事業所名

株式会社ジャパンフレッシュ富士工場

所在地

静岡県富士市

事業内容

食料品製造業（サンドイッチ、弁当等の製造）

従業員数

199名

うち障害者数

13名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	2	包装材へのラベル貼り、寿司製造作業
内部障害	1	サンドイッチ製造作業
知的障害	10	容器の洗浄・運搬、資材の荷受・運搬、弁当の製造（トッピング他）、清掃作業
精神障害	0

目次

1. はじめに
2. 事業所の概要
3. 工場内の働く様子
4. 配慮していること－採用、配置、職場適応
5. まとめ－品質管理、生産性の向上を目指して

事業所外観

1. はじめに

働く人にとって、「自分が必要とされている」と思える職場こそ一番大事なことなのではないだろうか。

工場スタッフの話を聞き、働く現場をみせてもらって感じたことは、ここでは特に具体的に何かをしている、ということを語るわけではないが、知的障害者を受け入れ、共に働くことに、管理スタッフ・同僚の「あたりまえ」の雰囲気を感ずる。

「同僚」といえば、現場のパートさんたちが、仕事では時に厳しく、また休憩や食事時間には声をかけ和やかに接している風景も、彼らの意欲に少なからず影響しているように思う。

2. 事業所の概要

●親企業は敷島製パン（株）。本社は名古屋で、愛知県をはじめ長野、滋賀、北陸などに6工場があり、主にサークルKなどコンビニエンスストア向けのサンドイッチ、弁当、惣菜などの食品を製造している。総従業員1,655名。

富士工場は、平成16年3月に、富士市にあった同業の（株）静岡メープルを合併、新工場を建設して、現在199名が働いている。富士市の工業地帯の幹線道路沿いに工場があり、近くには国道一号線高架道のICもある。

●障害者の雇用は、静岡メープル時代から取り組まれていて一番長く勤務している人は、平成10年から在籍している。

新工場スタートのときにも、本社から「非製造部門」で障害者雇用を検討するように指導を受け、その後も非製造部門の多様な作業への配置を試行的に実施するなどして雇用を拡大、また直接食品を製造する部門への配置が新たにすすめられて、最近その数が徐々に増えてきている。

3. 工場内の働く様子

●業務は概ね「原材料入荷—倉庫保管—現場払出－製品加工—包装—出荷」といった順序で流れている。製品が食品であることから作業のほとんどは「人手」を使って行う仕事である。

●各工程の前準備、後作業の役割が極めて重要で工程全体を支えている。

品名ラベル貼りや製品を配送するバットの洗浄作業などに知的障害者が配置されているが、ここでは仕事を任され単独で仕事をすすめている。

一例を挙げると、ラベル貼りでは上下を間違えるだけで製品として成り立たないほどに「品質管理」が厳しい中で、適格にその要求に応えている。

ラベル貼り作業
人の感覚で行うこの作業が大事

器具洗浄作業
彼はここの業務を単独で任されている

バット洗浄作業
二人で担当している

●直接食品を製造する現場には、3人が配置されている。周囲に経験豊かなパート従業員がいて、アドバイスが自然に出てくる現場の環境が出来ている。

作業が遅いことを問題としたり短所としたりするなどの評価はしていない。正確に確実にやることを教え、それを繰り返して指導している。繰り返し指導することの必要性は、片言の日系外国人労働者もいる中で、障害の有無などに関係なく、なによりコミュニケーションが大事であるというその風土が出来上がっているのである。

工場内  調理パン製造現場

●当然のことながら工場は厳格な衛生管理が行われている。就業場所に入る前に必ず実施することは、頭髪カバー、マスク、作業衣をつけ作業靴に替え、ローラーでホコリ取りを2回、手洗い、消毒などを手順どおり行い、空気清浄室を通過する。

職場実習を受け入れた時に、これだけで大変な負担と感じて辞退した人もいたとのことだが、今は、定められた基準に従ってごく自然に、お互いに確かめながら確実に行われている。終業時、マスクなど使用済用品の廃棄処理もキチンと分別処理されている。

手洗い
  ①洗い ②流し ③乾燥 ④消毒
の手順

●評価について、彼らは、時間がかかっても一度教えると正確な仕事が続けられるという優れた面をもっている。実際、製品に貼るシールの間違いを発見して会社に貢献した実績もある。

多くを求めるのではなく、集中して一つの仕事を継続することで充分であると会社は考えている。自分自身を認めてくれた、自分がアテにされていることがわかり、そのことが自信になり、仕事への意欲の支えになっている。

4. 配慮していること－採用、配置、職場適応

●面接

採用時の面接は親と同席して行う。甘やかしてはいけないということを念頭に親の考え方を確認する。それは、「障害者」というイメージで考えるのではなく、一人の労働者として差別なく対応していく基本なのである。

また、ハンディのある人たちの状況を的確に把握する。それは職場配置の後にトラブルをなくすためにも、現場に徹底をするためである。

●挨拶

なにより重視するのは、挨拶をはじめとしたコミュニケーションの基本が出来ていることである。仕事は特に正確さが求められている。ひとつのことだけでよい、それが出来る意思疎通を重視している。面接で一生懸命さが伝わってくれば、みな可能性を持っていると考えている。

●勤務シフト

障害者の人たちとは、構えないで自然に対応してきているが、配慮といえば24時間操業の中で、「日勤」のみに配置している。

少量多品種の受注、正午の製品が夕方には店頭に並ぶという出荷時間の厳しい制約の下で、全員がローテーションで休日、勤務時間帯が組まれている。

最大の問題は、突然休まれることである。特に間接部門では全体の業務に影響するので特に神経を使っている。

●支援スタッフ

「欠勤」には様々な要因があり、本人がちょっとしたことで悩みこんでしまうようなケースもある。このような場合、工場の管理スタッフ、現場スタッフは時に厳しさも交えつつ、親身になって対応を図っている。

また、地域の障害者就業・生活支援センターとも連絡を取り合っていて、ケースワーカーが訪れて個別に相談するなど、人に応じて支援する体制が出来ている。

●通勤バス

工場は郊外の工業地域にあるため遠距離通勤者が多い。路線バスや自転車で通勤していたが、通勤時間などで支障の出る者もあった。

通勤バスを導入したことは、通勤の利便性の向上にとどまらず、休まず定刻の出勤の確保という労働習慣の改善にも役立っている。

5. まとめ－品質管理、生産性の向上を目指して

●ここの工場の仕事は、機械が仕事をする部分は少なく、人の目、人の手ですすめる仕事が多い。ミクロン単位の精度が要求されるということではなく、商品を買う消費者を考えた「人の感覚」が大事なのである。例えば、弁当に入れる副食材にも裏と表があり、この判断をする「人の力」で製品を支えている。

工場スタッフの話では、ここでは間接部門ががんばらないと作業効率があがらないということである。働く人たちに、必要な人材として接することが自信を育て、成長させていることを感じさせる。

●仕事の流れの要所要所に、正確に仕事をする人材を配置することは、製品の品質を確保し生産性を高める要因であると考えている。

今後も生産性を高める課題として、作業の効率化、平準化、単純化を目指して設備の改善をすすめることを検討している。それは障害者が作業に不自由なく快適に働く職場ということにつながり、同時に一般従業員にも必要なことなのである。

そういった意味でも、作業工程の改善により障害者が担う場所は今後も広がりを見せ、雇用の拡大につながる可能性が期待される。

執筆者 ： 社団法人静岡県障害者雇用促進協会
障害者雇用推進技術顧問  中島  義夫