養護学校等就学中の職場就業体験を活かし、適性職域を開発することで職場定着を促進
- 事業所名
- 日の出屋製菓産業株式会社
- 所在地
- 富山県南砺市
- 事業内容
- 米菓(あられ、かきもち、せんべい)の製造及び販売
- 従業員数
- 357名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 2名:米菓の製造工程、1名箱詰 内部障害 1 米菓の製造工程 知的障害 4 米菓の製造工程 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
(1)沿革
大正13年に富山県福光町(現 南砺市)で和菓子店を創業、昭和29年に株式会社日の出屋製菓所を設立し米菓の製造及び販売を開始。昭和39年に富山工場(富山市)、昭和42年に本社及び福光工場(富山県南砺市)をそれぞれ増設。昭和45年に社名を日の出屋製菓産業株式会社に変更。また、お客様の声から消費者ニーズを迅速・正確にキャッチする目的も兼ねて平成5年から数年で、東京都八王子市、大阪市、富山市及び南砺市(富山県)に直営販売店を次々にオープンした。
創業の精神は『人づくり 品づくり 心づくり』、また、品づくりの理念は『類ありて比なし』である。
障害者の雇用推進に関しては、社長が地元の養護学校からの要請をうけて評議員を引き受け、かつ、自社への障害者雇用を積極的に推進した。平成10年には障害者雇用への取り組みが他の事業所の模範であるとして労働大臣表彰を受賞している。
(2)障害者雇用状況(平成20年1月1日現在)
身体障害者 | 知的 障害者 |
精神 障害者 |
合 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
視覚 | 聴覚 | 肢体 | 内部 | 計 | |||
3 (1) |
1 (1) |
4 (2) |
4 (2) |
8 (4) |
( )内は重度障害者で内数
2. 障害者雇用推進の背景
○障害者を支える人:養護学校の先生等の熱意に感動して
10年前に、現社長が、地元にある養護学校から要請されて評議員に就任していた。そのようなとき学校の学習発表会があり、その際見学した寸劇のなかで重度知的障害の生徒が援助者の女性先生に支えられて一生懸命に演じようとして努力しているその姿と先生の熱意を目の当たりにし、感動して涙が止らなかったという。
そして、その障害者を採用したのが、知的障害者を雇用した最初のケースとなった。
○会社の使命
当社は地域から信頼される企業、そして地域に貢献できる企業を目指しており、『経営者である前に先ず人間であれ』をモットーとして、障害者の雇用促進をめざす会社トップの姿勢が反映され、障害者の雇用を推進する全社的気風が定着している。
○障害者の職業能力開発事業への参画
地域のろう学校等のインターンシップの推進事業に参画し、障害者が就学中にどんな能力を身につけておけばよいか等について意見交換し、またインターンシップの要請があれば積極的に受け入れている。
3. 改善の内容
養護学校等との連携により障害者が長期間にわたり定着するように配慮すること、及び障害者雇用に係る職場環境等の問題点と、その改善は障害者以外の従業員に対する意識の改善にも通ずるという認識のもとに、環境の改善や設備の改善を進めることにより障害者の職域が広がることに留意している。
(1)学校等との連携
知的障害者の雇用にあたって、養護学校等と連携し、在学中に職場就業体験を経ることにより、能力と職務とのミスマッチによる離職を防止し、長期間の就業定着を図っている。
因みに現在4人の知的障害者が就業しているが、全員が養護学校在学中に職場就業体験を経ている。今日では、養護学校の先生方も職場をよく理解しており交流が深まっている。
(2)3S(整理・清掃・整頓)の徹底
事業の性格上、衛生管理には格段の配慮をされているが、その原点である3Sの活動は日々の改善活動の一つとして位置付けられ、実施時間帯は職場によって異なるが、3Sタイムが日課になっている。
工具・運搬具などの置き場も縦横明確に区分されひと目で識別できるように工夫されている。

(3)改善提案活動への参加
従業員の活性化を図る狙いの一つとして5S(3S+清潔・しつけ)活動を主体とした改善提案活動が7年前から実施され、努力目標として1人月1件の提案をする活動を推進している。障害者も積極的に参加し、小集団活動や発表会等を通じてモチベーションを高揚する原動力にもなっている。

(4)業務遂行援助者による教育訓練・しつけ
①教育訓練の基本的コンセンサス
・障害者が自立できるようサポートすること
・繰り返し作業することにより、作業スピードが向上することは健常者と変わらない。
・比較的簡単な作業であれば根気よく続けられる
・出来栄えをほめる
②キーパーソンによる一元的な教育訓練
知的障害者の教育訓練は「作業マニュアル」に基づき作業(段取り・作業実行)を業務遂行援助者等が一元的に指導し、覚え終えるまでOJTを繰り返す。
③しつけ・家族との連携
『約束事を実行する習慣を養う』ため繰り返し喚起する。
・家で爪を切り清潔に、身だしなみに気をつける
・作業服は休日に持ち帰って洗濯する
・午前・午後の始業時及びトイレ後の消毒・手洗い励行
・必ず返事をする
・電話・連絡帳で家族と連携を図る
(5)設備等の改善の一例
米菓『おかき』等を回転式『ドラ』の中に入れて攪拌し、『味付け』する工程があるが、その直前に、『ドラ』の中に投入する『おかき』の量を計量する作業がある。この計量にはデジタル表示の計量器を使用するのではなくて、機械式の台秤(だいばかり)が使用されており、『分銅』のバランスで『かき』の量が適量であるか否かを一見して判別することができる。その結果目盛を読み取る必要が無くて目盛の読み違いミスが発生することもない。このほか作業姿勢にあわせて台秤の位置の高さ調整が容易にできる工夫も施されている。このような障害者にもやさしい職場への改善事例が各所の工程の随所に活かされている。

4. 改善の効果
(1)効果
ア、障害者の職域が広がり障害者雇用数が大幅に増加した。下の表は障害部位別職種別の就業状況である。(平成20年1月1日現在)
担当 作業 |
身体障害者 | 知的 障害者 |
精神 障害者 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
視覚 | 聴覚 | 肢体 | 内部 | |||
型抜き | ◎ | |||||
うるち焙煎 | ◎ | |||||
運行釜 | ○ | |||||
包装 | ○ | |||||
海苔張り・並べ | ◎ | |||||
製餅 | ◎ | |||||
味付け | ○ | |||||
計量 | ○ |
(注)二重丸は重度障害者を、赤丸は中途障害者を表わす。
イ、障害者の職場定着率が延伸しており、平均勤続年数(中途障害者は認定後)は10年5か月、障害者実雇用率は3.61%である。
(2)目標
就業先に困っている障害者も多いことから、雇用率に拘らず今後も障害者の雇用促進に取り組むと同時に、障害者の更なるスキル向上を図り自立できるよう注力したい。(定塚執行役員総務部長 談)
また、穀倉地帯という地元の特色を活かした素材の生産から、商品の完成まで行う授産施設の立ち上げなど種々の夢を会社トップが持っている話を聞くことができた。

執筆者:社団法人富山県雇用開発協会 高年齢者雇用アドバイザー 大代 武
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