事業所名

有限会社日和佐ハーネス

所在地

徳島県海部郡

事業内容

自動車部品製造業

従業員数

29名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	4	自動車部品の製造、倉庫内片付け等
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と状況
3. 取り組みの内容及び効果
4. 今後の課題
5. まとめ

事業所外観

1. 事業所の概要

当事業所は、徳島県南部の海部郡美波町という人口約8,700人の小さな町にある。近くには、四国八十八箇所の23番札所として知られている薬王寺と海亀の産卵で名の知れた大浜海岸があり、豊かな自然と温かい人々に支えられた非常に暮しやすい地域である。

平成12年5月より国内自動車メーカーの製造事業所(ワイヤーハーネスの組み立て)として事業を開始し、現在従業員は29名(内、障害者4名)で、家庭的な雰囲気の中、『地域に根ざした働きやすい職場環境作り』を基本理念とし、障害者雇用にも積極的に取組み、社会貢献・地域社会との共存共生を目指しているところである。

平成12年より障害者の職場実習や雇用の協力事業所（現在は障害種別関係なく）として、玄関にプレートを貼って、積極的に受け入れをしている

2. 障害者雇用の経緯と状況

事業所のある地域には、知的障害者更生施設や養護学校、精神障害者支援センター等があり、普段から障害者がより身近な存在であることから、設立当初より近くの養護学校生の職場実習の場として職域の開拓に努めてきた。

これまでの職場実習の受け入れについては、その支援の殆どが付き添いの職員や支援者に任せており、職場としては障害特性に係る知識や障害に配慮した支援ノウハウが不足していることから、従業員の中に障害に対する対処や接し方などの不安や抵抗が募り、なかなか雇用にまでは結びつかないという状況が続いた。

そのような中、障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター等からの情報提供及び支援、公共職業安定所の各助成制度等を利用しながら何とか1人2人と雇用に結びつけることができるようになった。また、本人や家族から喜びの声を聴くことで、改めて事業所として地域社会への貢献という本来の目的を意識すると共に、社会的責任を強く感じるようになった。

事業所としては、できるだけ障害程度が軽く、即戦力となる方を希望するのに対し、最近では特に障害の重い方や障害特性がつかみにくい方の就労希望が多くなり、相容れない状況になっているのが現状である。

3. 取り組みの内容及び効果

今回の事例では、当事業所がこれまで経験したことが無い“自閉症”という障害特性のある方を受け入れるということで、これまでの蓄積した経験からでは無理だと判断し、職場が一体となってその特性や配慮事項についてまず学び、理解していくところからスタートすることになった。

その為に、専門的機関である障害者職業センターでの職業評価及び職業リハビリテーション計画の作成、ジョブコーチによる支援、障害者就業・生活支援センターによる就業面と生活面の支援、公共職業安定所等との連携を図り、職場と関係機関が一体となった支援を展開することで、職務にマッチングさせていった経緯がある。また、従業員の中からも専任の指導者（子どもに同じ自閉症を持つ親御さん）を配置し、作業遂行状況を観察する他、本人とうまくコミュニケーションを図りながら、安全且つ効率よく作業遂行できるように役割を持ってもらった。

誘導機（コネクターに接続中）
 

種類ごとに、ワイヤーハーネスが所定の位置にあることを確認

接続する穴に正確に差込む
 

作業を中断する時は、必ず
札を！

（1）障害特性に関する共通認識

①本来の力を発揮するために、本人にとって分かりやすい枠組みを提示し職場環境を整えること。（例えば、分からない時や困った時に伝える内容の定型化や意思表示を助けるカード等の利用。）

②作業手順や作業環境の単純化や固定化、毎日の予定の明確化を図る。
（できるだけ、スケジュールの変更等はないように計画を立てておくが、止むを得ず予定変更や状況変化の際には、本人の状態を見ながら慎重に理解できるよう伝える。）

③職場実習に取り組む中で、本人のこだわりを否定するのではなく、本人の気持ちを理解し言葉で言い表せない感情や意志を汲み取る努力をするとともに、少しずつ指示された作業手順や内容が優先することの意識を高め、作業への対応力を高めていく。）

上履き・下履きもこれなら間違いなし

ゴミ箱は所定の位置に置くこと
 

昼食・休憩は、食堂を利用する
 

工場内は、清潔一番。 ゴミの処理も、各自が責任を持つ

（2）障害特性のメリットに着目

作業導入当初は、従業員を含め支援する側が障害特性を意識し過ぎ、本人のマイナス面に目を向け過ぎていたこともあり、作業能率が上がらない時もあった。しかし、その都度ケース会議を設けながら、自閉症という障害特性のメリットに着目してレベルアップを図るよう改善していった。

①こだわりがあるので、作業が丁寧でミスを生じることが少ない。

②作業ペースが一定していてムラがない。

③遅刻や欠勤をすることが少ない。

④マッチングすれば高レベルまで習熟することが可能である。

異常が発生する時は、どんなミスがあるのか、写真を見ながら常に点検する

ソケットのどの穴に入れるかは、番号を図示しているので、間違うことはない。
上段のワイヤーハーネスを入れてある下にも、番号がある

コネクターとコネクターブロックの合わせ方を写真で確認

色違いのワイヤーハーネスを所定の位置に掛ける

障害者本人の得意、不得意を明確に把握し、作業やシステムにスムーズに馴染めるかどうかを見極めながら進めたことで、うまくマッチング出来た。

4. 今後の課題

地域社会と共に歩むということで、障害者雇用にも積極的に取り組んできたが、まだまだその特性については未知の世界である。現在、精神障害者の職場実習受け入れをしているが、それぞれに抱える課題がたくさんあり日々模索している。今後、更に関係機関との連携を密にし、一人ひとりにあった内容や方法に様々な工夫をこらすことで、本人が満足して職務に取り組めるよう努力したいと思っている。

5. まとめ

今回の事例でも分かるとおり、それぞれに抱える問題を、職員一丸となり、また、関係機関をうまく巻き込んでその障害特性を理解することから取り組み、日々職務改善を進めていった。これを足がかりに戦略的に且つ組織的支援を行えるようになり、その効果として職務全体の効率化を図ることができたと思う。

地域にこのような企業があることは大変心強く、これからも増えることを念願している。それと同時に、我々支援者も、本人の「働きたい、自立したい」という意向を確認しながら、障害者本人が心から満足できる職業生活を送れるよう、日頃から企業との連携を密にして支援を展開していきたいと思う。

執筆者  ：  障害者就業・生活支援センター  よりそい  生活支援ワーカー  南山良美