2007年度作成

事業所名

須山木材株式会社

所在地

島根県出雲市

事業内容

木造住宅の柱・梁の継ぎ手や仕口を機械で行うプレカット加工等

従業員数

80名

うち障害者数

3名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	木材加工
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	1	清掃、製品整理
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 取り組みの内容、効果
4. 今後の課題、展望等

1. 事業所の概要

当社は、明治10年4月、出雲市に木挽屋として手挽製材を創業。平成19年4月に創業130周年を迎えた老舗である。出雲、松江、大阪に6つの事務所があり、木造住宅の柱や梁の継ぎ手や仕口を機械で行なうプレカット加工などを行っている。インターネットでの木製品販売も行っており、様々な商品・事業を展開している。

従業員数は80名。うち聴覚障害者2名、知的障害者1名を雇用している。

2. 障害者雇用の経緯・背景

障害者雇用については、最初にハローワークから話を受けたところで、ひとまず会ってみようという感じでスタートした。その際、特に大きな不安感、抵抗感は無かった。

当社の考え方として、雇用にあたっては障害者ということで特別扱いはしていない。従業員である以上、特に障害者であるからどうこうという区別はせず、会社の決まりは同じように守ってもらい、行事には同じように参加してもらう、というスタンスをもっている。もし何らかの支障がでてきた場合には相談に応じていくが、今までそのようなトラブルがあったことは無い。

なお、当社は平成19年度に「障害者雇用優良事業所」として島根県雇用促進協会会長表彰を受賞している。

3. 取り組みの内容、効果

木材加工に2名、工場内の整理・清掃等に1名の障害者が働いている。

【Aさん（聴覚障害：難聴）】

【Bさん（聴覚障害：全聾）】

（1）採用の経緯と業務内容

ハローワークからの紹介で採用。

Bさんは通常、工場の中でのプレカット加工［CAD(キャド)で入力したものをCAM(キャム)で読み取って加工していくラインの作業］の業務についている。また、看板屋で勤務していた経験があることから、手先が器用で文字を書く作業などに非常に長けているため、看板等の製作を全て任せることもある。

（2）サポート体制

当初は「手話通訳担当者の委嘱助成金」を活用。新しい業務を覚えてもらう際などは手話通訳担当者の方にサポートを依頼し、業務遂行上必要なコミュニケーションについてスムーズにとることができた。それが終わったあとは、筆記での情報伝達でうまく他の従業員とコミュニケーションを取るなど、社内でのナチュラルサポートが形成されている。

例えば、各部署での朝礼や月に1回の全体朝礼、社長の話などでは、同じ部署の従業員がメモを取り、それをBさんに後から見せるような形をとっている。その他、全社員が集まっての研修会では、「一番身近な人の方が伝わりやすい」という話が本人からあり、ここ数年はBさんのご家族に来ていただき手話通訳を行ってもらっている。

（3）今後

このように社内でのナチュラルサポートが形成され、ご家族との連携も良好なため、Bさんの社内でのコミュニケーションに関する課題は特になく、問題なく勤務している。また、社内で様々な改善提案ができるような制度に自ら応募するなど、常に建設的な意見をもち、提案してくれており当社の発展に貢献してくれている。定年まで十分に働ける体力があり、今後も戦力として働き続けてもらいたいと考えている。

【Cさん（知的障害）】

（1）採用の経緯と業務内容

3年ほど前にハローワークからCさんを紹介され、最初は職場体験として養護学校高等部の2年生と3年生の時に何日間か職場実習を行った上で、ぜひお願いしたいということとなった。雇用にあたってはハローワークの方、養護学校の先生方と相談し、職場適応訓練の制度を活用した。

工場長が主となって指導し、工場内の清掃や製品の整理など様々な仕事を行っている。働く時間や曜日・日数は他の従業員と変わりない。障害は軽度であるため、仕事において大きな支障は無いようである。普段は製材工場で仕事をしているが、他の部署が忙しい時には手伝いに行くこともあり、指導する者は替わるが他の部署でも対応ができるようにしている。なお、創業130周年の記念で1泊2日の社内旅行で出かけた際、Cさんも一緒に参加するなど、普段から他の従業員との関係が良好であることがうかがえる。

（2）サポート体制

外部のサポート体制としては、養護学校の先生が定期的に巡回、様子を見に来ている。困ったことがあればハローワークの担当の方か養護学校の先生に相談する。

また、ご両親、特に母親はよく会社に訪れており、直接ご家族に話すことも考えられる。家族との連携が十分取れており、母親がきちんとバックアップしているため安心している。家庭と会社の連携や家庭自体がうまくいってないと、トラブルなどたくさんの問題が起きてしまう可能性が高いが、連携があれば、何かあっても未然に防ぐことも可能であると考えている。

（3）取り組みの効果と今後

無断欠勤は無く、毎朝出勤時には「おはようございます」と元気な声で挨拶した後で自分の持ち場につく。帰りもきちんと大きな声で挨拶をして帰っていく、というように元気よく通っている。朝晩にきちんと挨拶をするのはCさん一人であり、模範社員のような感じである。また、当社では週替わりで朝礼の当番を決めており、数週間に1回はCさんにも当番が回ってくる。小冊子を1日1ページ読み、感想を言うようにしているが、Cさんもきちんと自分で考え感想を言っている姿から、前もって勉強しているのではないか、と他の従業員も感心しているようだ。Cさんの存在は、他の従業員にとって良い刺激になっていると感じている。

今後は、職域を拡大するために、目標を持ちチャレンジすることを勧めている。自動車免許を持っているので、フォークリフトの免許を取得し、自分で品物が出し入れできるようになることを目標にする、といったことが必要と考えている。

このようなことにチャレンジしていくことは、本人にとっても励みになると考えている。しかし、単純作業ではないため、「なぜこのような物の置き方をするのか」、「一度荷を下ろして元に戻す時、同じように置かなければ次の時に困ってしまう」、といったことが果たして理解できるのかという問題があることから今後は、分かりやすい指導方法の考案など、外部の支援機関やご家庭と相談しながらサポート体制を整えていきたい。

4. 今後の課題、展望等

障害者雇用については、現在働いている3名のような方であれば、特に問題無く採用につなげていけるだろう。

障害の種別に関わらず「障害者」ということでの先入観は持っていない。一度会って互いに話をし、職場はこういうところだと実際に見てもらい、「本人もやる気が出るのか出ないのか」、「ちょっと自分では無理だと思うのか」など、現場を知った上で話しをすることが一番良い。男性であれ女性であれ仕事をする場はたくさんあり、実際のことを理解してもらうことが良いだろう、と思っている。そのようなステップを踏み、会社側と障害者がお互いに話し合い、理解し合うことが大切だと考えている。

執筆者  ：  松江障害者就業・生活支援センター  所長  青山  貴彦

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