議
他のPCやプロジェクター等を使用することもあるので、直属の上司と一緒にプログラムの内容や細かい部分を確認する。また、本人が見やすい位置に立って、会議を進行するように配慮している。
5. まとめ
本人の持つ専門的な知識や能力を活かし、ITをツールとして働くことができ、自分の好きな分野で働くことで収入を得ることのできる環境があり、採用する側の意識の転換や自然な受入れ体制を構築することで、雇用の機会が拡大することに繋がっている。
6. 今後の展望
「特に何もしていない」との言葉に、有能な人を受け入れ、共に仕事をしていくのは当たり前という姿勢が感じられる。障害者を特別扱いしないことで相互の信頼関係も築けている。今後障害者雇用を拡大していくうえで、パソコン関連の仕事をより積極的に拡大していきたい意向である。
パーソネルグループリーダーは、障害者雇用について次のように話す。
「障害のある社員と接するようになってから、周囲の社員がこれまで以上にやさしくなり、気配りするようになりました。このことが、職場の雰囲気を変え、また、障害のある社員の元気な挨拶は、私たちのほうが見習わねばなりません。」
障害者雇用を推進することで、障害のある社員とともに働く経験により障害者の働く力を正しく理解する社員が増え、今後、さらに障害者雇用が展開し、増えることが期待できる。
障害者の「働きたい」という熱い願いを叶えることを通し、企業の社会的責任を果たしつつ、同時に業績も上げていく企業経営を今後も続けて頂きたい。
執筆者 ： 埼玉県障害者雇用サポートセンター 企業支援アドバイザー 岡浜 君枝
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