事業所名

株式会社丸商加工

所在地

奈良県大和郡山市

事業内容

野菜・水物・果物の加工、店頭販売、仲卸業務、小売

従業員数

50名

うち障害者数

5名

 

（内訳）

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	5	野菜の小分け、袋詰め、梱包
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 障害者の従事業務・職場配置
4. 取り組みの内容
5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

事業所外観

1. 事業所の概要

当社は昭和60年6月の設立である。量販店や学校給食向けを中心とする野菜・水物・果物の加工、店頭販売、仲卸業務、小売り等を業務内容としている。事業場は奈良盆地の北西、西名阪自動車道郡山インターチェンジにほど近い奈良県中央卸売市場の西方に位置する。

食の安全が問われるなか、農薬や雑菌による不安のない、安心して食べられるものを消費者に提供することを使命とし、消費者ニーズと青果物流通の変化を的確に捉えつつ、迅速な対応によって顧客の信頼を得ることを経営方針としている。

障害者雇用は、設立後まもない頃から取り組んでおり、現在知的障害者が5名在籍している。定着度も高く、平成19年10月にはその功労に対し障害者雇用優良事業所として奈良県知事表彰を受けた。

2. 障害者雇用の経緯・背景

会社設立後間もない頃、知り合いでもある養護学校の先生の訪問を受け、知的障害者の雇用を勧められた。創業者である寺田昌義代表取締役は、当社設立前に役員を務めていた会社で、下肢に障害のある中途障害者を雇用した経験があったものの障害者雇用には多少の躊躇があった。しかし、先生の熱心な勧めを容れ、知的障害者をまず職場実習で受け入れることにした。当社での作業は、特に複雑ではなく、朝から晩まで同じ仕事をこなすことが重要である。縁あって採用した障害者は、仕事が熱心なこともあり、結果的に、当時採用した障害者がその後も定着し、勤続年数は、約20年に及ぶほどになった。この経験から、知的障害者は大切にしたい、という思いを強く持っている。

3. 障害者の従事業務・職場配置

5名の障害者（うち2名は重度）は、いずれも主としてじゃがいもなどいわゆる「土もの」野菜の小分け、袋詰め、梱包の作業に従事している。梱包用機械のベルトコンベアの周囲で、商品を所定の分量に小分けして計量し、袋詰めした後、ベルトコンベアに流していく。

5人の配置はバラバラだが、障害者のそばにはベテランの社員やパートタイマーを配置し、作業を的確に進めているか見守るとともに、声をかけるなどして単調な作業も根気よく続けられるようそれとなく配慮している。

障害者のうち25歳の男性（重度）は、小分け・袋詰めの作業が途切れないよう、作業台に商品を補給する作業を受け持っている。商品の減り具合を見るとはなしに見ながら、絶妙のタイミングでみんなの手元に段ボール箱の商品を流し込んでいく。梱包用機械は2カ所あるが、巧みに両方に目配りをして作業を進めている。

障害者は、これらの作業のほか、機械で袋詰めされたぜんまいなど水物の整理・梱包などにも従事している。

梱包等作業の様子

4. 取り組みの内容

障害者の採用はおもに養護学校からの紹介である。依頼があれば職場実習を受け入れ、適性を見極める。全体の従業員数50名（うちパート30名）のなかで障害者は5名である。現在のこの員数は決して限界ではないし、若い知的障害者で適性のある方は積極的に採用を考えているが、他の従業員との人間関係にも配慮が必要であり、門戸を拡げすぎることも難しい。公共職業安定所を通じての中途採用は比較的少ない。

会社として障害者の職場定着推進チームや職業生活相談員などは設けていない。しかし、代表取締役の妻が、健康管理ほか障害者への日々のさまざまな手助けを担っている。一人の重度障害者については業務遂行援助者として介助を行っている。

作業内容そのものは複雑ではないが、速さと正確さが必要である。健常者が行う作業の流れに乗っていけるよう、現場に良い雰囲気を作り出すことを心がけている。休憩時間なども、作業場に隣接する休憩室でみんなと一緒に談笑し、心身共にリフレッシュさせるようにしている。

障害の程度により作業能力が劣る者については、賃金も低く設定せざるをえない。しかし、午前8時から午後5時までの所定労働時間は遵守し、疲労が残らないよう、終業時刻になれば帰ってもらっている。休日も週2回は確保している。賃金は月額で定め、賞与も支給している。福利厚生のひとつとして、一泊の社員旅行に障害者も参加する。

障害者の家族や関係機関と常時連絡を取り合うことまではしていない。何かトラブルがあったときは必要に応じ相談、対応する。

仕事などのストレスから時に粗暴な行為に走り、周囲の従業員に悪い影響を与える者もいるが、そういうときはその行為が間違っていることを本人に納得させることが大切なので、代表者自らその行為をまねてみせたうえで諭すこともある。障害者に対しては何より「愛情をもって」接するようにしている。

助成金に関しては、一人の重度障害者について、業務遂行援助者の配置による重度障害者介助等助成金を受給したことがある。それ以外には、特段の受給事例はない。助成金が受けられるから障害者を雇い入れるとか、何か措置を行う、という発想はない。

5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

障害者は重度であれ軽度であれ、職場に自然にとけ込んでいる。そうであるからこそ、3名の障害者が20年も勤続できた。うち1名は、平成19年度、会社が事業所表彰を受けたのと同時に、「優秀勤労障害者」として「奈良県雇用開発協会長表彰」を受けることができた。

これらの受彰は、会社や従業員にとって名誉であることはもちろん、取引先や取引金融機関などに対する信用や評価を高めることになり、大きなメリットといえる。障害者雇用はある意味でハンディを背負い込む面もあるが、決してマイナスだけではないのである。

寺田社長の夢は、知的障害者にも家庭をとのことである。心身が成長していけば当然異性にあこがれをもち、互いに愛情を抱くことにもなる。障害者だからといって人生の可能性をふさいでしまってはいけない。結婚は個人的なこととはいえ、事業主は単に従業員として障害者を「雇用」するだけでなく、人生全般について係わるべきではないかと考えている。

事業所には、住み込みのできるスペースもあり、仕事も生活も援助できる体制は整っている。障害者にも健常者同様の人生を送れるよう、援助を惜しまないつもりである。

執筆者  ：  社会保険労務士    大西  守