会社設立時の地域支援機関との連携及び新規職域の開発
- 事業所名
- 株式会社西武パレット
- 所在地
- 埼玉県所沢市
- 事業内容
- 西武鉄道の事業所における清掃
- 従業員数
- 20名
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 11 清掃業務 精神障害 0 - 目次

1. 特例子会社設置の背景
当社は、平成19年6月に設立し、同年12月に認定を受けた西武鉄道株式会社を親会社とする特例子会社である。特例子会社設立の背景は、①各駅でのバリアフリー対策が進められる中で“人にやさしい鉄道”を目指し「環境問題」や「地域との共生」に積極的に取り組んでいること、②新生西武グループとして、2006年に制定したグループビジョンで<スローガン>に「でかける人を、ほほえむ人へ」、また<グループ理念>として「私たち西武グループは地域・社会の発展、環境の保全に貢献し、安全で快適なサービスを提供します。また、お客さまの新たなる感動の創造に誇りと責任を持って挑戦します。」を掲げていること。③親会社の主事業である鉄道業は危険箇所が多い職場であること。安全配慮義務の観点から、現在除外率(40%)が設定されていて、本社の事務部門に特化して採用活動を行ってきたこと。しかし、応募者の減少、職域容量などの理由により、一定以上の雇用拡大は難しい状況にあったこと。が、設立背景の要因としてあった。
2. 事業及び取り組みの経緯
平成19年6月に会社設立した後、ハローワークを始めとする地域の就労支援機関の協力を得て障害者従業員の採用を行い、同年10月から営業を開始した。採用後も支援機関からの継続支援を受けながら、12月に特例子会社認定を受けた。事業所は、西武鉄道株式会社の車両工場跡地内に立地している。当初、障害者7名からスタートして、現在(平成20年11月)、11名に雇用拡大し、順調に障害者雇用を進めている。親会社からは清掃業務の受託請負として、西武鉄道所沢駅管区内の各駅を順次移動しながら、チームを組んで駅及び乗務所における従業員スペース(寝室・ロッカー室・トイレ・シャワールーム等)の清掃を行っている。



3. 取り組み内容
(1)地域支援機関との連携
「ハローワーク所沢」の全体を通じた支援をもとに、設立段階では、埼玉県の「障害者雇用サポートセンター」及び市町村で設置されている「所沢就労支援センター」から設立に向けての各種助言や他企業見学やセミナー受講などの紹介を受けた。
また、採用段階では、「ハローワーク所沢」「所沢就労支援センター」から求人票提出から採用決定に至る迄の支援を受け、トライアル雇用スタート時から、「埼玉障害者職業センター」も入り、スタッフ指導、雇用管理に関する助言などの支援を受けた。
<支援に携わった地域機関と支援内容>
設立 段階 |
事業内容、社内体制、従事作業、採用形態、社員研修 | サポートセンター 就労支援センター |
採用 段階 |
求人票、職業紹介、面接、実習、採用決定 | ハローワーク所沢 就労支援センター |
導入 段階 |
トライアル雇用、スタッフ指導(作業指導、職場生活指導)、雇用管理助言、指導者育成 | ハローワーク所沢 就労支援センター 職業センター |
適応 段階 |
課題の確認と対処(スタッフ指導、雇用管理助言)、指導者育成 | サポートセンター 就労支援センター 職業センター |
<障害者社員(=スタッフ)の採用の流れ>

<事業開始迄の流れ>

(2)新規職域の開発
・会社設立前のプランニング段階時に他企業見学をする中で、知的障害者の雇用及び清掃事業に着眼し検討を進めることとした。当初、西武鉄道の研修センター内清掃を検討したが、既に既存業者による清掃が行われていたために新規に清掃場所を創出する必要があった。
・西武鉄道各駅の駅・乗務所での従業員使用スペースにおいては、従前より駅係員自らが清掃を行っていた。これを当社が担うことにより、心地よい環境を提供し、駅係員がグループスローガン「でかける人をほほえむ人へ」のサービス提供に徹して効率化を高めてもらうことを趣旨としている。以上により、当社のスタッフが毎日順次駅を電車で移動しながら、清掃をして行くことの業務委託を決定した。
<業務内容>
・指導者(リーダー)1名とスタッフ3~4名が3班に分かれて、駅・乗務所の従業員スペース(寝室・ロッカー室・会議室・シャワールーム・トイレ・洗面所・屋内通路等)を清掃受託箇所とした。
・勤務は週5日勤務(土・日休日)とし、勤務時間は午前9時から午後4時30分(実働6.5時間、休憩1時間)の7.5時間とした。
・西武鉄道の子会社として、安全・安心への配慮を第一とし、「電車の運行やお客様の妨げとなる行動をしない。」「駅の構内(ホーム・通路・事務室)、車内等での秩序を持つこと」を指導、徹底することとした。

