各障害の特性を活かした勤務形態への取り組み
- 事業所名
- 中部酒類販売株式会社
- 所在地
- 鳥取県倉吉市
- 事業内容
- 24時間営業のコンビニエンスストア
- 従業員数
- 40名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 1 レジ接客、ファーストフード作成 内部障害 0 知的障害 1 清掃、検品、商品陳列、ファーストフード作成 精神障害 1 清掃、検品、商品補充、ファーストフード作成、レジ接客 - 目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
本事業所は、倉吉市内にコンビニエンスストア3店舗を出店し、地域と密着したサービス業を中心とした事業を展開している。
(2)障害者雇用の経緯・背景
平成16年度にハローワーク倉吉の紹介で精神障害を有する者を雇用した際に、障害の特性が十分理解できないままに、解雇せざるを得なかった状況になった経緯がある。
その反省から、ハローワークの障害者面接会に積極的に参加するなど障害者理解に努め、現在3名の障害者を雇用している。新卒の知的障害者は就学中の現場実習を経て卒業後のトライアル雇用実施後に採用している。
2. 取り組みの経緯・背景
(1)失敗例から学ぶ
最初に雇用した精神障害がある者は、外見上何ら障害があることが分からないこともあり、障害に対する理解及び配慮が欠けていた。本人の働くイメージと実際の業務執行能力とに大きな差があることにとまどいを感じ、それがストレスになり離職せざるを得なかった前任者の事例を参考とし、業務内容の説明に充分に時間をかけ、勤務時間を含め、本人の意向を取り入れながら勤務日程を設定していった。
(2)障害の特性を活かした勤務時間の設定
障害名 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
精神障害(Oさん) | 休 | 8:00 ~ 12:00 |
9:00 ~ 13:00 |
休 | 9:00 ~ 13:00 |
8:00 ~ 12:00 |
8:00 ~ 12:00 |
肢体不自由(Hさん) | 14:00 ~ 16:00 |
休 | 14:00 ~ 16:00 |
休 | 14:00 ~ 16:00 |
14:00 ~ 16:00 |
14:00 ~ 16:00 |
知的障害(Mさん) | 休 | 9:00 ~ 16:30 |
休 | 9:00 ~ 13:30 |
9:00 ~ 16:30 |
11:00 ~ 16:00 |
11:00 ~ 16:00 |
(※土・日・祝日はバス運行によって変更あり)
イ Oさんの勤務時間は午前中に固定し、半日集中して働くリズムを作ることにより、業務内容がほぼ固定され、精神的に安定して仕事に取り組めている。
ロ Hさんは下肢機能障害があるため、安全に仕事ができるように店内があまり混雑しない時間帯を勤務時間としている。
ハ 仕事を覚えるのに時間が必要なMさんに対しては、ミニジョブコーチと同日に稼働日を設定し、つねにミニジョブコーチの指導が受けられるようにすることにより、本人が安心して働けるように配慮している。
(3)職場配置の配慮
イ 3店舗の地域性
地域性によって各店舗の客層に特性があり、配置している本店舗の客層は、基本的に穏やかで、障害者に対しての理解も進んでいる。また、飲酒ができる店が多い地域の店舗への配置は避けることとした。
ロ 店舗の広さ
特に、下肢機能障害者は、杖を利用しており、転倒しやすいために出来るだけ広いスペースで安全に勤務できるように、3店舗中、一番広い本店舗へ配置している。
ハ 人的配慮
知的障害者は、毎日、同じ内容を丁寧に根気よく指導することにより、ゆっくりではあるが仕事を着実にこなす特性を有していることから、業務内容をわかりやすく丁寧に、穏やかに指導することができる人材が居る本店舗へ配置し、ミニジョブコーチとして日々業務を共に行っている。
(4)障害特性を活かした作業内容
障害名 | 作業内容 | 配慮事項 |
---|---|---|
精神障害 | 清掃、検品、レジ、商品補充、ファーストフード作成 | 作業内容を固定し本人のリズムで習得できるように配慮 |
身体障害 | レジ接客、ファーストフード作成 | 安全に配慮し、作業動線をできるだけ短くする |
知的障害 | 清掃、検品、商品陳列、ファーストフード作成 | 苦手な計算が必要なレジ接客を避け、バックヤードを中心とした作業を組み合わせる |
(5)能力育成への取り組み
新卒者の知的障害があるMさんには、オーナーの直接的な指導は厳しいと受け止められることも予想され、また不特定の従業員からの指導では一貫性がないことから、リーダー格の従業員一人をミニジョブコーチと名付け直接的な指導にあたることとした。
ミニジョブコーチは、日常的な業務に関する指導やオーナーからの仕事伝達や困ったことを一緒に考えていく役割を担っている。
Mさんは、清掃など体で習得している作業については優れているが、新しい知識を獲得することが非常に苦手である。ミニジョブコーチの指導のもと、タバコの銘柄覚えに挑戦している。Mさんの身近に居る人たちが吸っている銘柄は、人名と銘柄を一致させて覚える方法を取り入れている。次第に習得した銘柄数は増加している。その自信が、他の商品陳列等の作業にも影響を及ぼしている。


3. 取り組みの効果及び今後の抱負
コンビニエンスストア業務内容は、多岐にわたっているため、それぞれの特性にあわせた業務を組み合わせることができ、勤務時間においても時間単位で設定でき、個々の実態に即した勤務が構成できる。このことが安定して働ける要因だと考えられる。
「それぞれの障害そのものを十分に理解しないままに、3名のうち2名はトライアル雇用を経て雇用したが、熱心に業務に取り組む彼らの姿勢は、他の従業員に良い刺激になっている。障害者だと意識するのではなく、自然体で接することにより、個々の能力が引き出されていると感じている。障害がある人たちから学ぶことがたくさんある」と福井代表取締役は、障害者雇用を前向きに捉えている。
また、福井代表取締役は、今後さらに業務内容を分析し、重い障害がある人たちが働ける場を工夫してみたいという抱負を語ってくれた。こういった気持ちを有しているオーナーであるからこそ、障害がある人たちが生き生きと安心して、日々働けるのだと納得したところである。
執筆者 : 私設相談所おしゃべりルーム 代表 八木 啓子
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