事業所名

株式会社ビジネスプラス

所在地

東京都府中市

事業内容

親会社もしもしホットライン各部門からの受託業務：経理・総務・人事のデータ入力・処理、ソフトウェア開発、マーケティングサービス、広告代理、資産管理、派遣（喫茶コーナー）、清掃

従業員数

75名

うち障害者数

63名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	1	清掃及び補助
聴覚障害	2	ソフトウェア開発、経理事務
肢体不自由	6	ソフトウェア開発、経理事務、総務・人事関係事務
内部障害	2	総務関係事務
知的障害	49	喫茶、清掃、シュレッダー処理、紙漉き
精神障害	3	総務・人事関係業務、清掃、シュレッダー処理、紙漉

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 知的障害者の積極的な雇用拡大で企業にもたらされたこと
4. 採用と教育訓練
5. 定着について
6. 助成金の活用
7. 地域との連携と地域貢献活動
8. 現状の課題と今後の取組

1. 事業所の概要

(1)平成14年12月設立

(2)資本金　4,000万円｛（株）もしもしホットライン100%の子会社｝
    親会社の企業理念：顧客第一、品質重視、機密管理
    親会社の障害者雇用についての方針：ノーマライゼーションの実現

(3)基本理念：人権や地域の福祉に配慮し、ノーマライゼーションの推進と障害者の自立支援を行う

2. 障害者雇用の経緯

（1）平成14年12月、特例子会社設立

平成13年の6/1調査での障害者雇用率が0.70%であったため、同年12月にハローワークから指導を受けたことにより、翌14年1月特例子会社設立の検討を開始した。

4月に人事室内に設立プロジェクトチームを設置、同チームでの調査、検討の後12月に会社を設立した。なお、設立稟議の際の設立趣意が、特例子会社の基本理念となっている。

（2）平成15年から平成17年までの障害者雇用（6/1調査）と業務内容

①業務指導上の苦労、配慮、指導法など

特例子会社を府中に設立するにあたり、少ない応募者の内、訓練校の寮から出て一人暮らしが必要となる内定者が2名おり、不動産会社を数件回ったが、快く引き受けてくれる会社がなく、ノーマライゼーションの程遠さを実感する。

やっと1社OKがでたが、会社契約でなければ不可との事で、就業規則に借り上げ社宅の項目を追加した（平成17年度の改定により廃止）。

設立時の社長以下取締役も、障害者と仕事をするのは初めてであり、事前に他の特例子会社を訪問のうえ、それを見習って身体障害者中心の会社運営を開始、親会社から業務を受託して、何とかスタートすることができた。

仕事量、納期なども余裕を持って対応できるよう親会社と話し合うと共に、聴覚、肢体不自由など障害の違いもあるので、コミュニケーション不足による誤解が生じないよう、話し合いの場を多く持つよう心がけた。

（3）平成17年10月から現在に至る職域開発

特例子会社設立後、約2年半が経過し、親会社と当社合算の実雇用率が約1.2%であったため所轄のハローワークから2度目の指導をうけた。17年6月に社長以下取締役の大半が交代となり、新体制の下、身体障害者だけでは法定雇用率の達成が困難と判断、17年度下期より知的障害者の雇用を開始し、19年度末には法定雇用率1.8%を達成すべく下記の職域開発と雇用の増大を図った。

1）平成17年10月から、親会社休憩室に喫茶コーナーを開設

①人員体制：健常者3名、知的障害者8名（早番8：00～15：00、遅番10：30～17：30の2交代制）

②販売体制と販売時間

③指導法のポイント

「やって見せ、言って聞かせて、させて見る」を指導の指針とし、「焦らず、怒らず、諦めず」に行う。くどいと思う程、噛んで含んで説明を繰り返し、今も朝礼で、接客用の挨拶と必要事項を繰り返し唱和している。

また、3連休等の後は、再度作業要領を説明することを念頭に、定着後も、全員が同様の業務ができるよう、以下の工夫も行った。

・コーヒー作りの水を、メンバーが一定量にできるよう、ペットボトルを利用して、ビニールテープで目印をつける。

・カウンターの準備を均一にできるよう、カウンター上の商品配置の写真を作成、掲示。

準備

ワゴンサービス

商品配置

2）平成17年10月から、シュレッダー一括処理業務を開始

親会社の主要フロアにシュレッダー用鍵付ポストを配置し、1日2回定刻に回収、その他のフロアは、内線により回収依頼があり、それを専用スペースで一括処理

①指導法のポイント

・作業時に、シュレッダーに手や名札を巻き込まれないよう、継続して実地指導。

・シュレッダーにかける紙にホッチキスの針がついている事が多く、1枚ずつ確認する事を義務づけた。

・シュレッダーに入れる枚数を決め、3枚ずつ入れるように徹底。

・シュレッダー回収時に台車を使用するため、周りの人や壁に気を配り、事故がない様に配慮させる。

3）平成18年4月に、牛乳パック再生利用による葉書作りを本格稼動

親会社から平成19年の年賀状を約3,000枚を印刷込みで受注

①指導法のポイント

・作業内容を分担制にして、一つの作業工程を何度も繰り返し行い、習得を図った。

・仕上げにアイロンを使用するため、火傷をしないよう指導を行った。

・完成品を厚さ、サイズ、ゆがみなどについてチェックし、徹底した指導を行った。

準備

紙漉き

アイロンかけ

4）平成18年5月から、清掃業務を開始

スタート時は、渋谷事業所で健常者2名、知的障害者4名、身体障害者1名・計7名で2つのフロア（957m2）を行っていたが、現在、渋谷、新宿両事業所で健常者9名（業務遂行援助者）、知的障害者39名、身体障害者2名、精神障害者2名、シルバー人材センターからの派遣者7名で、フロア数17（7，689m2）を行っている。清掃業務開始後2ヶ月目から指導員として、シルバー人材センターからの派遣を御願いしている。

