事業所名

デリカハウス株式会社

所在地

京都府京都市

事業内容

飲食料品卸売業（牛乳卸販売、一般惣菜製造卸、中学校・支援学校給食）

従業員数

82名

うち障害者数

10名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	調理
内部障害	0
知的障害	9	一般惣菜調理作業  1名、洗浄作業  4名、惣菜パック仕分け作業  3名、下処理作業  1名
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 現状について
3. 改善のポイントについて
4. 苦労したこと
5. さいごに（障害者の継続雇用への想い）

1. 事業所の概要

(1)当社は京都市左京区修学院に位置し近くに修学院離宮がある。創業は昭和30年代に牧場を営んでいて、牛乳の瓶詰め、卸売りを中心に行っていた。その後、一般惣菜の製造・販売をはじめ、平成2年に株式会社に組織変更し、先代の創業者が小学校給食の牛乳をしていて給食に関心があり、平成14年10月から中学校給食、平成18年4月から京都市立総合支援校の給食を始めた。

(2)障害者雇用の経緯

牛乳の瓶詰め卸売りを中心に行っていた昭和50年代に先代の社長がハローワークに初めて知的障害者の雇用に関する相談を行い、昭和62年4月に京都市立白河総合支援学校から知的障害の阪本聡也さんが職場実習訓練を経て初めて入社した。

阪本聡也さんは、入社当初、工場の中で牛乳を詰めたパックをケースに入れる作業を担当していた。彼は体力があり、力持ちで、数字に強く（社員82名の誕生日を記憶）、持続力のある子であるので、体力と力が必要なパック作業を担当していた。

その後、職場実習訓練を経て、また、ハローワークの紹介を受けての入社があり、当初は京都障害者職業センターからジョブコーチの支援を受け、現在の障害者の雇用に至っている。

2. 現状について

（1）現状について

①現在、知的障害者9名は、一般惣菜調理作業が1名、惣菜パック仕分け作業で3名、洗浄作業で4名、下処理作業で1名が、それぞれの部署において活躍している。
②以前より惣菜パックに盛付け・仕分け作業や調理準備である下処理については、知的障害者の拡大の為、知的障害者が操作しやすい食器洗浄設備ランチャーを導入し、4名の知的障害者が現在活躍している。
③パック仕分け作業については、現在、3名のうち1名は自動値付け機の導入により、ボタン操作で店舗の発注毎にスムースに仕分け作業が出来、今では1人で作業を出来るまでになり、かなり本人の自信につながっている。また、調理については、卒業以来当社に在籍している阪本さんは平成19年3月迄仕分け作業や盛付け作業に従事していたが、惣菜の製造作業へ異動し、平成19年9月に撹拌付蒸気釜の導入を行い、異動後1年経った今ではスムースに製造作業に活躍している。

（2）障害者の人の仕事に対する意識について

現在の仕事は単純な作業で毎日同じ仕事の繰り返しだが、働くことに喜びを持ち、自信を持ち勤務している。

（3）仕事振りについて

①現在の仕事に存在感を感じて勤務している。それゆえ、休むように話しても休まない。また、出勤時刻を遅くしても良いと伝えても、何時も通りの時刻に出勤する。ただし、機械の操作は自分しか出来ないものと思っていて、他の社員に教えようとしない。
②惣菜や給食の仕事は、欠勤する社員がいても品物が時間に間に合わないことは許されない。知的障害者の社員が、健常者と一体となってフォローすることが必要であり、当社の場合、健常者が休んだ場合は障害者がフォローしている。
③自分で考えて仕事をする社員には仕事を出来るだけ任せるようにしている。その方が、本人は会社内で存在感を感じて、張り切って仕事に打ち込んでいる。また、仕事のローテーションは本人には気分転換にもなっているようである。
④知的障害者の社員は、純粋な気持ちから、健常者が間違った仕事のやり方に対しては厳しい。

3. 改善のポイントについて

（1）仕事のローテーションについて

①当社の事業は、安全で、安心できる惣菜品や給食品を作り、お客様に決められた時間までに届けることが求められている。したがって、一人ひとりがいくつもの作業を経験して、社員同士で補いあうことが必要と考え、健常者、障害者に関係なく担当する仕事を一定期間でローテーションを行うようにしている。
②最初に入社した阪本さんの場合、牛乳のパック取りから惣菜パック仕分け・パック盛付け作業を経て、現在の惣菜を製造する作業に就いている。当社では、職務を変更する場合、本人に仕事を変更する理由とこれからの仕事のことを充分に説明し、理解をしてもらうことが最も大切なことだと思っている。したがって、彼が仕事を変わるときには、相当の時間をかけて理由（例．今までの仕事が少なくなってきたこと、そのために新しい仕事へ変わること。）を説明しないと納得してもらえない。したがって納得してもらえるよう、納得いくまで時間を掛けて説明し、納得してもらっている。納得出来れば頑張って仕事をしてもらえる。

（2）職場内での配慮

①職務ごとに職場の責任者を配置している。職場の責任者は毎日、職場での指示・連絡を中心にした仕事上の関係だけでなく、仕事を終えてからも悩みの聞き役やカラオケに誘ったり、職場内の人間関係を作るようにしている。また、日頃起きたことは職場の責任者から代表者まで報告されている。トラブルとならないように心掛けている。
②本人が自信を持つことが肝心である。最初にもたつくことがあっても、それを乗り越えることによって自信を持てるようになる。それには、職場内の社員の温かい眼で見守る職場の環境が大切であり、現在があると思っている。今後も更に、そうした職場の環境を続けていきたいと思っている。
③9名のうち4名が重度知的障害者である。重度知的障害者の社員には、毎日同じ仕事を行っているから今日も出来ると云うことはない。したがって、毎日同じことを指示するようにしている。

4. 苦労したこと

(1)知的障害者の社員が行方不明となったことがあった。幸い、24時間営業の若者の遊び場所で無事発見された。過去に2回の不明事件があり、本人、親御さん、会社の3者で相談し3度目は退職となることを約束させて現在は真面目に働いてもらっている。

(2)知的障害者の社員は、純粋な気持ちから、他の社員が間違った仕事のやり方に対しては厳しい。過去に、パート社員が間違って他人の持ち物を持ち帰ったことがあった。知的障害者の社員がパート社員を泥棒呼ばわりして大騒ぎになったことがあった。その時は、社長から障害者本人に説明して本人に納得してもらったこともある。

作業の様子1

作業の様子2

作業の様子3

5. さいごに（障害者の継続雇用への想い）

知的障害のある社員が、自分の適性を把握して、自分の仕事に存在感を感じて自信を持って活き活きと働き続けることが出来る会社を目指している。

そのためには、知的障害のある社員を温かい眼で見守る職場の雰囲気・環境は不可欠であり、守っていきたいと思っている。

執筆者  ：  デリカハウス株式会社  管理課  山岸  光子