障害者の従事する業務の見直しを行い、知的障害者の職域を拡大
- 事業所名
- 北海道コカ・コーラボトリング株式会社
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- 北海道内における飲料水(コカ・コーラ)の製造・販売
- 従業員数
- 638名
- うち障害者数
- 17名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 5 営業事務 内部障害 9 一般事務 知的障害 3 清掃・ゴミ分別 精神障害 0 - 目次


- ホームページアドレス
- http://www.hokkaido.ccbc.co.jp/
1. 事業所の概要1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
(1)沿 革
昭和38年1月に北海道飲料株式会社として設立、同年9月に現在の商号に社名を変更し、今年で45周年をむかえている。
アメリカに本社を置くザ コカ・コーラカンパニーの日本法人日本コカ・コーラ株式会社と契約を結び、北海道の市場に適したフレーバーパッケージを選択して原液を購入し、道内で商品の製造と販売を行っている。日本コカ・コーラは製造工程などに品質基準を設け、それに合致した商品を送り出す責任を負っている。
(2)道産子企業として地域貢献を標榜
CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)にも力を入れている。経営理念に「私たちは21世紀の創発的な社会に貢献する」と謳い、経営指針の1つに「生活者やパートナーとの共存共栄を図るとともに地域社会に貢献します」という項目を掲げている。また「変化への挑戦~北の大地とともに~」と題されたグループの中期経営計画には「道産子企業として地域社会に信頼され、ともに発展していくことを目指します」と、企業活動の方向性を示している。
社会貢献活動の1つとして「お役に立てる自動販売機」の普及を進めている。「お役に立てる自動販売機」とは防災・防犯情報や地域情報などを、自動販売機内に付設された電光掲示板を通じて役立つ情報を配信している。またノンフロン型や省エネ型の自動販売機の普及にも熱心に取り組んでいる。これらの取り組みは、自動販売機を社会的インフラの1つと捉え、安全・安心のネットワークを広げ、地域社会に貢献したいという思いがある。その他、環境保護活動や福祉活動、青少年育成などへの支援にも力を入れて取り組んでいる。
(3)会社概要
事業所は、札幌市清田区に本社および工場を構え、道内各地に支店・営業所を28拠点設けて拠点網を形成している。また、数年前から商品の輸送、自動販売機の設置や修理、飲料水の製造など業務ごとに分社化を進め、現在グループ企業7社が関連事業を営んでいる。
従業員数は正社員575名、シニア社員10名、準社員6名、パートナー社員47名、計638名(平成20年8月現在)で、そのおよそ8割が営業職に従事している。
2. 障害者雇用の状況
(1)障害者雇用状況
17名の障害者が働いている。(平成20年8月現在)。
その障害の種類は、上下肢障害、内部障害、知的障害で、そのうち6名は重度障害者である。
障害者雇用率は3.1パーセントという高さに上るが、障害者雇用について、特別なことをしているわけではない。
グループ会社を含め、法定雇用率(1.8パーセント)を下回ることがないように注意を払い、法定雇用率を下回った場合には速やかに対応して障害者雇用に取り組むという当たり前のことをしているだけである。
また、法定雇用率を達成しているからといって、それに甘んじることなく、機会があれば今後も障害者雇用を進める意向を持っている。したがって、大上段に構えて障害者雇用を進めるのではなく、企業の義務として法定雇用率の達成・維持に地道に取り組んできた結果と考えている。
(2)採用方針
障害者を雇用する場合、まずハローワークに求人申し込みをするとともに、北海道障害者職業センターなどにも適した人材が在籍しているどうか相談している。
障害者を採用する際には、面接などを通して仕事に対する意欲と適性、健康面に留意し、総合的に判断している。
(3)勤続年数
障害のある従業員のうち一番長い人は、上下肢障害者の22年であり、全体の定着率は高い。
(4)知的障害者雇用
現在、3人の知的障害者が清掃業務に従事している。平成18年6月、はじめて2人の知的障害者を雇用し、翌年6月にも知的障害者を1人雇用した。これまでは上肢下肢障害者か内部障害者で、そのほとんどは事務職に就いていた。
知的障害者を雇用するようになった背景には、業務・機能ごとに分社化を進め、営業事務系従業員がグループ会社に移ったことにより、単独での障害者雇用率が法定雇用率を下回ったことにある。この事態を打開するため、障害者雇用の拡大と、新たな職域を開発するために、知的障害者も含めた雇用が必要であると判断した。
障害者が従事する仕事を従来通りのままで良いと考えていたのでは、職域は限定されてしまい、現状以上の雇用拡大は難しくなると同時に法定雇用率の達成・維持も困難となる。知的障害者の雇用に取り組むことによって、障害者の活躍の場を広げたいと考えた。
