事業所名

株式会社ナガノトマト

所在地

長野県松本市

事業内容

長野の素材と独創的な技からこだわりのトマト製品、なめ茸製品、調理製品、清涼飲料製品等の製造・販売

従業員数

345名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	1	スティックの箱詰め・梱包作業
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 取り組みの結果と今後の期待・効果

事業所外観

1. 事業所の概要

ナガノトマトは、長野県購買販売連合会村井工場を前身とし、1957年に長野トマト株式会社として独立、設立された。以来、長野県の農産品を加工する会社として歩み続けている。

設立当初から地元松本平の農家と契約栽培に関する取り決めを行ったことが「長野方式」として全国から注目を集めた。これは現在に至るまで引き継がれ、安全で安心な製品作りにいち早く取り組んできた。

また、1966年に農家の冬の副業として栽培されていたえのき茸を使った商品を販売するなど、長野県の農産物食品加工メーカーとしての地盤を固めてきた。

当社は2007年に創立50周年を迎え、全社員で話し合い新しい企業理念を策定した。

誠実でいよう・・・社会に感謝の気持ちを持って、誠実な行動を実践します

品質を追求しよう・すべての人々に信頼され、満足いただける品質を追求します

思いやりをもとう・人との温かいつながりと思いやりをもった行動を実践します

本気でやろう・・・とことん本気で取組み、常に挑戦しつづけます

そして、2015年ビジョンとして、“独創的な技にこだわった「飲と食」をお客様に提供するオンリーワン企業として、世界でキラリと光る会社を目指し”ている長野県の代表的な企業である。

2. 障害者雇用の経緯・背景

かねてから、当社は、障害者雇用については問題意識を持っていたが、どういう仕事に従事できるのか、結論が出ていなかった。

一方、松本公共職業安定所からは、雇用率アップのために、当社に取り組みを求めるべく、2007年夏頃、関係機関の連携の下、問題点の克服に向けた具体的な行動を行なう取り組みがはじまった。

＜第一段階＞

a.会社側の都合

・工場内には段差があり、運搬車両が頻繁に行き来していることから障害者には安全面で課題があった。

・天井が低いなど必ずしも良くない作業環境であるという認識を持っていた。

b.松本公共職業安定所の提案

・雇用率アップに向けて障害者に限定した雇用についての検討と職域の拡大について依頼。

・事業所独自で職域を開発するには限界があると考え、長野障害者職業センターの協力による雇用管理上の課題の分析をはじめとする体系的な支援の受入れを提案。

＜第二段階＞

a.障害者職業カウンセラーとの相談等

事業所側が、松本公共職業安定所の提案に合意したことから、長野障害者職業センターの障害者職業カウンセラーが事業所を訪問し、事業所のニーズ・作業内容・職場環境等の把握・分析を実施した。

◎相談等の結果、長野障害者職業センターの提案内容

・障害者の就労可能な職域の提案（ⅰ.なめ茸の異物除去作業　ⅱ.梱包作業  ⅲ.工場内の清掃作業）

・トライアル雇用の実施

・ジョブコーチ支援の実施

・職務試行法の実施

・雇用管理サポート・研修の実施

b.松本公共職業安定所の対応

上記職域での就労は、知的障害者の作業に適していると考えたことから、知的障害者の雇用を検討するようアドバイスした。

併せて長野県松本障害者雇用支援センタ－を紹介し、同センターからの実習生受入れについて依頼する。

＜第三段階＞

a.事業所側の対応

・長野障害者職業センターの提案内容を受けて、知的障害者にできる具体的な受入れ体制の検討がもたれ、実習生の受入れについての社内合意を得る。

b.松本公共職業安定所の対応

・長野県松本障害者雇用支援センターへ実習生の人選依頼

c.長野県松本障害者雇用支援センターの対応

・実習生の人選開始

＜第四段階・・・受入れ体制の構築＞

a.長野県松本障害者雇用支援センターの対応

重度知的障害者の紹介・・・センターでの作業状況及び通勤環境等からAさんを紹介した。

通勤時間は30分、作業するスピードは早い、100迄数えることは問題なし、初対面の人には、極端に人見知りする、質問の意図を理解し意思の疎通は出来る

b.事業所側の対応

・ⅲの工場内の清掃作業は、外部委託業務となっていたので除外

・当初、ⅰのなめ茸の異物除去作業（20数人の集団）を会社側では検討したが、本人の工場見学を経て、本人の希望と長野県松本障害者雇用支援センターの訓練指導員の意見も取り入れ、ⅱの梱包作業となった。

（選んだ理由）

①大勢の女性がいる職場は苦手なため、男性2人のグループがよい。
②一緒に働く人数が少ない方がよい。
③水を使う仕事は体が冷えるため、本人が希望しなかった。

トマトケチャップ等のスティック製品

支援者から支援をうけるAさん(右)①

支援者から支援を受けるAさん(右)②

支援者から支援を受けるAさん(右)③

＜第五段階・・・職場実習の実施＞

長野県松本障害者雇用支援センターによる職場実習を実施した。

・2週間の体験実習実施
最初の1週間は半日、残りは1日
3人一組で行い、本人、支援者（50代男性）、社員（30代男性）食事時間も一緒に行動して、コミュニケーションを積極的にとった。

・仕事内容はポーションスティックラインでの箱詰め梱包作業
整然とレイアウトされたラインに乗ってくるなめ茸、ケチャップ等のスティックを100個ずつ箱詰め梱包する作業

・工場内での障害者の安全面と衛生面についての問題提起があったが、工場見学時点でのAさんの身支度が適切にできた事等により問題は解決された。

3. 取り組みの結果と今後の期待・効果

職場実習実施後、常用雇用となり、現在に至る

・これを契機として、当社は、雇用率アップに向けた更なる障害者雇用を計画している。

・関係機関との連携により、スムーズに障害者雇用が進んだことを事業主は感謝している。

・関係機関との連携が、障害者雇用に対する事業主の不安を解消した。

・ハローワークとしても、事業主に理解を求めながら、雇用率の向上を図ることが最善策であると考えている。

・安定した雇用を維持するため、経済的負担の軽減を目的に障害者介助等助成金（業務遂行援助者の配置助成金）の活用を提案している。

深澤宗明事務統括本部長兼人事総務部長

執筆者 ： 社団法人長野県雇用開発協会  障害者業務部
障害者雇用アドバイザー  遠山  亨