障害者に優しい企業づくりを目指して~障害者支援機関と連携し障害者の就労を支援~
- 事業所名
- 株式会社山豊
- 所在地
- 広島県広島市
- 事業内容
- 広島菜などの漬物の製造業・卸売業・小売業
- 従業員数
- 129名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 2 漬物製造加工業務・清掃業務 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
(1)経営理念
●私達は広島魁の精神でお客様の健康づくりを目指します
●私達は感謝と謙虚の心を忘れず幸せが実現できる人づくりを目指します
●私達は地域社会に貢献し山豊さんと呼ばれる店づくりを目指します
(わが社の環境使命)
自然の野菜を生かした健康づくりに貢献し、地球環境の保全に努め限りある資源を大切にします
(山豊のこだわり)
①手間を惜しまない
②感動を与えることができるか
③企業力=人間力
(2)沿革
昭和34年 | 山本商店を創業し、漬物業をはじめる。 |
昭和37年 | 山本食品有限会社を設立。 |
昭和48年 | 広島菜漬「安芸菜」で内閣総理大臣賞受賞。 |
昭和50年 | 広島菜漬「安芸菜」で農林大臣賞受賞。 |
平成 3年 | 株式会社山豊に社名変更。 |
平成 4年 | 直営店「お漬物処 長楽寺店」を開店。 |
平成10年 | JAS(日本農林規格)格付け認定取得。 |
平成12年 | ISO14001(環境システム)認定取得。 |
平成12年 | カナダ国立研究所と乳酸菌利用の共同研究。 |
平成14年 | 広島菜漬「安芸菜」で農林水産大臣賞受賞。 |
平成14年 | 広島県食品衛生協会「食品衛生優良施設表彰」を受賞。 |
平成16年 | 雇用均等法推進企業「広島労働局長優良賞」を受賞。 |
平成16年 | 優秀勤労障害者表彰(広島県雇用開発協会長)を受賞。 |
(3)事業内容
当社は、競争の激しい昭和37年に漬物業界に参入した。むしろ後発組ともいえる存在であったため、その生き残り策として「人がやらないこと、人が出来ないこと」を先駆けてやろうと云うことを社是とし、広島魁の精神で「創り出す心」を大切にして「安芸菜」「安芸紫」「倭」の山豊三絶をブランド化してきた。その結果、今日では年商16億円のリーディングカンパニーにまで成長した。これからもこの広島菜で「葉物加工日本一」を目指し、社員、お客様、地域社会の幸せ作りを経営理念とし、地球環境の保全に努め、限りある資源を大切にする環境使命を実践する。
2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用については、創業者(現会長)の「企業力=人間力、つまり人との触れ合いを大切にし、積極的な謙虚さをもって絶えず成長する人間を育てる」との考えの下、人に優しい企業づくりを目指し、また障害者雇用推進の勧めもあって平成元年に初めて公共職業安定所に障害者求人の申込みを行い、2名の身体障害者を採用した。
当時は、工場も狭隘で3箇所に分散しており、設備も十分でなく安定かつ快適に就労することはできなかったが、平成3年の新工場建設で職場改善も大幅に行われ、障害者雇用の定着化が図られた。
現社長もその社風を尊重し、「障害者であろうが無かろうが、一人の人間として皆同じ。必要だから働いてもらう。その中で、『働きやすい』だけでなく、『働いて良かった』と社員が思えるような会社を目指している」と障害者雇用に前向きである。

3. 障害者雇用の現状
(1)障害者雇用の状況
①雇用状況
・現在の障害者雇用数は2名で、いずれも重度身障者(上下肢不自由)である。

・30代の生産部の男性。中学校を卒業後、作業所、鉄工所を経て、公共職業安定所の紹介で山豊に入社。その後高校の夜間部も卒業し、終始一貫漬物生産加工の仕事に専念している。平成16年9月には優秀勤労障害者として広島県雇用開発協会長賞を受賞した。
・40代の生産部の女性。左上下肢機能障害。中学校、養護学校(高等部)を卒業し、縁合って山豊に入社し19年が経過した。当初は漬物の包装箱詰め作業に従事していたが、立ち仕事が困難なために途中で清掃業務に職場を変更し現在に至っている。

