職場の先輩として自覚をもって働く！
- 事業所名
- 医療法人堀口整形外科病院
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- あらゆる整形外科疾患等に対して、一貫した医療を提供できる総合的整形外科病院
- 従業員数
- 123名
- うち障害者数
- 5名
（内訳）
障害 人数 従事業務 視覚障害 3 マッサージ師 聴覚障害 0 肢体不自由 2 理学療法士、事務職 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
医療法人 堀口整形外科病院（以下、「病院」と言う。）は、昭和30年、和歌山市に開設以来、地道に実績を積み重ね、地域では非常に有名で信頼のおける整形外科病院である。現在、あらゆる整形外科疾患等に対して、初期治療から手術、リハビリテーション、社会復帰に至るまで一貫した、また、救急病院として、24時間体制の医療を提供している。
院長の「医道に徹する」という合言葉のもと、マニュアル通りの治療ではなく、患者の身体的な特徴、また、仕事、学校、家族などの生活環境により、それぞれ状況が異なる患者一人ひとりの状況にあった治療を行うことを第一に考え、患者や家族にとり、何が一番最適かを常に考える基本方針をとっている。
2. 障害者雇用の経緯・背景
（1）障害者雇用までの経緯
昭和40年、地元の盲学校を卒業した視覚障害者がマッサージ師として、病院に就職して以来、当該盲学校からの紹介や、その他の紹介などにより障害者を雇い入れ、現在では、視覚障害のマッサージ師（3名）、肢体に障害を抱える理学療法士（1名）、および事務職（1名）の、計5名が元気に働いている。
（2）病院としての姿勢
病院では「資格を有するなど各々の業務に対し適応能力があれば、障害者であっても積極的に採用し、処遇面においても平等である」という基本方針があり、その方針のもとで働く障害者5名のうち3名が30年以上もの長期間にわたり在職している。
3. 取り組みの内容
障害者5名のうち、肢体障害を抱える事務職以外は、リハビリテーション科で勤務している。
（1）リハビリテーション科での業務内容
リハビリテーション科は、病気やケガ、高齢などにより低下した機能・能力を、医師の指導のもと、理学療法・作業療法によって回復を図り、 患者の早期の職場復帰、家庭復帰を支援する部門である。この部門の役割は、リハビリ訓練により、病気やケガなどで生じた障害を少しでも無くすための療法を行う重要なポジションであり、4名の障害者は、他の理学療法士等とともに、毎日の治療に専心している。
（2）視覚障害者の業務
3名の者は、何れも職業生活30年以上のベテラン職員であり、長年の臨床経験により感が鋭く、視覚に障害があるようには見えないほどである。よって、日常の治療業務などは、一般の理学療法士職員と遜色なく行うことができている。
なお、特に障害が重い職員に対しては、出来る限り治療場所を固定するような配慮がなされている。助手職員が、患者を誘導し、治療に支障が出ないような配慮がなされている。また、診療録や処方箋などの書類作成については、健常者の職員が、口述を代筆することとしている。
（3）先生と呼ばれる立場
リハビリテーション科では、視覚障害者を先生と呼んでいる。勤務する職員のほとんどが、マッサージ師や理学療法士などの専門的な資格を有しているためである。
かつて、昭和40年代に業務に就いた頃、まだ理学療法士資格が認められたばかりであり、職場には人員も揃っていなかった。よって、彼らは、理学療法士ではないものの、先頭に立って患者のリハビリに向き合っていったのである。現在働いている職場の理学療法士は、学校を卒業して、彼ら先輩の背中を見て育成されてきたのであり、専門性などは異なるものの、前向きな働き方には、尊敬を持って接している。
彼らは、後輩の前を走る先輩として、そして、患者から先生と呼ばれる立場としての自覚を持ち、一生懸命働いているのである。
（4）就業時以外のフォロー
後輩の職員は、あくまでも“さりげなく”フォローを行っている。職員食堂に食事に行く際には、他の職員が障害者とともに採るように時間的な配慮を行い、配膳などを進んで行うなど、障害者としてではなく、科の先輩として大切に彼らに接している。
（5）職場外でも貢献
3名の職員は、いずれも自分の職業である理学療法に対し非常に積極的である。病院は、彼らの取り組みを全面的に応援しており、意欲を大切に考えている。
また、病院の思いに応え、うち1名は、（社）全国病院理学療法協会近畿会副会長、および同協会本部理事を拝命するなど、積極的に理学療法の向上に貢献するため、全国各地で開催される学会に出席するなど、日々の研鑽を怠っていない。
このように病院が大切にし、それに応えようとする彼らの真摯で積極的な思いが、後輩の理学療法士などにとり、大きな憧れとなり尊敬を集めているのである。
4. 障害者の処遇
病院は、各科ともアットホームな雰囲気に包まれ、離職率が非常に低い。リハビリテーション科においても同様であり、課長以下一般の職員も、ほとんど離職することなく業務に携わっている。
また病院の基本方針として、「処遇面については平等である」ということが謳われているため、労働条件は、一般職員と変わらない。給与は、その職種における給与表により適正に支払われ、退職金も同様である。また60歳以降も、希望すれば継続して仕事に携わることができる再雇用制度が導入されている。
5. 今後の基本方針
病院は、整形外科疾患に対する先進的な対応を行っている医療機関である。その重要な役割を占めるリハビリテーション科において、真摯に業務に従事する障害者がいる。
彼らが熱心に働くことで、周りにいる職員は、自らが携わっている業務についての重要性をより深く理解し、今後、病院に就職する後輩にもその熱い思いを語りついでいくことであろう。
執筆者 ： 紀の州コンサルティング 代表 濱田 智司
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