事業所名

佐賀エレクトロニックス株式会社佐賀製作所

所在地

佐賀県神埼郡

事業内容

半導体の製造・販売

従業員数

562名

うち障害者数

11名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	5	半導体製品の検査・点検
肢体不自由	3	半導体製品の検査・点検
内部障害	2	半導体製品の検査・点検
知的障害	0
その他	1	半導体製品の検査・点検

目次

1. 事業所の概要
2. 取り組みの経緯・背景
3. 取り組みの内容及び効果
4. 今後の課題・展望

事業所外観（工場）・工場玄関前

1. 事業所の概要

（1）沿革

昭和40年4月新日本無線の全額出資により会社設立、昭和47年8月集積回路（IC）の生産を開始する。平成6年12月にISO9002認証取得、平成11年6月からCSPの生産を開始する。平成13年12月にISO14001認証取得、平成19年4月ISO/TS16949認証取得し現在に至っている。

障害者については、昭和40年4月の創業当初より、公共職業安定所や福祉施設から身体障害者等の雇用要請を受けて採用して以来、平成20年1月現在、11名を雇用している。

（2）従業員数  562名  うち障害者11名（平成20年1月1日現在）

（  ）内は重度障害者

2. 取り組みの経緯・背景

従業員数は562人でその内、障害者の雇用数は11名、雇用率は3.20%となっている。障害者については、創業当初より、身体障害者を雇用したことから始まり、その後、福祉施設や公共職業安定所からの雇用要請があり、現在11名の障害者が工場で働いている。

このような障害者雇用が進んだ背景には、佐賀エレクトロニックス株式会社として意識的に障害者雇用を促進したというより、障害があっても仕事に影響が無ければ雇用に問題は無いという考え方で雇用が進められてきた。職場環境も段差がなくフラットであったり、エレベーターが設置され、障害者にとって働きやすい環境が整っていたこともその要因と考えられる。

障害の種別は、身体障害者が10名でその内、聴覚障害が5名、下肢障害が2名、上下肢障害1名、内部障害が1名（心臓）、重複障害1名（聴覚・内部）、その他1名となっている。これは、作業工程がほとんど機械化されており、モニタリングを行いながら必要に応じて機械操作を行うことが主な仕事内容となるため、障害があっても、就業可能な仕事が多いことに依る。

3. 取り組みの内容及び効果

（1）障害者雇用の取り組み

勤務体制は交替勤務が基本となっており、1日3交替、4班編成で年間勤務シフトのもとで働く体制がとられている。障害者だけ特別に班編成を行ったり、別に作業のポジションがあるのではなく、他の従業員と同じ班編成で仕事を行っている場合がほとんどであるが、一部障害の状況によって、機械装置の高さや、その内容によって配慮が必要な障害者もいるので、その場合は、製品の検査等を主に担当している。

半導体の製造過程は、前工程と後工程があり、佐賀エレクトロニックスは後工程を受け持っている。作業工程は、ウエハーダイシング（ダイス個片化）→ICチップをフレームに載せる→ICチップとフレームに金線を張る→ICチップと金線を樹脂で覆う→フレームを切り離す→マーク入れ→組立・検査という一連の作業工程はすべて全自動化されている。このため、作業内容は、製造過程のモニタリングや機械操作、検査・点検等が主な仕事となっており、障害者も健常者も同じ作業を行っている。

就労の現場は、製品を台車で運ぶことが多く、精密製品であるため、エレベーターの設置、扉はすべて自動扉、作業床はフラットになっているため障害者にとっても働きやすい環境になっている。

選別作業（試験工程）

（2）雇用の効果

下肢障害や聴覚障害、内部障害等があっても、交替制勤務の中で健常者と一緒に仕事ができているので、作業効率や雇用効果も基本的には一般と同じである。

現場のリーダーの話によれば、仕事に対して真剣に取り組む姿勢や勤労意欲の高さ、コツコツとまじめに取り組む姿勢などは、他の従業員の模範ともなるもので、良い影響を与えているとのことであった。また、職場全体として、できるだけ健常者といっしょに働き生活することができるよう配慮されており、各作業工程に障害者を配置することで、他の社員が小さな気遣いをするようになり、精神的な部分で社員同士の人間関係やまとまりがでてきている。

会社で行われている、社員旅行や懇親会、レクリエーション等福利厚生事業にも他の社員と同じように参加しており、社員間のコミュニケーション、チームワークがしっかり保たれている状況である。

（3）生活面での支援

障害のある従業員は、日常生活面では自立されており、生活面での支援が特に必要なことはないが、個別的には配慮が必要な場合もあり、会社として障害の状況に応じて適時対応がなされている。

聴覚障害のある5名の従業員は、他の従業員と同じ仕事をしているが、コミュニケーションが必要なときは筆談を随時行うようにしている。また、手話が可能な従業員もいるので、必要なときは、中に入ってもらい仲介がされている。作業機器においても、作業の工程が赤、黄、緑の3色で示される機器を導入することによって視覚で作業状況が判断されるため、聴覚障害者にとってはスムーズに次の作業に移りやすい環境が整備されている。

他の肢体不自由者や内部障害者については、障害の状況が比較的軽く、特別の生活面の支援は必要なく、他の従業員と同じ対応で問題は無い状況であった。

三色で作業状況を示す機器

4. 今後の課題・展望

現在雇用されている身体障害者で最も長く勤務されている方は32年間で、短い方でも7年と比較的勤務期間が長いことが会社の特徴となっている。これは、障害者の仕事が特別の作業工程や部分的な作業ではなく、他の健常者の作業内容と変わらない仕事をされていることがその背景にある。

今後の障害者雇用については、会社で働くことのできる作業能力があれば、健常者との区別はなく、雇用を進めていきたいとのことで、アウトソーシングにおいても障害者雇用の実績があるとのことであった。

障害者の雇用について、必要な個々の配慮はなされているが全体としてみれば、障害を意識しないで雇用されている。しかし、バリアフリー化された職場環境は、障害者にとっては働きやすい環境であり、作業機器の開発等が進めば、今後、車いす使用等の重度の身体障害者でも雇用が可能である。

執筆者  ：  西九州大学  健康福祉学部  社会福祉学科  准教授  田代  勝良