②作業指導
◎始めの頃の取り組み
最初のうちは、職場環境が整っていないせいもあって、お互いに不安、不信感があり、「これはさせられない」「これはできない」という仕事の進め方だったようである。特に安全面にはみんな気を使った。
◎その後の指導
彼らの就労を安定化するため健常者と区別無く、何でもできるように指導した。その結果、周りから彼らがいないと困るという存在になった。
◎現状
今は加齢も伴って二人ともよく体調を崩す時がある。そんな時、心も体もリハビリして仕事への執着心を強めるよう指導している。
(2)障害者雇用の取り組み
①事業所見学の定例化
広島市内約60の作業所共催で開催された「作業所見本市」への参加が縁で、平成15年4月に「障害者雇用に取り組む企業の見学会」が開催された。
・一般就労希望の作業所メンバーの働く意欲をもっと高めたい
・企業と作業所の今後の繋がりを模索したい
・実際の現場に触れ、意見交換をしたい
との作業所側の期待に山豊が応えて実現した。
見学会には、作業所の方約60名、広島県中小企業家同友会の経営者6名が参加され、工場見学・障害を持つ社員の報告・質疑応答で盛り上がった。その後も特別支援学校の職場体験学習へと発展し、障害者雇用の輪はひろがりつつある。
②ミニ講演会の開催
事業所見学会が話題となり、平成16年9月には社会福祉法人もみじ福祉会からの依頼で「障害者雇用ミニ講演会・相談会」に参加した。人事部門の人と一緒に参加した障害を有する社員からのメッセージには多くの人から感銘を受けたとの反響があった。
その後も養護学校の研修会に参加し、障害者の一般就労に関わる現状と課題について事例報告をするなどして、学校側と企業との交流・相互理解を深めることに努力している。特に、平成19年10月には保護者を対象にした卒業後の進路として企業就労を目指した取り組みについて学習した。
③作業の外注化
中元期、歳暮期の繁忙対策として商品の包装・箱詰め作業等の軽作業を近隣の知的障害者施設に作業依頼している。まだ始まったばかりで実験的な段階であるが、一層の定着化が期待されている。
4. 取り組みの効果 ~障害者雇用により会社はどう変化したか~
(1)メリット
①社内が助け合う雰囲気になった。
②本人がまじめに仕事をしているので、他の者も真剣に作業するようになった。
③社内安全対策上、随時職場パトロールやヒヤリハット情報の収集を行い、転倒防止策や作業手順の改善等の向上が計られた。
④社員の中で手話等を覚えた者もあり、障害者への理解も深まっている。
(2)デメリット
①当初は、他の社員が安全確保や作業効率低下の面から配置に難色を示した。
②自分で考えて仕事が出来ないので指導者が必要。
③慣れるまで指導者の努力が必要。
④工場内の構造がバリアフリー化されていないので、安全面から不安がある。
5. 障害者雇用の今後の課題
(1)障害者の職場定着のための取り組み
現在、朝礼会、家族との連絡会、レクリエーション参加等は行っているが、さらなる職場定着策として職場懇談会、意識調査、交換日誌、表彰制度等を検討したいと考えている。
(2)障害者トライアル雇用
現在は、身体障害者を中心にした「職場体験学習」に留まっており障害者雇用の段階まで行っていない。今後はさらに知的障害者も含めた就労を前提にした「インターンシップ」を導入するとともに、ハローワークの紹介による障害者トライアル雇用に向けての検討が急務である。
(3)企業内ジョブサポーターの養成
障害者の方が、共に働きながら、適性に応じ、持てる能力を発揮できるよう、職場の同僚として、障害者をサポートする「企業内ジョブサポーター」の養成が必要である。早急に選定して障害者雇用の定着化と雇用拡大に一層の努力をする。
6. わが社の障害就労者からのメッセージ
私は身体障害者ではありますが、右の利き腕が使えることと、朝晩親が送り迎えをしてくれますので働くことができます。そして、何よりも職場の人たちの優しさが今の私を支えてくれていると思います。
この仕事を続ける上で、いま私が心がけていることは、「カゼを引かないこと」「快く寝ること」「何でも美味しく食べること」です。皆さんも「働く」ことに執念を持ってください。そして夢と希望を抱きつづけて下さい。

私は言語障害があります。両上肢不自由ですが、職場の皆さんの支えで自分なりに満足できる仕事をこなしています。ありがたいことに、その成果を社長も認めてくれて、賞与ももらっています。
私のこれまでの経験では考えられない程の幸せです。皆さんも決して諦めないで下さい。明るく強く生きたいという気持さえあればきっとチャンスは巡ってきます。

7. 障害者雇用推進者のコメント
・障害者雇用に関わったのは、今から20年前のことで、その時採用した2名は、今でも継続して就労している。このように安定就労ができているのは、本人の努力もさることながら、周りの人の支えが大きな力になったのであろう。
・障害者雇用にみんなが関心を深めたのは5年前の工場見学からである。地元の作業所の障害者や企業経営者も参加した交流がもとで、その後ミニ講演会の開催や特別支援学校の職場体験学習へと発展した。そして、社員同士も小さな良い変化を見付け、その成長を喜び合えるようになった。「共に学び、共に育つ」気風が育ちつつある。
・企業は売上や利益を追求しなければならない。しかし、数字に表れない利益もあると思う。この目に見えない利益をどう意識し大切にしていくのかというのが重要である。これこそが人に優しい「人を活かす経営」の真髄であろう。
執筆者 : 株式会社山豊 総務部 顧問 森原 幸雄
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