除外率対象業種にも拘わらず知的障害者雇用拡大中
- 事業所名
- 株式会社エルプラン関東
- 所在地
- 東京都府中市
- 事業内容
- 一般貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業、貨物軽自動車運送事業、自動車分解整備事業、倉庫業に係る荷役作業請負業務、労働者派遣事業等
- 従業員数
- 583名
- うち障害者数
- 14名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 フォーク作業、出庫、袋詰め 肢体不自由 0 内部障害 2 フォーク作業、出庫、袋詰め 知的障害 10 ケース組立、ケース開封、サンプル作成、空ケースの片付け 精神障害 0 - 目次

1. 障害者雇用に至るまで
【お話をうかがった方】

荷役管理課 課長
髙田さん

仙川営業所 所長
塚田さん

管理課長
情野さん
きっかけは、実習依頼の電話から
まだ障害者雇用に取り組んでいなかった頃、たまたまエルプラン関東所沢営業所に、ある養護学校から実習依頼の電話が入ってきた。今でこそ、“旗振り役”となっている荷役管理課課長の髙田さんも障害者雇用は初めてのこと。「知的障害」と言われてもピンとこなく、「来てもらっても、一体何をやってもらえばよいのだろう?誰が面倒を見るのか?」という不安があった。しかし、養護学校の先生からの「しっかりとまじめに取り組む生徒」という言葉で、まず、実習からやってみることにした。
当時は人手不足で、一般の募集をかけてもなかなか人が集まらなかった。今から10年ほど前のことである。
その後、武蔵野地域での障害者雇用は徐々に増え、雇用実績を作ったことで、髙田さんは「他の地域でも大丈夫。いけそうだ!」と感じた。髙田さんが他のブロックへ異動しても、養護学校とのつながりから実習を受ける様になり、雇用の展開が始まった。
「トップを意識啓発するため、何度も言い続けました。」
障害者雇用を進めるためには、現場の責任者に雇用する意識を持ってもらわなければならない。髙田さんは、早い段階から「企業も障害者を採用しなければいけなくなってきている。だから始めましょう」と、営業所長やブロック長が集まる会議の度に雇用の必要性を言い続けたが、なかなか賛同は得られない。それでもあきらめずに言い続けた結果、トップ(ブロック長)に意志が伝わった。今後、社員を一致団結させるためには、トップの一言が大事。トップのメッセージを下に落とせば、現場責任者は理解し、受け入れるようになる。「何回もしつこく言っていたら、『1回くらい話を聞いてみようか』と思ってくれます。」と髙田さんは話す。
意識啓発の次は、仕事探し
髙田さんは、「現場では必ずどこかに仕事はある、探し出してほしい!」「あの仕事はできそう。やってみて。」と、現場を巻き込んで仕事探しに取り組んだ。
始めは強制的であった雇用や仕事探しも、今では当たり前のようになり、「とても助かりました」と現場から逆に感謝されることもある。
2. なぜ、倉庫業では障害者雇用が進まないと思われているのか?
「他の企業もやればできるのに、やっていないだけではないでしょうか。」
髙田さんは、障害者雇用の第一歩をなかなか踏み出せない企業の原因を以下のように考えている。
①「知的障害者はできない」と思い込んでいるのではないか。
始めのフォローは大変であるが、知的障害者にできる仕事はたくさんある。
②言い訳をして、余裕を持てていないのではないか。
「人が少ないから(側で教えることができない)。」「そんな余裕はない。」を言い訳にしているだけではないか。エルプラン関東は決して人が多いわけではない。障害者の人事管理・育成もやらなければならない一つの仕事として取組んでいる。
③企業が受け入れを怖がっているのではないか。
一般的には、“受け入れ=採用”というイメージが強く、能力がよくわからないため、受け入れに不安を感じている会社が多いと思う。
「実習」の受け入れから始める方法もある。実習期間で能力を見分け、採用するかしないかを判断してもよいのではないか。まずは怖がる前に受け入れにチャレンジしてみること。入り口で怖がっていては絶対に障害者雇用は進まない。
3. 倉庫業にも知的障害者ができる仕事はたくさんある
障害者の就業が難しいと考えられ、障害者雇用では除外率対象業種の一つである倉庫業。
「一般倉庫業には、知的障害者ができる仕事はたくさんあります。」と髙田さんは話す。エルプランで働く知的障害者は倉庫業流通加工の周辺作業(補助作業)に従事している。
主な仕事の例
①ダンボールケース組立
②箱の開封(バンドのカッティング、箱の中の商品の取り出し)
③ピッキング
④サンプルセット作成
⑤商品ケースの積重ね・運搬
⑥店番ごとのステッカー貼り
⑦検品
⑧空コンテナの整理、プラスチック容器の片付け
⑨空ダンボールの解体処理








