事業所名

海産物のきむらや株式会社

所在地

鳥取県境港市

事業内容

水産物加工及びもずく製品販売

従業員数

70名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	1	製品梱包
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
2. 取り組みの経緯、背景・効果
3. 今後の課題

事業所外観

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

本事業所は、食はすべてのいのち（命）の源であるという信念のもと、商品の品質、衛生管理、もずくに秘められた未知なる可能性の開発研究を行っている。

産地との連携を綿密に計り、生産、需要、供給をバランスよく行うことにより、自然と人が共存できる社会を常に意識し、やさしい味を消費者のみなさんに届けている。

（2）障害者雇用の経緯・背景

個々の社員が品質管理、衛生管理に責任を持つことが求められる会社であることから、正社員のみで構成されている。したがって、障害の有無が問題ではなく、正社員としての仕事がこなせるか否かが採用の基準になっている。

ハローワーク境港の担当者に対し、こういった雇用に対する基本的な考え方を提示し、また、現時点で求人はしていない点についてもはっきりと伝えていたが、担当者からは、非常に熱心に採用についての打診があった。

障害者雇用率の充実の必要性も背景にあり、3ヶ月のトライアル雇用にふみきった。3ヶ月間の実習では、包装ラインの最終梱包作業をラインの流れを止めることもなく、機械の扱いもマスターしたことから、十分に正社員としての仕事がこなせると判断し正社員として採用した。

2. 取り組みの経緯、背景・効果

（1）苦手なコミュニケーション場面を極小にした職場設定

当事業所の業務の中心である衛生管理を徹底した包装業務は、集中力に加え孤独な作業に耐えることが要求される。人とコミュニケーションをとることが苦手であり、一つのことに集中して作業することを好む者にとって最適の作業種であることから、発達障害者に適しているのではないかという仮説のもと、配置を行った。

（2）障害の特性を活かした作業への配置

発達障害者の一般的な特性である、手順を遵守しなければ気が済まない点、一度マスターした操作手順が変わることを極端に嫌う点が、正確な作業を行う上で利点となっている。

製品仕上げ最終ライン

（3）作業意欲、達成感に直結するライン作業

最終ラインの梱包作業を一人で受け持つため、機械のボタン操作を手順とおりにこなし、自分の手で製品が発送直前仕様になる快感は仕事への意欲を高めることに繋がり、仕事をしたという達成感を持つことができる。また、紐がくるりと回って梱包されるリズムは機械的であると同時に心地よいリズムと感じられ、長時間の作業も抵抗無く従事できる条件の一つとなっている。

また、梱包作業によって得られた自信から他のラインの作業にも抵抗なく参加できている。

梱包機械による仕上げ

梱包作業以外のラインへの参加

（4）その他の配慮

イ  正社員に課せられる課題を免除

全員に課せられている「私の決意・行動ルール」の提出については強制をしない。

食堂の壁に貼られた行動ルール

衛生管理手順の写真

ロ  衛生管理等の行動指標をわかりやすく提示

衛生管理の手順を図や写真をつかってわかりやすく提示することにより、苦手なコミュニケーションに頼ることなく、目で見て確認した上で作業に取りかかることができ、精神的に安定できている。

3. 今後の課題

今後、障害者雇用率の向上を目指す必要性は十分認識しているが、衛生管理を最優先としている本社において、衛生管理能力に優れた正社員を雇用するという理念は崩すことはできない。したがって、作業工程そのものを個々の障害がある人に対応させていくには限界があると考えている。商品の高品質を目指すために成すべきことを優先させざるを得ないのが現実である。しかし、今回採用した発達障害のAさんは、即戦力として働ける力を有している者であり、他の社員が障害者として特別視する存在ではない。今後も当社の作業に適した人材であれば、障害にかかわらず正社員として採用することは可能であろうと考えている。
（中川邦義常務取締役  談）

執筆者  ：  私設相談所おしゃべりルーム  代表  八木  啓子