参考資料③ーパレット一日の流れ
時 間 | 実 施 項 目 | 担当者 | 項 目 |
---|---|---|---|
8:45 | 勤務開始(リーダー以上) | 指導員以上 | 出勤押印。体温計測し健康管理状況表に記録する。関係文書類の確認。 |
リーダー ミーテング | 今日の予定・会社からの指示事項・伝達事項・業務打合せ事項 | ||
9:00 | 朝 礼 | 全 員 | |
体調・服装・食事申込確認 | 全 員 | 体温計表により班員の体調を確認し健康管理表に記録する。 | |
当日の作業確認 | 当番スタッフ | 予定表による実施内容 | |
作業上の注意事項 | 当日担当スタッフ | 曜日設定のものを発表 | |
指示事項 | マネージャー、指導員 | 怪我の防止、出来事情報の発表(テレビ・新聞等の情報でも良い) | |
唱 和 | 全 員 | 会社の「目標」、「行動指針」 「おあしすい」 | |
ラジオ体操 | 全 員 | 外で。体をほぐす。 | |
9:30 | 各事業所へ移動 | 各班ごと | 交通ルールに従って右側を一列で歩く。 |
電車での移動には安全配慮する(ホーム・車内での秩序をもつ) | |||
作業開始 | 各班ごと | 指導員の指示に従い、各人が担当箇所の清掃をマニュアルに沿って行う | |
11:00 | 休憩(小休憩) | 各班ごと | 10分間 |
12:00 | 休憩(昼食) | 各班ごと | 各社員食堂 |
12:40 | 午後の作業開始 | 各班ごと | |
14:00 | 休憩(小休憩) | 各班ごと | 10分間 |
15:30 | 作業終了 パレットセンターへ移動 |
各班ごと | |
電車での移動には安全配慮する(ホーム・車内での秩序をもつ) | |||
交通ルールに従って右側を一列で歩く。 | |||
16:00 | パレットセンター到着 | 各班ごと | |
作業および訓練 | スタッフ全員 | パレット事務所内外清掃。未経験者・未熟者は作業マニュアルによる訓練 | |
その日の反省 | スタッフ全員 | はっと・ひゃっとしたことは?うまく出来たこと。その他の出来事はなかったか? | |
明日の確認 | スタッフ全員 | 予定表により確認 | |
翌日作業の確認と指示 | 指導員 | ||
16:25 | 終 礼 | 全 員 | はっと・ひゃっとしたことは?うまく出来たこと。その他の出来事はなかったか? |
16:30 | 退勤(スタッフ) | スタッフ全員 | |
16:45 | リーダー ミーテング | 指導員以上 | その日の反省・明日の指導方針・不安全な行動およびヒャットとしたことは無かったか?等 |
17:00 | 退 勤 | 指導員全員 | 今日の出来事。特記事項。共有項目。 |
業務マニュアル/清掃業務





4. 取り組みによる効果
・採用段階で就労支援機関の協力を得たことにより、知的障害者スタッフの障害特性や仕事を遂行する上での対応方法などの理解がし易かったこと。更に、障害者スタッフ本人又は本人の親とのトラブルがあった場合にも助言・提言を得ることができた。
・受託事業の仕事場所が駅事務所内ということもあり、日々、親会社の駅係員及び乗務員と接している。挨拶を交わしたり、親会社の社員から励ましの声があったり、障害者の仕事へのひたむきな姿を見て、障害者への理解と親交を図ることができるなど周囲からの応援を得ることができるようになった。



5. 今後の展望
・障害者従業員の長期的な就労を目指して、他のスタッフとの協調の取り方等を含む教育訓練に力を入れるとともに、家族や支援機関とのコミュニケーションを図り、協力関係を維持していく。
・事業面については、現在、清掃している駅数を更に増加(現在は7駅)させていき、更に、独身寮での清掃など清掃の技術的ノウハウを高めていく中で、新たな事業にも挑戦し、職域拡大を図っていく。
・障害者雇用の体験・知識を高めていく中で、西武鉄道だけではなく、西武グループ各社の障害者雇用の進展が図れるような助言・提案にも取り組んで行く。


【参考資料④-朝礼・終礼の手順】


6. 執筆者感想
親会社である西武鉄道株式会社は、地域に根ざした鉄道業を主な事業内容としている会社であり、障害者雇用における地域連携はまさに当を得た対応をされたと考える。また、出向派遣で業務に就いた方々も熱心に障害者雇用を考えていて、新たな局面に遭遇しても、周りの支援機関の協力を得ながら個別に真摯に対応している。
事業内容については、複数の駅を電車で移動しながら、駅内を清掃するというものであり、よく言われる“囲った特例子会社”ではなく、駅係員や乗務員は勿論、電車の乗客にもその姿を見られているという、まさにノーマライゼーションに則った障害者雇用会社といえる。そのことは、西武グループ従業員の方々からの励ましや地域の支援者からも支持されていることに現れている。今後の一層の発展を期待したい。
執筆者 : 埼玉県障害者雇用サポートセンター 小野 博也
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