常に他人を思いやる心で接する障害者雇用
- 事業所名
- 日本ハム株式会社デリ商品事業部諫早プラント
- 所在地
- 長崎県諫早市
- 事業内容
- 食肉加工品、生地商品、および各種加工食品の製造・販売
- 従業員数
- 682名
- うち障害者数
- 41名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 22 製造補助 肢体不自由 7 製造補助、分析業務 内部障害 0 知的障害 12 製造補助、洗浄、入庫業務 精神障害 0 - 目次


1. 事業所の概要
日本ハム株式会社の本体工場である諌早プラントは、昭和47年に操業を開始し、平成9年10月に第7期プラットホームを増設。
自家製生地の石釜工房シリーズや中華名菜に始まり、業務用商品にいたるまで年間40,000tを製造し、幅広く商品を提供している。
また、2004年4月にはISO14001認証を取得し、焼却炉コージェネレーションシステム導入をはじめとし、電力、重油、LPG、水使用量の削減に注力している。廃棄物にいたっては90%以上をリサイクルしている。
2. 障害者の雇用状況
当工場の障害者雇用状況 | ・・・ 合計41名 |
雇用率 | ・・・ 6.03% |
障 害 | 雇用人数(人) | 主な業務 |
---|---|---|
視覚障害 | 0 | |
聴覚障害 | 22 | 製造補助 |
肢体不自由 | 7 | 製造補助、分析業務 |
内部障害 | 0 | |
知的障害 | 12 | 製造補助、洗浄、入庫業務 |
精神障害 | 0 |
当工場は、社会的貢献に積極的に取り組んでおり地域社会との密接なコミュニケーションを大事にし、工場周辺の清掃活動や諌早市公害防止協定への参画等積極的に行っている。
障害者雇用もそういった地域貢献促進の姿勢に始まり、昭和54年5月21日から雇用を開始した。
業務内容も考慮し、極力積極的に採用を継続してきたことで、毎年2名前後の採用を行っている。
3. 障害者採用への取り組み
よりよい環境で障害者を雇用するためにさまざまな独自の工夫を行っている。まず、受け入れ段階では必ず入念な面談を行っている。その際、保護者・支援者にも同席してもらい、できる限り本人についてのヒアリングを行っている。
これをもとに、受け入れ予定先を選定し、受け入れ予定先との面談を行い、極力現場とのミスマッチを防ぐことに努めている。
受け入れ先の現場が決定したら、実際に2~3週間の「現場実習」に入る。
現場では “におい”への耐性、スピード感、指示の把握度合等適性を判断する。この実習の状況がこの後の配属部署の決定となるため、慎重な判断が要求される。そのため随時本人の状況確認やサポートを行う。
また、障害者雇用の支援機関である障害者職業センターのジョブコーチ制度や納付金制度に基づく各種助成金の相談を積極的に行っている。
さらに配属に関しては、部署が分散しすぎないように配慮している。これは、ある程度障害者をグルーピングすることで仲間意識を持ちつつ、互いに切磋琢磨してもらうためである。実際このことによって、障害者同士が助けあうほか、周囲も巻き込んだチームワークが形成されている。
雇用に関しては、ハローワーク、障害者職業センター、長崎県雇用支援協会等と定期的に連絡をとりつつ、前向きに障害者雇用をすすめている。また、当プラントの障害者雇用について問題点の助言・援助を頂くなど意見交換をすることで擦り合わせを図っている。
当社は、地域貢献と共に社会的責任(“CSR”=Corporate Social Responsibility)の点においても今後も前向きに障害者雇用を推進していきたいと考えている。
4. 取り組みの事例 ~自分の居場所を発見し、活き活きと働く障害者~
現在勤務する41名の障害者のうち、聴覚障害者・知的障害者合わせて16名が重度障害者である。彼らは、各職場で最大限の能力発揮をしつつ職場貢献している。これは当工場の規模からさまざまな部署を持ち、適宜状況確認をすることで極力各個人の能力に合わせた部署への配属を考慮していることに起因する。
Nさん ・・・ 現在、品質保証課に所属の彼女は、アルコールや洗剤の補充、ランドリー室での洗濯など衛生管理に欠かせない仕事を任されている。
彼女は、重度の知的障害者であるが、見事なまでの仕事の細やかさ・責任感をもって仕事にあたっている。毎日頑張る彼女の姿勢に周囲の関心も高い。
①現場での下積み・・・
学校で就職の案内を受け実習を開始したNさんの最初の部署は現在の部署とは異なっていた。実習開始直後の数日間は、不慣れな現場作業に学校とは異なる空間、また、ラインで働く他の作業者からの厳しい言葉に涙を流したこともあったという。
それでも音を上げずに実習期間を終えたNさんは、周囲とのコミュニケーションに不安を残したまま入社した。入社後(現在5年目)さまざまな部署に配置されたが、どの部署でもなかなか本領を発揮できず、流れ作業でスピードに乗れない時には掃除ばかりを担当することになり辛かったと話す。
彼女の素晴らしいところは、自身の軸がしっかり確立されているところ。「これまで入社してからいろんな経験をした。不満もあったが、それを上司に訴えるのは筋違い。それなら私はこの会社に入社していません」と力強く語った。見事なまでの責任感である。
②出会い ・・・ そんなNさんに転機が訪れた。
現在の配属部署である品質保証課への異動である。もともと細かい気配りを得意とするNさんにとって天職となった。品質保証課といえば食の安心・安全のために細心の注意を払う部署。
Nさんの仕事の一つ、洗濯を例にとろう。手袋に小さな穴があいていれば異物混入の危険が発生する。Nさんは持ち前の注意力でどんな小さな穴も発見してしまう。また、場内の片隅に落ちていたごくごく小さな異物を発見し、異物混入阻止に一躍かったこともあった。


