事業所名

有限会社あいだ

所在地

新潟県新潟市

事業内容

食料品製造（各種弁当、ダイエット食、病人食等）

従業員数

26名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	8	炊飯、飯盛り、弁当容器の洗浄、調理機器の洗浄、厨房の清掃など
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と理念
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果
5. 今後の課題

事業所外観

1. 事業所の概要

・経営理念

愛・感動・笑顔

私達は愛情をもってお客様と接し、
   食を通して関わる全ての人に幸せと健康を届けます。

・人事理念

・私達は、愛情あふれる人間を目指します。

・私達は、お客様の喜びを自らの喜びとします。

・私達は、仕事を通じて、日々成長します。

・私達は、仕事を通じて、地域社会に貢献できる人間を目指します。

・私達は、仕事を通じて、幸せな人生を自ら創ります。

・知的障害者の従事する職務

弁当製造の入り口部分

炊飯部門  1人

飯盛り機で器に盛る工程  1人

出口部分

回収した弁当容器の洗浄、調理器の鍋、釜の洗浄部門  6人

他にも配達車からの荷物おろし、厨房の清掃、工場近辺の草取り・空缶拾い等

日替わり弁当

健向食（健康な体に向かうよう）

・障害者雇用の表彰

平成17年度に新潟県知事から障害者雇用優良事業所として表彰された。

2. 障害者雇用の経緯と理念

（1）雇用の経緯

13年前、地元の社会福祉事務所の所長から、他の企業を人員整理されたSさんの採用を依頼された。ちょうど洗浄部門担当者を探していた時期だったので、試行的に職場実習を実施した。

Sさんはすでに結婚していた。Sさんは就業経験を生かして、実習中に一生懸命作業に取り組み、彼の仕事に対する真剣さが間社長に伝わった。

最初はそんなにやってくれるとは思っていなかったので、社長はじめ会社関係者は大変驚いたと振り返られる。

そこで初めて知的障害者を採用したが、会社内ではまだ受け入れ態勢が整っていなかった。しかし、Sさんのひたむきに努力している姿を社員のみんなが見ていたので、予想よりも早く馴染んできて、次第にいろいろな心配は解消していった。

そして、障害を持っていても、働いた成果、例えば弁当をきれいに洗うことが健常者と変わりなければ、多少時間が多く掛かってもその分多くの障害者を雇用できると間社長は考え、採用を増やすこととなった。

その後、養護学校・施設からの依頼により実習生を受け入れて、就業に結びつけるなど障害者雇用は増えてきた。

平成19年6月、新工場増設に際し、新潟県雇用開発協会に障害者作業施設設置等助成金を申請し、食器清浄機、飯盛り機及び洗浄機用給湯器を設置し、知的障害者の職域を広げ、障害者3人の雇用増を行った。

炊飯器

食器洗浄機

（2）障害者雇用の理念

「障害を持っていても、受け入れ態勢さえ整えれば、個性を発揮しながら生き生きと仕事をして、それが会社の大きな戦力になっていくということ」を間社長は身をもって体現している。

3. 取り組みの内容

（1）募集方法・採用方法

ハローワークや養護学校の紹介で採用しているが、ハローワークの紹介の場合はトライアル雇用を通じて仕事に慣れさせるとともに適応力を見ることとしている。

ちなみに、当社はトライアル雇用制度を活用した全国第1号の企業である。

また、養護学校の場合は、職場実習制度を活用し適応力を見ることとしている。

（2）取り組みの内容

・「配置」最初は簡単な作業から経験させていく。例えば、洗い場三箇所を経験させていく。

・「やる気を起こさせる工夫」例えば屋内外の掃除、倉庫管理、簡単な部署の軽作業から始め、慣れるのに従いステップアップするよう、配置転換を行っている。

・「緊張感の緩和」最初は、障害者はものすごい緊張感を持って入社してくるので、他の従業員が積極的に話しかけるなど、リラックスさせる工夫をしている。

・「保護者会」以前は保護者会を隔月に開催していたが、最近は障害者が落ち着いてきているので、年間2～3回の開催に変更している。

・「作業環境の工夫」障害者が仕事をしやすくなるような工夫をする。例えば米研ぎ時間を守るためにタイマーをセットしたり、炊飯用の水は秤を使う等実施している。

お米洗浄の新鋭機と工夫

新鋭炊飯器を操作

弁当のふたを被せる

（3）指導体制の確立

・業務遂行援助者を2名配置している。

・養護学校の教員経験者が入社してきたので、知的障害者との対応で中心的な役割を担っている。

（4）健康管理・通勤対策

・通勤は、JRの駅が近いこともあり全員自力で通勤している。一番遠い者は2時間近くかけて、2回の乗換えをしながら通っている。

・健康管理は風邪などを引かないよう、常に注意深く見守っている。

（5）労働条件

・労働時間：8:00から17:00が基本であるが、部署により7:00から16:00の者もいる。

・休日：隔週土曜休日、毎日曜日

・雇用制度：常用雇用

・社会保険の加入状況：全員加入

・賃金：時給、最低賃金除外（最低賃金の減額特例許可）申請者7人

（6）福利厚生

・新工場設置に際し、休憩室も設置した。

・納涼会などには、全ての従業員のほか障害者の保護者も参加している。

（7）活用した助成金制度

・重度障害者介助等助成金（業務遂行援助者の配置）

・第1種作業施設設置等助成金（食器洗浄機、給湯器、飯盛り機）

4. 取り組みの効果

（1）最近3年間の離職状況

周りの従業員との人間関係も良好で、離職は無い

休憩室でみんなで休憩時間を過ごす

（2）生産性の向上・モラールの向上

・業務遂行援助者の配置による指導及び養護学校教員経験者の入社により、知的障害者の指導に万全を期している。

・新鋭機器の導入により生産性の向上を図っている。

・上述の炊飯用の水に秤を使うときは、最初は秤の所定の位置にマークをして「ここまで」と覚えさせたが、時間をかけ経験を積んだ結果、最近は目盛で計量できるようになった。

・障害者自身のモラール向上には、配置転換を行うことにより仕事に対する向上心を刺激している。

・昼休みは、みんなでテーブルを囲み、趣味や休日の過ごし方などを話題にして一緒に楽しく過ごしている。

・作業的には、調理部門では鍋釜の洗浄を普通は調理者が行っているが、当社は知的障害者が行っているので、調理者は調理業務に専念できている。

・配達、調理補助の際に重いものを持ったり、空容器を車から降ろすなど、貢献している。

○これらの状況から、作業には彼らの存在が他の従業員に認識されてきた。

（3）障害者自身の意識の変化

配置場所はばらばらにしてあるが、新入社員に対しては、最近は最年長で先輩でもあるSさんが後輩に仕事を教える立場になった。

このことがまた、先輩であるSさんの仕事や社員としての誇りと自覚を深めている。

会社の玄関前で「おつかれさまでした」

5. 今後の課題

間社長は、養護高等学校の事業所代表評議員にもなっており、知的障害者の抱える諸問題の改善等に関心を深め、熱心に取り組んできた。

当社の場合、保護者や障害者自身の加齢の問題から、知的障害者の将来の課題として、グループホームの創設など保護者会に提案をしている。

休憩室で「明日もみんなで頑張ろう」

※一部の写真は、間社長作成のDVDより引用

執筆者：元新発田公共職業安定所長  金子  芳三郎