企業内作業所の効果と障害者雇用
- 事業所名
- 光印刷株式会社
- 所在地
- 兵庫県神戸市
- 事業内容
- お菓子函などの紙器印刷
- 従業員数
- 160名
- うち障害者数
- 14名
(内訳)
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 5 製造補助・検品 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 9 製造補助・仕上げ・包装・運搬 精神障害 0 - 目次


1. 障害者雇用の理念
障害者雇用の理念としては、次のとおりである。
「障害者が働ける場を設け、障害者雇用を通じて社会に少しでも役立ち地域に密着した企業であること」
2. 企業内作業所の効果と障害者雇用
(1)企業内作業所の誕生までの経緯
昭和52年: | 中元・歳暮用の進物函(お菓子等)の組立加工を知的障害者施設に業務委託する。 |
昭和61年: | 西宮市から神戸市西区にある西神工業団地に工場を移転。広い敷地を利用して加工場を併設。 |
昭和63年: | 搬入・搬出に多くの労力と時間がかかっていた実情と、加工場に空きができたことで、経費削減及び能率アップを図ることを目的として当時の委託先であった自立訓練センター(現在 NPO法人みちしるべ神戸 ワークプロジェクト にし)と協議し、加工場を開放。 |
昭和63年夏: | 企業内作業所の誕生となる。数年後からは作業種類が増え、工場内の空き部屋を第2作業場や休憩室として提供。 |



平成18年: | 倉庫を組立て・検品室に増改築し、新たな作業場を提供。これまでの加工場は第2作業場とロッカー室・休憩室に改装する。 |
(2)障害者雇用の背景
毎日のように、訓練所と作業の進捗状況の確認や作業予定の打合せをしていく中で訓練を受けている利用者の中から、企業の実際の現場で実習を試してみてはという話しになり、出勤状況や感性を重視し、当初は企業側が選出。期間は1~2週間。社員から指示を受けながら仕事を行い、企業にとって戦力となり得るか見極めていく。
平成元年 5月: | 5名にて実施。反転機での補助作業・商品のパッキン詰め等 |
同年 9月: | 実習を実施した結果、内2名を社員として初めて雇用する。 |
平成3年: | 3名雇用 |
平成5年・14年・16年: | 1名ずつ雇用 |
平成13年: | 公共職業安定所からの要望もあり、聴覚障害者の雇用を検討する。彼らとどのようにコミュニケーションをとるかを考えることが、社内業務においても役立つと考え、初めて2名をパート社員として採用。現在は5名。 |
平成18年~: | 工場が統合され、仕事量が倍増したため、新たに6名雇用。その後数名の入れ替えがあり、現在在職は9名。 |
(3)体験実習の受入れ
施設側より、体験実習ができる場所の希望があり検討した結果、実施する。短期間での交代は負担が大きいので、1ヶ月~2ヶ月をめどに、反転機補助・打ち抜き補助。時には、検品作業や梱包作業で受入れる。問題が発生しても敷地内にいる施設職員が迅速に対応してもらえる安心感があって成立していると考える。平成元年から現在まで場所や期間はその時々で変化しているが、現在も続いている。


3. 現在在籍している障害者の仕事ぶり
(1)函詰め作業
知的障害者を雇用して初めて従事した部署である。打抜き後直接納品する商品をパッキン詰めし、指示書通りにラベルを作成し仕上げまで行う。商品によっては数調機で数量のチェックを行ったり、結束するものもある。入れる数量と使用する段ボールケースを最初に指示すれば、次回からは自分たちで作業できる。
基本は2名で従事。作業は彼らに任せている。現在は、予定表を渡し、二人で分担して仕事をこなしている

(2)製函作業の最終工程での補助的作業



生産スピードを上げなければ、納期や納品数など顧客の要望にこたえられなくなってきたため、それまで社員一人で行っていた製函ラインの函詰め作業の補助的な仕事に就いてもらう。
パッキンの準備・詰めの補助・テープ貼り・ラベル貼り・使用済みのパッキンのラベル剥がし等状況によって作業は異なるが、具体的に指示を出すことで、確実に作業をこなせるようになる。常に社員がそばにいるので、お互いに確認・質問等コミュニケーションもとりやすい現場である。現在は2名の知的障害者と1名の聴覚障害者が従事している。
(3)仕分け作業
7台の製函ベルトから流れてくる段ボールケースのラベルを確認し、品物種類ごとに仕分けしてパレットに積む作業。工場統合後、仕事量が増大した為、増員が必要となり新たに雇用。環境改善を取り組むものの、常にフォークリフトが出入りするため、夏は暑く・冬は寒い現場である。