彼女は、現在の部署で与えられた仕事を忠実にこなし、期待以上の仕事ぶりで活躍している。一緒に働く周りとの信頼関係も厚い。「出社時間は早く、どんな仕事もやる気をもって取り組む姿勢が素晴らしい。作業の一つ一つは細かく、指示どおりにきっちり仕事をこなすことができる。持ち場の留守も彼女になら安心して任せることができる。彼女には教えられることがたくさんある」とのことだ。
現在について、彼女はこう話す。「自分の能力を活かした仕事ができて楽しい。何よりも、不安を打ち明けたり笑いあったりする仲間がいることが本当にうれしい。今が最高に楽しい!」こんなメッセージももらった。「最初は辛いこともあったけど、仕事を続けていくうちにどんどん楽しくなってきた。
自分に合う仕事に出会い、良い仲間に囲まれて、今が本当に楽しい。今仕事を頑張れるのは両親のおかげであるからもっともっと頑張ろうと思う。
今働いていない人も、きっと楽しいことに出会えるハズだから、働いてみることをオススメします」自分の居場所を発見し、活き活きと仕事をする彼女はとても輝かしい。

今が本当に楽しい!
Kさん ・・・ 現在、常温製造課 牛丼係に所属するKさんは聴覚障害がある。
彼の仕事は、包装前商品の脱水工程・検品作業である。この検品業務は、前工程の不具合をチェックする役割と、後工程の作業をスムーズに、かつ不良商品を出さないために集中力と正確さが要求されるポジションである。

