障害者雇用拡大に不可欠な行政の指導と経営者の理解
- 事業所名
- めぐみの農業協同組合
- 所在地
- 岐阜県関市
- 事業内容
- 農業協同組合法に定めた営農、経済、信用、共済、高齢者福祉等の事業
- 従業員数
- 1,500名
- うち障害者数
- 20名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 3 事務職 肢体不自由 12 事務職(3名)業務電話応対等・作業職(3名)、ガソリンスタンド業務他(6名) 内部障害 4 事務職(2名)、ガソリンスタンド、農業用資材配送(各1名) 知的障害 0 精神障害 1 ガスメーターの検針 - 目次

1. 事業所の概要
当事業所は通称名を「JAめぐみの」と言い、平成15年4月に合併した中濃地域(郡上市、美濃市、関市、美濃加茂市、可児市、加茂郡、可児郡)をエリアとする農業協同組合である。
エリア内に80支店と70カ所を超える施設を配し、農業経営指導、信用事業、共済事業、販売事業、購買事業等を実施している。
※本事例のポイント
① 合併前の試算で雇用率不足による納付金が年間960万円
合併前の5農協の合計従業員が1,508名で、障害者の法定雇用人員が27名に対して、実雇用人員は11名で雇用不足人員は16名であった。この状態で合併を実施した場合の、年間の納付金は960万円となる見込みであった。
② 大量の雇用人員の不足を2年余りで解消
大量の障害者雇用不足を短期間に解消出来たのは、ハローワークの指導と事業所の経営者の理解であった。
③ 適材適所の職務開拓
2. 障害者雇用の背景と経緯
合併前は、常用労働者数が300人未満の事業所が3つあったため、法定雇用率の認識が希薄であったが、合併によりその分も顕在化してきた。ハローワーク関から「このままでは、大幅な障害者の雇用不足になる」との指導を受けた。事業所全体として不足する事は認知できたが採用権限がないこと、また、他の合併準備にかまけて充分な取り組みをしていなかった。
統合前の障害者雇用状況 (平成14年1月現在)
合併 農協 |
常 用 職 員 数 |
法 定 雇用人員 |
障 害 者 数 | 雇 用 率 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
重度 | 重度以外 | 合計 | ||||
A | 326 | 5 | 1 | 1 | 3 | 0.92 |
B | 227 | 4 | 0 | 2 | 2 | 0.88 |
C | 209 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0.00 |
D | 476 | 8 | 1 | 2 | 4 | 0.84 |
E | 270 | 4 | 0 | 2 | 2 | 0.74 |
合計 | 1,508 | 27 | 2 | 7 | 11 | 0.73 |
そして、平成15年4月の合併時点における障害者雇用状況は14名の雇用不足で、障害者雇用率は0.84%であった。
このため、ハローワーク関からこのままでは、障害者雇い入れ計画書の作成を命ずることになると注意喚起があった。このため、障害者の合同面接会や雇用促進セミナーへの参加などの助言を受け入れ、これにより順次障害者雇用が進み、1年間で8名の雇用増加となり6名の雇用不足にまで改善した。
その後も、順調に障害者雇用が出来、平成17年には法定雇用率をクリアし雇用調整金の給付を受けるまでになった。
最近は、高齢な障害者の方からの引き合いが多く、今後もこの傾向が続くと思われるため、高齢な障害者雇用の場の確保に注力したいと考えている。
(障害者雇用の経緯) 調査年月 |
常用職員数 | 法定雇用 障害者数 |
実雇用 人員 |
雇用率(%) | 過不足 人員 |
---|---|---|---|---|---|
平成15年4月 | 1,547 | 27 | 13 | 0.84 | ▲14 |
平成16年3月 | 1,527 | 27 | 20 | 1.31 | ▲7 |
平成17年3月 | 1,533 | 27 | 25 | 1.63 | ▲2 |
平成18年3月 | 1,518 | 27 | 29 | 1.91 | +2 |
平成19年3月 | 1,501 | 27 | 28 | 1.86 | +1 |
平成19年12月 | 1,500 | 27 | 29 | 1.93 | +2 |
3. 障害者の従事業務
現在、20店舗に障害者を配属しているが、基本的には、「自宅に近く、通勤に支障のない店舗で、障害者に就労可能な業務のある部署」に配属している。中には、本人の専門的な能力を優先して、20km以上の距離を通勤している者もいる。
(障害に配慮した従事業務)
●肢体障害者(12名) | ||
9名 | 事務系 | (店長・次長として管理業務 2名) |
(損害保険の代理業務 1名) | ||
(共済事故の支払い業務 1名) | ||
(広報誌の取材編集業務 1名) | ||
(構内ネットワーク維持管理 1名) | ||
(電話対応・後方支援等 3名) | ||
3名 | 作業 | (ガソリンスタンドで給油 2名) |
(来店客の利用誘導 1名) |
●聴覚障害者(3名) 事務職
●内部障害者(4名)
2名 | 事務系 | (農業経営指導と事務 1名) |
(頭顧客への操作説明等 1名) | ||
2名 | 作業 | (ガソリンスタンド 1名) |
(農業用資材の配送 1名) |
●精神障害者(1名) ガスメーターの検針


4. 障害者雇用で得た経験
(1)障害者雇用を一時断念
新規採用した障害者が、採用後間もなく離職するケースが二度続き、一時障害者の新規採用を見送った事があった。
(2)環境設定への配慮
長年の経験から、障害者は就業1年を経過するとほぼ定着する。この為、当初の環境設定(洋式トイレ・スロープ、通勤対策等)に細心の注意を払うこととしている。
(3)組織内での認識向上
障害者雇用を積極的に推進した結果、障害者の就労に対する必要性や理解の深まりが向上した。
5. 障害者雇用の方針
障害者雇用は、配属先の管理者の理解を得る事が不可欠である。現場の管理者として労務管理責任を求められているので、障害者雇用の必要性を観念的に理解していても現実的な説明をしなければ受け入れは叶わない。
新たに採用する障害者の中には、毎日仕事をするという生活のリズムが出来ていない者もいる。こうした状況から採用と配属については、当該管理者と十分協議する事としている。場合によっては、車いす用のトイレの設置など環境面の改善も視野に入れている。
6. 今後の課題
(1)トライアル雇用の積極的な活用
当JAの場合、採用3カ月以内の離職率が高い。それに比べ1年経過以後の離職率は極端に低く、定着はすこぶる良い。つまり、最初の3カ月間を手厚くフォローすれば定着率が向上し、その後の業務効率も向上する。これは、職場の労働効率も押し上げる事となる。このように採用時の初期対応が大切と考えている。
(2)採用時の実態紹介
面接時には、応募者の意見を十分聞き採用側から包み隠さず要求しているレベルについても伝える事が肝要と思う。さらに、実際に業務をする現場を確認、体験させメンバーを紹介するなどして就業後の環境を体現させることに努めたい。
(3)障害者雇用は関係機関との連携で取り組む
障害者の法定雇用率をクリアできたのは、ハローワークの助言や担当者の思いもあるが、「障害者雇用は、社会の要請である」ということを組織として受け入れ、それに取り組み得たことが大きな要因と思われる。
今後も、関係機関の協力を得ながら、更に障害者雇用率をアップさせることを目標に障害者雇用に取り組みたい。
執筆者 : めぐみの農業協同組合 総務部人事教育課長 河村 泰宏
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