(4)打抜き後のむしり作業
平成16年に初めて知的障害者を1名雇用。工場統合後、ここでも作業量が大幅に増え、2名増員。現在3名の知的障害者が社員と共に作業に従事している。
型紙を打抜き後、不要な部分を木槌で叩いてむしり、商品をパレットに積んでいく作業。力も技も必要な部署。商品部分を叩いてしまうといけないので、教え方も難しく感じる。
最初は、社員がむしった後の紙の整理から行う。1丁もの(一枚の型紙に1種類の製品が印刷)で挑戦。上手くなってきたら、2丁から12丁までレベルがあがっていく。又、パレット積みもまっすぐに積んでいかないと倒れてしまうので、ここでも注意が必要となる。
現在では、最初に雇用した者は最高レベル12丁まで、新人2名は6丁をクリア。時折、社員同士のトラブルが発生することがあるので、配置を工夫し各々が働きやすい環境設定をして効率よく仕事が進むように配慮する。



(5)包装作業
進物函用の包装紙を束ねて包装する作業。ここも早い時期から障害者を雇用した部署。
当初は、自分のこだわりの中で仕事をすすめる傾向が強く、施設職員に入ってもらうこともあったが、企業人として大きく成長。彼の仕事は完璧に近い程正確で他の従業員も目を見張る所がある。現在は聴覚障害者も1名雇用。


(6)検品・選別作業
一通りの良否を教えると、聴覚障害の方でも十分任せることができるようになる部署である。印刷済みの商品に貼るラベル等の検品。細かい指示も現物をみせて 教えることができるので、コミュニケーション的にも問題はない。

4. 振り返りと今後
敷地内に作業場を作り、弊社工場に障害者が通い、挨拶を交わし、予定の作業を仕上げることが当たり前に行われてきた。
その日常的な積重ねが基礎にあったので、実際に障害者雇用をするに当たり、社内でチームを作ったり、専門者を設けるといった特別な取り組みをすることもなく対応できたのであると思われる。
それでも、当初は心配なことが多くあった。こだわりのある人は、何かあると持ち場を離れて仕事中でも事務所にやって来て質問をしてきたり、社員が教えても無反応で仕事をなかなか任せることができなかったり、弊社の通常の作業の中では考えられない色々なことが起こった。
しかし、そういった問題点も時間の経過とともに仕事がこなせるようになると、自然に解決していったことのほうが多かったと思う。
ここまで多くの障害者を雇用して一番大切だと学んだことは「特別扱いをしない」ということである。
できたことは評価し、間違えがあれば正していく。勿論仕事には責任をもって従事してもらう。またそうできるように環境を整える。まさしく「人は環境により育つ」もの。更に言うならば、障害者が働く環境を整えることは、社内全体の環境が整うことに繋がっていくと期待している。
この環境で今日も彼らは他の社員と全く変わりなく、普通に各部署で働いてくれている。
しかしながら、ここ数年、雇用して10年以上経過した人達数人が我々にすればちょっとした作業の変化と感ずることが彼らには対処できず、退職に至った人がいる。雇用当初の問題よりもその後に起こったことの方が解決が難しく、フォローの重要性を痛感する次第である。社内でどうしても対処がうまく行かない時には、施設職員と連携しその問題を解決し、継続雇用に努めていかなければならない。問題が大きくなる前に対応していくことが何より大切である。そのためにも日々彼らに一言でも声をかけるよう心がけている。
障害者雇用を進めて来て気付いたことは、社員全体のモチベーションを高めることに繋がっている。現在も十数名の障害者が社員として、業務についている。各々が誇りをもって毎日の仕事に従事できるように、今後も取組んでいく所存である。
執筆者 : NPO法人みちしるべ 業務部長・ジョブコーチ 千賀 治
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