水が付着したままだと包装工程で製品がずれたりして不良発生の可能性がある

包装工程で不良発生を防ぐため製品をきれいに並べているところ
①手探りと冒険 ・・・ Kさんは、障害者職業センターからの情報提供を受けて入社した。入社後、とにかく初めてのことばかりで毎日が手探り状態のため周囲の人にありとあらゆることを質問したという。しかし、これには少し抵抗があったそうだ。
以前、印刷会社で仕事をしていた時、労働条件がきついうえにギスギスした人間関係で周囲と話をすること自体困難で、仕事にも身が入らなかったそうだ。
心気一転、新しいスタートを切ったKさんは、臆することなく質問をし続けた。質問に対してどんどん答えが返ってくる。そのたびに質問をして、また教わる・・・Kさんはもっともっと知りたいと強く思う。
探究心の旺盛なKさんにとって、要求を満たしてくれる頼もしい上司や仲間の存在が彼を支え、彼の成長に深く結びついた。
Kさんはこう話す。「最初はたくさんの機械が並ぶ現場での作業がとても不安だった。しかし、仕事仲間とのコミュニケーションで不安も解消され、今では辛いときでも仲間と支えあうから頑張ることができる。また、何でも相談できる上司たちの存在が頼もしい。だから自分なりにどうすれば解決できるかをいろいろと考えていくようになった」Kさんにとって、人の魅力がひとつの原動力となっていることがよくわかった。
②未来 ・・・ Kさんはとても前向きで、上昇志向が強い。
今Kさんは自分の担当のスペシャリストとなるべく奮闘している。何か異常を発見すれば、すぐに担当工程に連絡できるよう常に周囲に気を配り、人並み以上の集中力で目を見張らせている。また、その原因を自らも試行錯誤し、解決策について上司や周りに相談までもするという。
彼は言う。「周りの仲間とのコミュニケーションは楽しいばかりでなく、情報伝達をスムーズにするためにも大事だと思う。普段のコミュニケーションがいざという時のトラブルを最小限に抑えることができる。過去の経験からものすごく実感できることだ。ここの人たちに出会えて、今一緒に仕事できていることがありがたい。仕事上のチームワークの素晴らしさを体感できている」
また、将来の夢についても語ってくれた。
「当面の目標は、今の仕事を頑張ることで担当業務を知り尽くすこと。ただ、これから部署内のあらゆる業務を経験して勉強し、いずれは部署全体のスペシャリストになりたい」
つい先日、彼は勤務時間を変更し、正式にパートナー社員となった。この件も、自ら働く意欲を上司に相談した上で実現したことだった。より一層の責任を感じ、やる気が増しているとのことだ。
宣言どおり、Kさんがこの部署を背負って立つ日もそう遠くない未来かもしれない。
~障害者雇用率の高い現場の一つである、常温製造課の上長に話しを伺った~
Q1:現場作業指導・接し方などで気をつけていることはありますか。
A: 我々は、食品を扱う製造現場ですので障害者と健常者を分け隔てなく、一人の作業者として接しますので特別に注視することはありません。
また、本人達も、“ハンディがあるから”という風に周囲の作業者から見られたくない気持ちが強いのでなおさら、意識せずに接するようにしています。
但し、指導内容が本人達にきちんと理解できるように伝達しないと意味がありませんので障害の種別や度合いによっても異なりますが、ホワイトボードや手話などを通じて此方が伝えたい内容がよく理解した上で行動してもらえるように創意工夫しながら個々に対応している場合はあります。
Q2:障害者の可能性や力不足も含めて障害者雇用について感じることを教えてください。
A: 障害者雇用については、障害者本人が前向きに取り組む姿勢と、周りの人達の理解あるサポートが上手く合致さえすれば、これからも徐々に雇用は広がっていくと考えています。と云うのは、私達の職場でも障害と云うハンディがあっても、教育訓練を経て今では健常者より作業能力が上回っている人もいます。もちろんこのケースは非常に理想的であり珍しいことです。
その反面、作業ミスが発生した時に障害者を低い目線で見下した発言をする周りの人や、また、障害者本人も他人嫌疑で受け止める人もいたりと、難しい局面にも遭遇することも事実です。そうした場合には多少の時間を要したとしても、周囲の人達を巻き込んでお互いがよく話し合う場を設けて対処するように努めています。
本人の意欲醸成と周囲サポート、両者のつりあいを仕向けていくことでより理想的な現場の創造も実現不可能ではないと考えます。
Q3:障害者をサポートしている取り組み及び、今後行うべき対応などについてお話ください。
A: 朝礼では手話を通じて伝達したり、個々に指示する時はホワイトボードを活用して伝達する方法を用いています。また、生産ライン上ではルーチン業務的な指示内容はパトランプを設置して視覚で捉えることによって口頭指示がなくても自らが生産状況を理解して行動できるように工夫しています。
さらに現在は聴覚障害者の妊婦が2名在籍しており、周りの人達の協力も得ながら仕事の軽減も配慮して頑張ってもらっています。ただ、実際にあった話ですが本人の不注意により、片足を物に引っ掛けて転倒する時があり、幸い大事に至らずに済んだのですが、いざと言う時のコミュニケーション不足が露呈した事もありました。
このような背景も踏まえた上で職場運営では障害者とか、健常者とか区別することなく、“常に他人を思いやる心で接すること”を念頭に入れて推進している次第です。やはり、コミュニケーションによっていかに信頼関係を築くかという点が全ての土台になっているようです。
執筆者 : 日本ハム株式会社 デリ商品事業部 諫早プラント
総務課 課長代行 奥村 康一
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