3. 知的障害者への対応
(1)業務内容
社員食堂や建物の清掃作業および、空容器をはじめとしたゴミの分別作業等を行っている。これらもはじめから順調に業務を憶えてもらえたわけではなく、少しずつ作業内容を追加してきた。今後も知的障害者の雇用機会を創出する意味で、業務領域を拡大していきたいと考えている。


(2)地域の関係先と連携
知的障害者の雇用は、従業員によるボランティア活動を通じ、社会福祉法人北ひろしま福祉会との交流の中で、就労意欲が高い知的障害者がいるという情報と、自立支援に関する法律が改正されるのを知ったことがきっかけとなった。
同法人は、札幌市に隣接する北海道北広島市で知的障害者を対象とする更生施設や通勤寮、授産施設、グループホームなど運営し、就労支援にも取り組んでいる。
4. 作業風景
(1)教育訓練
2年前に初めて採用した知的障害者が仕事を覚えるにあたり、北海道障害者職業センターから派遣されたジョブコーチの支援が大きなささえになった。
知的障害者の指導に関しては全くの素人であり、どのような指導をしたら良いかわからないため、試行期間中に、ジョブコーチに清掃用モップの絞り方の指導などから、様々な教育訓練を実施。その結果、少し時間を要したが、問題なく清掃作業を行えるようになった。
一人ひとりの障害の特長が異なるため、仕事を覚えるスピードに差が出てしまう中、障害者間の調和・チームワークを形成するのが特に難しかった。
人によっては手先があまり器用でなかったり、不得手な作業があったりと、全員が同じ期間で一律に仕事を覚えることは難しかったが、ジョブコーチが個々人の特性に応じ、手取り足取り繰り返し教えることで、全員が仕事を行えるようになった。
また、北ひろしま福祉会などの関係機関と緊密に連携したことが、定着を図る上で大きな意味を持った。必要がある都度、北ひろしま福祉会の職員の方々に来社してもらい、様々なフォローをお願いした。
知的障害者の場合、コミュニケーションのとり方も注意が必要で、専門家としてのフォローは大変助けになった。ジョブコーチと北広島福祉会のサポートのおかげで、これまで大きな支障もなく業務にあたっている。一般の従業員たちも彼らに気軽に話しかけ、自分たちの同僚として接している。
(2)労働環境の整備
障害者雇用の際は、試行(トライアル)雇用奨励金制度と、特定求職者雇用開発助成金(特開金)を活用しており、経費の面で大変助かっている。
これまで、地道に障害者の雇用に取り組んできたが、助成金を活用して立派な設備を備えることは行っていない。下肢障害者である従業員は松葉杖をつきながら階段を上り下りしている。それは障害者自身の「自分でできることはしたい」という意志を尊重したいと考えているためである。もちろん必要な工夫や、相応の配慮は行っている。また、今後は、必要性が高まれば助成金を活用して設備の整備を行いたい。
(3)積極的に障害者の工場見学・職場見学を受け入れ
障害のある求職者が就労を通し社会的な自立を図る上で、企業を訪ね、人々が実際に働く様子を見学することは大きな意味を持っている。しかし、一般の人々と比べ、障害者の場合はそうした機会に必ずしも恵まれていない。
北海道障害者職業センターからの依頼で、障害者の工場見学・職場見学を行っている。これは障害を持つ求職者にとって、会社で働くには何が必要なのかを知る上でとても有益であるということから始まったものである。
障害のある人が障害者が就労している実際の職場を見学することで、何かを得てくれれば私たちとしても大変うれしく思う。また、見学時間内に従業員との質疑時間を設けており、働いている障害者にとっても、自分の職場を見学してもらうことや、仕事に対する質問を受ける事で、大きな励みになっている。
5. 今後の課題と要望
知的障害者をどのように指導していくかについては素人であり、十分なノウハウを持っているわけではないため、採用した後、どのようにして定着を図るかが重要になる。そうした観点から多くの実績を持つハローワークにフォローをお願いしたい。また、それまでは知的障害者に接する機会がなかった従業員もおり、どのようにコミュニケーションをとっていいのかわからないことも少なくない。障害者に対するフォローも重要であるが、一般の従業員たちに対してそうした観点から何らかのレクチャーをしていただくような機会が必要と考える。
その他、知的障害者が職場に定着し、継続して仕事を続けるには私生活への支援も大切であると考えている。社内では様々なサポートができるが、社外における生活や行動への支援までは、会社では対応できない。安定した私生活を送れれば、職場でも意欲を持って仕事に取り組むことができることから、公的機関に、知的障害者に対する私生活面での支援を拡充していただきたいと考える。
職場と私生活の両面から支援できれば、彼らの社会的な自立もより確かなものとなるであろう。
執筆者 : 北海道コカ・コーラボトリング株式会社
総務人事部 人事課長 亀山 宗永
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。