事業所名

福祉工場「松岡」

所在地

大分県大分市

事業内容

リサイクル、清掃、樹脂製品加工他

従業員数

20名

うち障害者数

14名

 

（内訳）

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	14	リサイクル（8）、樹脂加工（2）、トイレ清掃（2）、施設メンテナンス（2）
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 福祉工場設立経緯と障害者雇用への思い入れ
3. 職能開発・職場改善等、雇用の促進・安定のための具体的取り組み
4. 今後の課題・展望

事業所外観（正面玄関）

1. 事業所の概要

（1）事業の内容

①INの仕事

○樹脂加工：パネルソー（樹脂板の切断）、ペティワーク（曲げ加工の溝入れ）、ヒーター（曲げ加工）、ドリセッター（穴あけ）、糸鋸、パイプソー（パイプの切断）

○プラスチック：ゲートカット

②OUTの仕事

○リサイクルプラザ：大分市の福宗清掃センター工場へ出向して、ビン・缶・ペットボトル等の手選別業務（＊1）

○鶴崎スポーツパーク清掃：（大分市の委託事業）トイレ清掃、ゴミ回収清掃、草刈り

○丹生温泉メンテナンス：メンテナンス、管理

○民間アパートのメンテナンス：大分市内の民間アパートの清掃業務

○草刈り・草取り：期間限定（8月～10月）、ひばりヶ丘、のぞみが丘、松岡パークプレイス、九石ドーム（含む、観客イスの清拭）

（2）関連業種

○授産施設「授産所おおいた」、○自立生活促進事業「しいのみ」：宿泊訓練施設、○丹生温泉「和みの湯」

鶴崎スポーツパーク清掃

丹生温泉メンテナンス

樹脂加工（パネルソーを使っての樹脂板の切断）

カッターのグリップ部の整形作業

2. 福祉工場設立経緯と障害者雇用への思い入れ

福祉工場「松岡」の設立母体は、知的障害者対象の社会福祉法人「大分福祉会」である。

昭和58年、当時知的障害児は養護学校を卒業した後、就職する職場がほとんどなく、重度の知的障害者でも働くことのできる施設の設立を願う人々が集まって、「推進協議会」が結成された。それから2年、昭和60年1月に厚生省より法人認可を受け、同年4月に知的障害者の福祉就労の場として通所授産施設「授産所おおいた」は開設された。開設当時の仕事内容は、「お米作りや紙箱折り等」の作業が中心であった。国際障害者年を契機に障害者の処遇が見直され、「完全参加と平等」が強く叫ばれ、「授産所おおいた」もこれに向けて運営努力をしてきたが、授産施設の目的である一般企業への就労はなかなか厳しいものがあり、10周年を契機として福祉工場の設立準備にとりかかった。その後、平成9年4月に一般企業に就労することが困難な知的障害者の就労の場として福祉工場「松岡」を開所した。さらに平成17年4月からは、大分市の市丹生温泉施設「和みの湯」の指定管理者としての委託を受けるなど、知的障害者の福祉の充実や就労支援を目指した先駆的かつ積極的な取り組みで地域福祉の充実に貢献している。

3. 職能開発・職場改善等、雇用の促進・安定のための具体的取り組み

（1）職種の多さが我が社の自慢、「できることを見つける」

福祉工場は、自主通勤が義務づけられている。自宅から一人で通勤できなければ雇用できないのである。交通機関のアクセスに課題をもつ福祉工場松岡は、定員20名のところを14名の従業員しかいない。現在、施設長2年目と言う松井克英氏が、施設長として赴任して最初に感じたことは、「仕事の少なさにびっくりした」とのことであった。「椎茸と樹脂しかしてなかった。聞くところによると平成9年～12年頃までは、近接の企業からかなりの仕事が受注されていたらしいが、12年以降赴任した16年頃はうんと下火になっていた。そこで考えた対策の第一が、「特定の仕事に人を充てるのではなく、従業員の職能によって、できることを見つけてその人にあった仕事をマッチングさせることで生産性・収益性をアップしよう（仕事の種類を増やそう）」というものである。「純粋で仕事にも一生懸命に取り組む彼らの特性を生かすには、仕事のフィールドを広げていくことが必要である」と考え、当時の職員総出で開拓に専念した時期があった。今の俸給は、7万円が1名、6.8万円が1名、5万円が多数、4万円が3人までに成長した。

（2）InとOutの仕事を組み合わせることで、仕事に変化をつける

対策の第二番目に掲げたのが、「箱物の中だけで作業していても給料は上がらない」ということであり、「持久力をつけるS級訓練をしつつ、難度の高い外部の仕事を加えることを考えた」、「内と外の仕事をうまくグループ編成することで、仕事に倦怠感が無くなり、集中した仕事が出来るのではないか」という知的障害者の特性を考慮した逆転の発想である。午前中はメンテナンスや草取りなどの外の仕事、午後は樹脂加工等の仕事のグループ、リサイクルプラザのグループとの組み合わせが彼らの潜在能力を引き出す効果につながっている。ただ、従業員が帰社した時、間をおかず、すぐに次の仕事の段取りが準備されていることが肝心なことで、ロスタイムがありすぎると倦怠感を生じることがあるので気を付ける必要がある。

（3）心のこもった仕事をしよう。Q-S-C+HのHはハートのH

知的障害者の仕事だからこそ、他社に優れたものでなければならないと考え、そのためには、社員教育の徹底が重要だとしている。「Quality（品質）-service（サービス）-Cleanness（清潔）+Heart（こころ）をどんな場合でも評価の基準として考えさせる習慣をつけることで、世間様の信頼を得る」、また「Plan－Do－Check－Actionの必要性も教える」、「活力配信“自分のいい所を、外に出せ”」と言う点を何度も強調している。

（4）リサイクルプラザ；骨グラフで綿密な評価と改善点の検討

5団体の指導マニュアルの必要を感じて、本社のリードの下に作成した。他社との共同事業のような場合は、危機管理をはじめ管理体制の共通認識が必要十分条件である。かつ、図-1のような、ほねグラフを通して、従業員個々の手選別業務における問題点と改善点をCheckしている点は、公的事業を受注する場合には絶対のことであり、かつ、この評価をもってS級訓練（福祉工場「松岡」が独自に開発した持久力・集中力をつける訓練とのこと）と組み合わせて活用している点などに本社の企業モラルの高さを感じた。

鶴崎スポーツパークのメンテで何千個というイスを手ふきでする作業があるが、常に感謝を受けるほど清潔で、心のこもった仕事が出来るのも、かくのごとき日常的な取り組みの成果であることを報告したい。

図-1

4. 今後の課題・展望

（1）従業員が仕事を通じて社会貢献できる、やりがいのある仕事が続けられること。

（2）受けの仕事が多いが、自家事業を実現させたい。

（3）温泉の回りにハウスを建て、イチゴ栽培をして楽しんでもらうなど、将来的には地域の方々に喜んでもらえるような福祉工場にしたい。

執筆者  ：  別府大学短期大学部初等教育科  教授    佐藤  賢之助