障害者・健常者が共に働きやすい職場作りを目指して
1. 事業所の概要
明治5年の創業より続いた製綿業の枠を超えて、病院用寝具類のリースという新しい事業分野を昭和37年に開拓して以来、ワタキューセイモアは、医療・福祉に関わる様々なサービスを全国展開してきた。企業としての社会的貢献とワタキューグループの基本方針にもある「会社のみなさん方はお互いに働いて頂いている」「感謝の気持ちと謙虚な姿勢」社是「心」のもと、昭和60年頃から知的障害者を雇用し、雇用の場を継続的に維持できるように行ってきた。ハローワーク(公共職業安定所)・養護学校を経由して採用している。
2. 取り組みの内容
（1）背景
ワタキューセイモアの社会貢献の一環として、どのような役割を担えるのか模索しているときに障害者の雇用をきっかけとして、取引先の養護学校からご紹介を頂いた。
当初はノウハウもなにもないまま行っていたが、取引先の養護学校にご協力をして頂き、最適な職場・就労条件などのアドバイスを行って頂いた。現在でも養護学校から障害者の紹介・アドバイスなどいろいろな面でご協力をして頂いている。
（2）内容
当社では障害者の多くは工場内の軽作業を中心に行って頂いている。雇用当初は、健常者と障害者の間では壁があった。突然職場を離れて外に出て行ったり、作業が遅くなったりなど行動に理解できないことがあり、障害者雇用に不平があった。外に出て行ったことについて本人と話をすると、「他の社員が休憩している中で自分だけが働くのはおかしい」と言う。本人になぜ休憩をするのか、適時に休憩をとるように説明することで解決した。作業が遅くなったことに関して、「体調が悪いわけでなく仕事に対してやる気がでない」と言うので仕事がつまらなくて辞めたいのかと思った。そこで話をしてもやる気がでないということで、親御さんに連絡をとり帰宅させた。次の日には昨日とは違いいつもと変わらずに出社してきた。ジョブコーチに相談したところ「ストレスや季節の変わり目（五月病などで気持ちの浮き沈みが感情に出やすいので、その場合は話をしても変化がないなら帰宅させて下さい。仕事をしても不注意で怪我をする恐れがあります」とのことだった。感情がでやすいので日頃から注意して目配り気配りを職場全体で行い、親御さんが気になる些細な点があった場合、会社、ジョブコーチに相談、話し合いの場を設けて早期改善を行っている。
現在では健常者と障害者が気軽に話をするようになり、お昼休み、休憩時間も一緒に過ごすようになった。両者において、しっかりと話をして障害者の特性を理解することが一番大切である。それが障害者の仕事に対する意欲、やりがいを高めることに繋がった。
（3）ポイント
知的障害者への仕事の説明については次のことにポイントを置いている。
①「作業を見せる」「実践させる」「誉める」
②いろいろな説明をすると混乱してしまうので、1つの作業を覚えるまで説明をする。
③担当者に任せるだけではなく、職場全体で仕事の説明・目配り気配りを行う。
以上の3点については特に知的障害者だけに限られたことではない。特別扱いをしないこと、健常者と共に作業ができる環境作りをポイントにおいている。障害者も努力を惜しまないので、障害者雇用では長い目で接することが大切となる。
（4）安全への配慮
障害の程度や各人の特性に合わせ、シーツ・浴衣・タオル・サウナマット・バスローブ等を仕分ける。タオルを梱包する部署、浴衣を選別する部署などに配置し、それぞれの部署で他の従業員と共に作業を任せている。障害者には、大型洗濯機にタオルを入れる作業を任せているが、機械の操作については他の従業員が行う彼らが誤って機械を操作したり、触れるなどして事故を起こさないよう、日頃から目配りと気配りを欠かさず、安全については万全の配慮を行っている。タオル・患者衣の捌きは洗濯したものが地上2mぐらいの高さから落ちてくる音・光の発するパトライトの取り付けをしている。その他にもフォークリフト、機械(洗濯機)等の危険と考えられるものにはパトライトを取り付けしている。
（5）報告・連絡・相談
障害者に限ったことではないが、体調不良でも上司に話さずに仕事を行ってしまうことがある。日頃から目配りを欠かさず些細な点、不審に思うことがあった場合、担当者に報告するようにしている。体調不良、夜更かし等のいろいろな点が考えられるので、社内だけで対応をするだけでなく、家族・ジョブコーチ・養護学校に連絡・相談をして協力、理解して頂くことが早期改善に繋がる。
3. さいごに
ワタキューセイモアでは工場内の労働が中心になるため、障害者の高齢化による体力維持と健康管理が課題になっている。今後として、体力に応じた配置転換、私生活の管理(夜更かしなど)を家族と相談して対応していくことが必要である。
執筆者 ： ワタキューセイモア株式会社 総務部人事本部 事務職 髙井 恵三
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