「人手が足りないところの補助」から「なくてはならない戦力」に
- 事業所名
- 有限会社大社ハイヤー
- 所在地
- 島根県出雲市
- 事業内容
- 道路旅客運送業、介護事業
- 従業員数
- 25名
- うち障害者数
- 1名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 1 福祉車両洗車、送迎補助、清掃 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
昭和46年創立で、道路旅客運送業を営む。一畑電車の出雲大社前駅のすぐ近くに事業所をかまえ、旅客部の他、平成15年6月に介護事業部を立ち上げ通院の送迎などの事業を行っている。従業員は25名で、うち知的障害者を1名雇用している。
2. 障害者雇用の経緯・背景
社長夫人が地域の社会貢献のために障害者雇用に関心をもち、島根県雇用促進協会が主催する平成18年度障害者職業生活相談員の研修を受講し資格を取得した。研修の後、当社でもぜひ障害者を雇用したいと考え、ハローワークに相談した。
3. 取り組みの内容、効果
(1)採用の経緯
ハローワークから「障害者就業・生活支援センターリーフ」(以下、「リーフ」という。)に相談があり、Aさんが候補にあがった。ハローワーク、リーフ同席のもと面接を行った。Aさんの真面目な印象や丁寧な受け答えが気に入り、また、支援体制もしっかりしていることから即採用することを決め、平成18年12月から勤務している。
(2)業務内容
主な業務内容は、福祉車両の洗車、ストレッチャー、車いす等の掃除である。もともと普通の旅客用タクシーは、乗務員自身が洗車しているが、福祉車両の洗車については、運転手の手が回らず、他の従業員が合間を縫って行っていた。そこにAさんが入ったことで、従業員は、それぞれの業務に専念できるようになり負担が軽減した。
また、仕事量が少ないという本人からの申し出もあり、本人にできる仕事を検討した。その結果、昨年5月からデイサービスの送迎補助の仕事を業務として組み込み、仕事の幅が広がっている。
勤務形態
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月曜日~金曜日 9:00~16:00
(日祝休み。土曜日は隔週で出勤。) |
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一日の業務の流れ
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9:00~
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近隣の清掃 |
9:30~10:00
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デイサービス送迎補助 |
10:00~15:00
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福祉車両の洗車他 |
15:00~15:30
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デイサービス送迎補助 |
~16:00
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片付け |
(3)サポート体制

雇用の初日から、リーフのスタッフが関わっている。指導方法(作業の手順、仕事のやり方)、基本的なマナー(挨拶の仕方、服装等)について、具体的な助言や指導が行われた。
デイサービス送迎補助の業務を組み込んだ際も、服装やお年寄りへの接し方等について指導している。
そして、雇用当初の集中的な支援が終わった後も、フォローアップとして月に1回程度職場に訪問してもらっている。
また、両親も定期的に職場を訪問し、従業員から様子を聞いたり、家庭での状況を連絡したりするなど、熱心にAさんを支えようと努力している。家族との連携もしっかり取れており、支援機関と家庭との両面からのサポート体制により、雇用の継続を支えている。
(4)取り組みの効果と今後

Aさんの仕事振りには周囲も感心しており、雨が降ったり、冬の寒い中でも不満一つ言わず、黙々と作業をしている。Aさんの頑張りを見て、より一層仕事のしやすい環境を整えたいと考え、島根県雇用促進協会に相談。平成20年1月に「障害者作業設備設置等助成金」を活用し、屋根付きの洗車場を整備した。
屋根付き洗車場を整備後、洗車道具やホースなどの配置は、Aさん自身が使いやすいように工夫するよう指示をしたところ、本人が自らタイヤホイールを利用してホースを巻き付けておく道具を作ったということであった。自身の業務についてしっかりと考え、創意工夫するという仕事への意欲や能力が感じられるエピソードであった。

周りの従業員からの信頼も厚く、実際に「彼は本当によくやってくれています。彼がいなくなると困る」という声もあがっている。普段の様子を見ていても、従業員の中に溶け込んでおり、従業員からも温かい目で見守っているという感じが伝わってくる。
また、お年寄りからもその働きぶりが喜ばれ、慕われているようである。Aさんが休みの日には、「今日は、お兄ちゃんはどうした?」とお年寄りの方から声をかけてくれるという。こうした社内外の繋がりや信頼は、本人にとっても仕事をしていく上での大きなやりがいや糧となっているのではないだろうか。
4. 今後の課題、展望等

デイサービスの送迎・乗降の補助の業務に同行し、実際の業務風景を見た。近隣の老人介護施設にて、お年寄りを車まで誘導し、雪の降りしきる中でもスムーズな動作で乗降台を置き、しっかり支える姿や、お年寄りが笑顔で「ありがとう」と言いながら車に乗り込んでいく姿があった。Aさん自身も、人の世話をするのが好きなようで、この仕事が楽しいと話しており、勤労意欲をしっかり持って取り組んでいる。
また、当初は実家で両親と暮らしていたが、本人の強い要望もあり現在はアパートで一人暮らしをしながら、自立に向けて取り組んでいる。一人になってからは、主に食生活や金銭面での乱れがあり、仕事を休むようなこともあったが、家族にも協力していただき、リーフと連携しながら自宅訪問して様子を窺ったり、声かけや助言等を行ったりしている。このように、まだまだ課題も多いが、企業だけで抱え込まず支援機関、家族と連携していれば安心である。
Aさんにできる仕事はもっとある。色んな仕事にチャレンジして欲しいという思いもあり、これからもAさんの働きに応じて仕事を増やしていきたいと考えている。また、Aさんに限らず「障害のある方に仕事の場を提供したい」という思いから、草刈等で人手が足りないときに、Aさんの友人を職場実習として受け入れている。
今後、他の従業員にも障害者職業生活相談員の研修を受講させる予定であり、会社として引き続き障害者雇用、障害者の就労支援に貢献していきたいと考えている。小さな事業所では、一人ひとりの従業員への負担は重くなることも多いが、その分Aさんはなくてはならない重要な存在となっている。
執筆者 : 松江障害者就業・生活支援センター 所長 青山 貴彦
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