4. エルプランの取り組みの工夫
(1)採用と現場との一体感
“障害者を採用したから、あとは全て現場に任せる”という考えは、現場からの不満につながる。
まずは、現場の責任者に障害者雇用について理解してもらう必要がある。現場の責任者が理解すると、同じ現場で働く周りの人達も自然に理解を示すようになり、良い雰囲気が生まれる。
現場主義の安全指導
繁忙期には、フォークリフトが走り回っており、一歩間違えると事故になりかねない。特にドア付近は最も危ない場所。
髙田さんは、現場の責任者には、「必ず現場に連れていき『こういうことが危険』『これが倒れる』」と教える現場主義で安全指導をする様にお願いしている。また、一緒に働く現場担当者からも、普段の仕事の中でうるさいくらいの現場指導がなされている。
通路の端を歩く習慣を身につけ、たくさん積み上がっている荷物の角での一時停止、落下物への注意(パレットに積みあがっている物が崩れてくる危険性がある)、機械には絶対に近づかないことなどを教える。安全指導の他、自分の持ち場に行くまでの道順、取り扱う物の置き場所が定着するまで、1ヶ月ほどかかる。
周りで働く人とのコミュニケーション
採用担当だけで障害者雇用を全て進められるわけではない。大事なのは、現場で共に働く人がどう接するかである。周りで働く人は、出社から退社までずっと接することになる。採用担当は、障害者とだけコミュニケーションを取ろうとするのではなく、周りで働く人ともコミュニケーションを取るようにしている。周りで働く人は、採用担当では計り知れない現場での悩みを持ちつつも毎日対応し、「輪」を作ってくれている。
特別に悩みを聞く時間は設けない。一緒に食事をしながら周りで働く人の考えを自然に聞いている。採用担当から一方的に頼むだけでなく、採用担当も一緒に「輪」の中に入ることが必要である。
(2)1人は1人分の仕事をやってもらわないと困る
「指導する時の苦労は?」「課題は?」の質問に対する答えは、「障害があろうがなかろうが仕事をしに来ているので、特別扱いはしません。とにかく、1人は1人分の仕事をしてもらわないと困ります。」
仕事は会社で見つける。「働き」に来ているので、日々の流れ作業に入り、戦力として働いてもらわなければ困る。
職場配置については、実習期間中に適性や性格を把握し、活躍できる配置を決める。例えば、数字が得意である、物を運ぶ仕事が得意であるなど。
また、採用前の実習では、会社と学校・保護者との「連絡日記」にてやりとりをした。本人からの作業内容の報告や、保護者からのメッセージを書いてもらうものである。会社にとっては非常にプラスになるものであった。例えば、会社では元気にしていたのに、保護者からのコメントで「家では疲れていた」ことを知ったときもあった。このような”家からのメッセージ”に助けられ、より良い配置につなげられている。
(3)長所を伸ばすための前向きな声がけ
言葉に敏感に反応してしまい、誤解を招くケースがある。
「○○だからだめなんだ」「どうしてできないんだ」などの言葉は、本人が誤解をしてしまう場合がある。長所を伸ばしてもらうため、「こうして、こうして、だからこうなる」のような前向きな声がけをするよう心掛けている。プレッシャーのかけすぎは良くないが、自信をつけさせるのは良いことである。
また、仕事を任せる声がけも大事。「○○さん、この仕事を頼むね」と伝えると、一所懸命まっとうしようとする。仕事を任せることが本人の自信につながってくれればよい。
5. 今後やっていきたいこと
現在の仕事以外にもいろいろできそうだと期待を寄せている。今後は「デジタル仕分け(デジタルで表示された数量の商品をケースに入れ、スイッチを押しランプを消す作業)」「折りたたみコンテナの組立・ばらし・洗浄」の仕事にも挑戦してもらいたい。新しい仕事ができることにより、他の人の残業が減るためである。動くものに興味を持つ人もいるので、将来的には、フォークリフトの運転にも挑戦してもらいたい。
また、現在は、今後も障害者雇用を進めていくために全国へアピールを続けている。しかし、真剣味のある「旗振り」がいないとなかなか進まない。“義務感”になっても続かない。「何とか雇用したいんだ!」という誠意を持って取り組んでいきたい。
そのためには、今の現場責任者が異動になっても、後任の現場責任者が引継いでいけるようにしたい。後任の責任者は、前任者が採用担当と話す際にも同席したり、障害者とも一緒に仕事をしているので、「いざ、次は自分の番だ」となっても自然にできるはずである。
執筆者 : 株式会社キューピーあい 代表取締役社長 湯田 正樹
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