勤務時間は、親会社の業務開始前に清掃を終了させる箇所もあり午前7時から午後2時としている。

清掃業務は、以前は外部委託であったが、徐々に内製化を図ってきた。

①指導法のポイント

・ゴミの分別を、手本を見せながらきちんと覚えるよう繰り返し指導。

・掃除機をかける際には、隅から行い前後に動かし、机の下も椅子を引いて行うよう繰り返し指導。

・最後に、ゴミの取り忘れや、ゴミが落ちていないかを確認するよう繰り返し指導を行い、自分の行った作業に対して、責任を持つ意識を高めるようにしている。

・チーム・グループを作り、床清掃・ゴミ回収・分別・束ねるなど各作業別に細分化し、各自が協力して作業を行う意識を醸成している。

・指示や注意を極力少なくし、みんなで話し合う機会を作り、自分たちで考え意見を出し合いながら、仕事を進めて行けるよう育成指導している。

目標

ゴミ回収

協力して作業

3. 知的障害者の積極的な雇用拡大で企業にもたらされたこと

(1)平成19年6／1調査では、8名がトライアル雇用中のため未達であったが、トライアル雇用終了後に7名が常用雇用に移行したため、事実上6月から法定雇用率1.8%を達成、その後も維持している。

(2)親会社社員の障害者への認識の変化によりノーマライゼーションの実現へ

①休憩室にある喫茶コーナーや出張販売で、日常的に障害者と接する機会が増えた事により、彼らの業務に対する認識も自然なものとして受け止められてきた。

②清掃も、以前業者にお願いしていた頃より丁寧にやってくれるとの評価を得、親会社社員も、障害者の力を認めている。

③挨拶の良さ、性格的に温厚であるなど、親会社の企業風土にも良い影響が出ている。

4. 採用と教育訓練

(1)東京しごと財団の委託訓練（実践コース）の活用　（1日6時間×16日＝96時間）

(2)上記の訓練合格者を3ヶ月、トライアル雇用にて採用

(3)実務教育とともに、ビジネスマナーと接客マナー等をOJTにて「焦らず、怒らず、諦めず」をモットーに繰り返し指導を行う。

①ビジネスマナーの概要

報告・連絡・相談の徹底と約束について、作業終了の報告、作業を忘れた時に自分の判断で行わず、必ず相談をする事など、この動作の反復で、正しい判断ができるように指導。

②接客マナーの概要

接客用語を毎朝の朝礼で唱和、「おはようございます。いらっしゃいませ。○○ですね、少々お待ち下さい。お待たせしました。ありがとうございます。」を行い、同時に、笑顔で接するように毎日繰り返す。

③社内ルール

・他の社員と同席の時等に大声で話したり、迷惑をかけるような行動やエレベーターの中では、私語厳禁など他の人に迷惑をかけないこと。

・挨拶は、笑顔でするように心がけること。

(4)地域の就労支援センターのジョブコーチの協力を得て、視覚を中心とした作業マニュアルを作成し、実務指導に活用

コーヒー等のつくり方

飲み物とカップ＆接客の仕方

5. 定着について

(1)喫茶、清掃合計で、17名の健常者（シルバー人材センターからの派遣者を含む）を配置し、総勢51名の知的障害等社員の作業指導や、各種の問題に関して相談やアドバイスを行っている。

(2)適宜地域の就労支援センターのジョブコーチと緊密な連携をとり、必要があれば、家族にも支援センターを通じて連携を図っている。

(3)定期的（3ヶ月毎位）に個人面談を実施し、個々人の仕事やプライベートの悩み、仕事上の喜び、苦しさ、楽しさ等も同時に聞き取りの上対応を図っている。

(4)障害者だけの話し合いをもつ機会を設け、仕事上の意識改善を試みてもいる。

(5)昨年は、会社の忘年会、暑気払い、カラオケ大会を実施。

以上の取組の結果、喫茶コーナースタートから丸2年以上経つが、現時点での退職者はいない。

6. 助成金の活用

特定求職者雇用開発助成金、障害者介助等助成金、重度障害者等通勤対策助成金、試行雇用奨励金等を活用している。

7. 地域との連携と地域貢献活動

(1)親会社周辺の道路掃除

知的障害者の社会貢献活動を通じ、彼等の社会参加とモチベーションを高めることを目的としている。

親会社周辺の清掃

(2)親会社がクラブスポンサーになっている「FC東京」の冠試合へ障害者の方々を100名招待。

8. 現状の課題と今後の取組

(1)現事業所において更なる職域開拓により障害者の雇用促進を図る。

(2)平成20年度計画として親会社の支社、支店に当社の拠点を開設してゆく。
（業務内容：清掃、シュレッダー業務など）

執筆者  ：  NPO法人障害者就業生活支援開発センターGreenWork21
副理事長  小林  幸夫