初めは小さなきっかけから ～障害者の自立を支援したいとの思いも抱き～
1. 取り組みの背景
四国コカ・コーラのグループ会社である当事業所は、昭和57年にガラス類・金属類等の収集と選別、および、その再生製品の販売を目的として設立された。その後、「容器包装リサイクル法」の施行などを受けて、自治体にかわり資源の分別作業を専門に行うなど、独自の資源リサイクル技術を構築し、資源分別再商品化から販売までトータルなシステムを確立、低コストかつスムーズなリサイクル業務に取り組み、市町村の「容器包装リサイクル法」への対応をバックアップしている。
障害者雇用に関しては、歴史は浅いものの、社長を筆頭に非常に積極的に取り組んでおり、雇用率も10%を超えている。工場規模も拡大しつつあり、今後とも積極的に障害者雇用を進めたいと考えている。
2. 取り組み事例
（1）最初は小さなきっかけから
・当事業所は、地元密着型の企業であり、地域のことにも関心が高い。そのような中、地元企業としてボランティア的な感覚で障害者を雇用しても良いだろうと、気軽な気持ちで取り組んだのが初めであった。
・当然ながら、障害者雇用への理解にも乏しく、不安が大きかった。しかし、実際に雇用して、現場で働いてもらうと、予想していた以上に真面目な態度で仕事に取り組んでくれ、障害者雇用を進めていく上での大きな一歩となった。
・障害があるゆえに、100%の力を出し切れない場合もある。しかし、各人のもてる精一杯の力、それが80%の場合もあれば、50%の場合もあるだろうが、それを出し尽くしてくれれば良いとの理解で、その後も障害者の雇用を続けている。
（2）職場内での人間関係
・障害者の大半は養護学校出身者である。就職希望者は、養護学校在学中から職場見学や職場実習を受け入れている。
・養護学校とは、常日頃から連絡を密にしており、養護学校の先生も当事業所における具体的仕事内容を把握している。そのため、就職してからも十分活躍していける生徒を紹介してくれるなど、就職後のことまで見通してくれている。
・新規採用者は職場実習などを通じ、職場にある程度馴染んだ上で採用されること、さらに養護学校時代の先輩が既に現場で活躍していることなどもあり、初期における職場や仕事に対する不安も最小限にとどめられている。
・就職してからも養護学校時代の先輩後輩関係が維持されており、先輩が後輩を指導するとともに、後輩は先輩を尊敬かつ慕い、職場内でよい人間関係が築かれている。
・障害のある社員が仲良く元気に働く姿が良い刺激となり、触発され、職場全体に活気が満ち溢れている。
・職場の人間関係は、就業時間だけにとどまらず、各種レクリエーションにも生かされている。レクリエーションなどでは障害のある社員も一生懸命頑張り、その頑張りや達成感が自らの自信にもつながり、仕事にもプラスとなっている。
（3）職場配置など
・障害者は、実習などを経て採用しており、各人の適性や能力を見極めた上での配置を行っている。そのため、非常にスムーズに仕事に溶け込んでくれている。
・現場では、常時機械などが動作しており、油断をすると危険な箇所もある。そのため、常に監督者などが十分注意し、安全に仕事ができるようにしている。また、障害者の先輩も実地で指導するなど、周囲の温かい目で見守られている。
・一部作業施設などは障害の状態に応じて装置を工夫するなどしている。そのため、障害がハンディとならず、効率よく作業をこなすことができている。
・最初は、教育訓練に時間がかかるが、長い目で見守り、決して急かすことのないように配慮している。一方、障害者でも能力がさらに伸びるなどすれば、仕事内容もステップアップしていく。実際に後輩にそれまでのポジションを譲り、本人はさらに高度な仕事を任せることができた例もあり、本人にとって非常に嬉しくもあり、大きな自信につながった。
・障害の状況等によっては、既存の業務への配置が難しい場合もある。そのような場合でも、採用を見送るのではなく、障害状況に応じた新たな仕事を創り出すなどし、できるだけ障害者を雇用していけるよう工夫している。
（4）健康面への配慮
・障害の有無を問わず、個人個人の体調に十分注意を払い、不慮の事故や病気等にかかることなどないよう配慮している。
・障害者はみな若手であり、元気でもある。年配社員などはその元気をもらっているような状況である。
3. まとめ
当事業所は、知的障害者においては採用以前の段階から、職場見学や実習などを通じて、障害者本人の適性を見極めている。彼ら自身にも職場を体験してもらうことで、スムーズに職場に溶け込めるように配慮している。養護学校との連携も密であり、養護学校の先生にも実際の職場や職務を見学してもらうことで職場の雰囲気や職務内容を理解してもらい、職場環境により適した障害者を紹介してもらえるようにしている。
なお、養護学校出身者が多く、採用が増えるにつれて、養護学校時代の先輩後輩が、そのまま職場においても先輩後輩関係となり、事業所側が心配することもなく、新入社員は職場に溶け込んでくれている。
現在も事業を拡張している当事業所では、引き続き可能な限り障害者雇用を続けていきたいとしているが、その背景には、養護学校の先生方や保護者の方々の真摯な思いがある。
養護学校は生徒が卒業したらそれで終わりというのではない。卒業生が職場に定着するまで、また、職場に馴染めず転職することとなっても、新しい就職先を見つけ、そこに定着するまで、先生方が寸暇を惜しんで面倒を見てくれている。また、保護者の方々は、子どもの自立を真剣に考えるとともに、将来について深く心配もしている。このような姿を見るにつけ、企業としてできることは何でもやっていきたいというのが、社長をはじめとした当事業所の思いである。
現在は、障害者の自立支援も、まだまだ今後の課題として考えているに過ぎないと謙遜するが、近い将来、企業としてできる範囲での自立支援策が打ち出されることも期待される。
執筆者 ： 財団法人香川経済研究所 主任研究員 川上 浩志
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