事業所名

株式会社エルアイ武田

所在地

大阪府大阪市

事業内容

印刷・情報処理・清掃・包材・洗濯等

従業員数

55名

うち障害者数

44名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	20	組版・印刷・複写・データ入力、清掃業務
肢体不自由	6	組版・印刷・複写・データ入力、裁断作業・洗濯・清掃業務
内部障害	0
知的障害	18	包装補助業務・洗濯業務・清掃業務・印刷・複写
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の理念
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果 ～事例を通して～
5. 総括 ～支援者として～

1. 事業所の概要

株式会社エルアイ武田は、医療品を通して人々の健康に貢献する武田薬品工業株式会社の特例子会社として、薬業界では初めて、障害者の雇用を目的に設立された会社であり、「L」は労働を意味するLabor、「I」は愛。働く障害者を愛する会社である。

2. 障害者雇用の理念

エルアイ武田は、障害者も立派な社会人の一人と考えている。仕事の能力、責任感、人間性など様々な面でより高度なものを要求することで、自分達の仕事が身を結ぶ。その素晴らしさを経験し、仕事を通して成長する。そんな自分に出会える会社をモットーに、常に温かく、ときに厳しく、障害者の自立を目指して、いつも愛を忘れない会社でありたい。

3. 取り組みの内容

エルアイ武田は雇用前の職場実習が重要であると考えている。障害者本人が業務内容・職場の雰囲気などの職場環境を具体的に経験することで働くことの意味を感じ、実際に指導する現場リーダーが本人の性格、特性、業務に対する姿勢などを見極める期間としてとらえている。この実習中に直面する課題に対する指導方法などを支援者と相談し、改善に向けて取り組み、就労継続を目指している。

（1）採用方法

①選考    面接及び職場見学を実施
②実習    2週間程度の職場実習
③求人    公共職業安定所を経由し募集
④採用    本人の意思確認を優先し採用を決定
⑤就業安定を図るため支援者との連携

継続を実現するために・・・

（2）就業状況の把握

①現場リーダー及び本人からの報告

業務の進捗状況、人間関係、体力的・精神的疲労の有無を確認し毎日ことばを交わす。

②本人との面談

上記①の事柄で、本人にとって何か不都合が生じた場合は対話をもって詳細な状況、本人の思いを聞き取り、現場リーダーと共に改善に向けての働きかけをおこなっている。

③支援者援者との連携

本人・リーダーの聞き取りから、問題が大きくなる前に支援者と常に連絡をとり解決策・対応方法のアドバイスを聞いている。また本人の状況を支援者が職場訪問をして把握してもらい、本人からの聞き取りから就業安定を図るための環境を作っている。このように“企業で全てのことを・・”と考えるより、支援者との連携を構築することが本人の就業の安定を図るためには重要である。

4. 取り組みの効果 ～事例を通して～

Aさんは、清掃の仕事で吹田グループに勤務して9年目を迎えていた。その頃にリーダーが定年退職し新しい現場リーダーを迎えることになったのだが、女性の現場リーダーから男性に代わった事と永年この仕事に従事してきたことのプライドもあり、業務上の指示を聞けなくなっていった。それと同時に意欲も減退し今までこなしていた仕事も時間がかかる、泣き出し仕事に手がつかなくなってしまう。ということが頻繁に起きるようになってきた。

この状況を支援者と話し職場訪問をしてもらい本人に聞き取りを行ってもらった結果、「仕事は続けていきたい」「作業のやり方が以前と違う」という訴えを聞き出すことができた。

本人が違った捉え方をしている状況をひとつずつ説明し解決を見い出した。すると本人の意識に変化があり、落ち着きを取り戻すことができたのである。しかし、その後新たな課題が出てきた。それは職場放棄であった。自分の思いと違う状況になると、泣いて動かず、問いかけにも答えずと時間だけが過ぎていき、最後には帰宅してしまうのであった。しかし、支援者と常日ごろ状況を報告していたので即、支援機関（能力開発校）に戻り、当分は、会社ではなく支援機関（能力開発校）で作業を行い、振り返りの期間を設けた。

この取り組みから「会社で働きつづけたい」という本人の思いと、そのためには「何を変えていかねばならないか」を自らが語り、働きつづけるための努力も新たに養われ、現在は以前の明るさを取り戻し仕事に従事している。

清掃作業の様子

5. 総括 ～支援者として～

職場放棄の時期に、Aさんは自分の課題となる行動の後に「分からないことは聞く」「素直になる」という反省ができるのに、またその課題を繰り返してしまう自分にも苛立ちを持っていた。

この課題を職場の理解を得て、支援機関（能力開発校）において期間を設けたことがAさんを大きく変えたと考える。この期間の当初はなかなか作業が進まず不安に陥っていたが「仕事で分らない事は聞く」「場所も人も変われば指示通りしなくてはならない」「行動を止めていたら先に進めない」こういった事柄を指導員の指示通りに行う事でペースが上がり目標数が日ごとに達成できた事と職場復帰を得たことが自信となり、自分が変わらないといけないことを理解できた。

職場復帰後、Aさんからのメールには《分からない事を聞けました。聞いてしたらちゃんとできました。リーダーができてるよ。と言ってくれました。センターで仕事はしたくないです》と送られ、その後も頻繁に報告が送られてくるようになったので支援者側もAさんの状況を把握できるようになった。

今後も本人・職場・支援者のトライアングルの音色がきれいに響くような連携を深め安定した就労継続を目指すことが障害者雇用の重要な支援のあり方であると確信している。

執筆者  ：  社会福祉法人大阪市障害者スポーツ・福祉協会
大阪市職業指導センター  間山  理香