小売業における障害者雇用のあり方と行政のサポート
1. 事業所の概要
当社は県内24店舗のドミナント（地域）戦略により、地域一番店のチェーン化を図り、30店舗、500億円の売上達成を21世紀初頭の目標とし躍進を続けている。
ネットワークの構築と会員カードの活用により、お客様の立場に立った店舗の魅力作りに努めている。また、高質スーパー＝「食・優・品」の品揃えで、幅広いお客様のニーズに応え、安心・安全をモットーにより良い品の提供に努めていきたい。
経営方針としては、「皆良い誠心」の社訓に基づき、お客様・お取引業者様・従業員が皆幸せになることを考え、<お客様第一主義>にのっとりあらゆるニーズに対応していくことを目指している。
2. 障害者雇用の背景と経緯
平成12年頃から社員数が800名を超える様になっても、法定雇用率の達成は無理(8名で0.9%)だから納付金を収めていればいいとの考えが社内の大勢を占めていたが、納付金の額が店舗拡大につれて膨らむにあたり、経営陣もやっと事の重大さに気づいた。しかし、経営効率が優先され暫くは雇用の改善には繋がらなかった。
しかし、平成14年の後半からハローワークの専門援助部門の指導官がこの事態を憂慮され、何度か来社されて色々アドバイスをして頂けるようになった。その事がきっかけで、障害者合同面接会にも度々参加するようになった。また、人事担当者に障害者職業生活相談員の資格を取らせたり、市主催の障害者セミナーに数回参加するなどして、障害者雇用への取り組みが進められた。
そして、平成15年の知的障害者の雇用に際しては、ハローワークの薦めもありトライアル雇用を実施したり、ジョブコーチの支援のもとで、数人の雇用に繋がった。また、平成16年からは、養護学校の生徒の職場実習を受け入れることで、店舗の店長、現場担当者の障害者に対する抵抗感も少なくなった。全社的にも、店長会議で障害者雇用の社会的責任の重要性と雇用の実態を報告する事で、障害者の受け入れへの意識が高まった。
その後も、順調に障害者雇用がつづき平成17年には、法定雇用率をクリアし雇用調整金の給付を受けることとなった。最近は、養護学校からの新卒求人の依頼もあり、今後も一般雇用と共に続くものと思われるので、身体障害者の受け入れもスムーズにできる様に、店舗等施設の改善に努めていきたい。
3. 障害者の従事業務
現在24店舗中16店舗に障害者を配属している。基本的には、居所にほど近いところから通勤に支障のない店舗で、就業可能な業務のある部署で勤務しているが、中には、惣菜部の主任として会社の数値責任を担い、専門性の高い仕事に従事し通勤にも20km以上かけている者もいる。
身体障害者6名のうち販売業務に3名、レジ係1名、商品管理1名、クリーンスタッフ1名が従事し、健常者と変わらぬ業務をこなしている。
また、知的障害者19名(内重度6名)は、店舗のバックヤードで作業している。内訳は、果物部2名・野菜部10名・鮮魚部1名・惣菜部5名・クリーンスタッフ1名で後方支援が中心であるが、中には販売業務の補助に従事している者もいる。
4. 取り組みの内容
小売業においては、お客様に接することが日常的にあり、挨拶を含めコミュニケーション能力が必要不可欠である。また、作業内容も多岐にわたりなかなか定型的な仕事がなく、判断業務が必要とされることも多いのが実情である。それ故、特に知的障害者を受け入れる場合は、作業指示も含め、マニュアル化はかかせない。
障害者の受け入れの経験上、就業1年を経過するとほぼ定着する。このため、当初の受け入れ店舗に対して、面接以外に、事前に作業をさせて障害者の能力をみることで、作業指導のマニュアル化に活かしている。その後は、特別視しないで健常者と同等につきあうことが功を奏している。給与面でも、健常者の時給と同等にし社会保険の加入も行い、障害者の自立支援に努めている。
5. 障害者雇用の方針
障害者雇用は、配属先の店長及び部門担当者の管理者の理解を得ることが不可欠。現場の管理者として労務管理責任と営業目標達成を求められているので、障害者雇用の必要性を頭の中でわかっていても、現実的かつ具体的に説明をしていかなければ受け入れは叶わない。
新たに採用する障害者の中には、毎日仕事をするという生活のリズムができていないものもいる。こうした状況から採用と配属には当該管理者と十分に協議することにしている。場合によっては、車いす用のトイレへの改修や作業環境の改善も視野に入れている。
6. 課題と今後
当社の場合、平成16年以前は離職率が高かったが、平成17年以降においては2名の離職者があるのみで、定着率はすこぶるよい。これは、障害者職業センターのジョブコーチのサポートや養護学校の先生の支援やハローワークの専門援助部門の指導官の指導・援助・協力があったからではないかと思っている。
その上、全社的に「障害者雇用は、企業の社会的使命である」の信念のもと、地域密着の食品スーパーとして社会貢献に努めていきたい。今後は、関係機関の協力を更に得ながら、さらに雇用率をアップさせることを目標に採用を続けたい。
また、特定求職者雇用開発助成金の給付を利用することにより、経費面の負担を軽くすることも併せて行っていきたい。
執筆者 ： 株式会社フードセンター富田屋 管理本部 管理部長 大矢 泰彦
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