事業所名

株式会社ロイヤルクリーナース

所在地

千葉県船橋市

事業内容

サービス業(洗濯業)

従業員数

22名

うち障害者数

19名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	仕上げ、アイロンプレス
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	18	入荷品の前処理、ワッシャー投入、ランナー、ハンガーアップ、仕上げ、アイロンプレス、アッセンブリー、襟揃え、折りタタミ、立体包装、責任者補
精神障害	0

目次

1. 障害者雇用の状況、経緯、背景
2. 障害者の従事業務、職場配置（障害者の従事している具体的な作業内容や配置）
3. 取り組みの内容（取り組みの具体的な内容、活用した制度や助成金）
4. 取り組みの効果（取り組みを実施したことによる効果、障害者雇用のメリット、障害者自身のコメント）
5. 最後に

事業所外観

1． 障害者雇用の状況、経緯、背景

（1）障害者雇用の状況

障害者数 19人（重度障害者 14人） 障害者雇用率 150.00%

内訳 （ ）内は重度障害者

平成20年6月1日現在

（2）障害者雇用に取り組むこととなった経過や背景

昭和28年創業以来事業は順調に伸び東北地区の中卒者の採用で必要人員の充足を行っていた。全国的な人手不足で採用が困難になった昭和57年に船橋中学校の先生から障害を有する生徒の紹介があり採用したが、障害者のまじめで一生懸命な姿勢は健常者からの評判も良く、関係各所からの依頼を受け入れて、徐々に増加し平成5年には5人になった。

これまでの障害者雇用の経験から、設備及びレイアウトを改善すれば殆どの作業を障害者で生産性を上げることができるという自信がつき、さらに障害者の雇用拡大を図るために、平成6年に「重度障害者多数雇用事業所施設設置等1種」（対象障害者16人）の認定をうけて平成7年完成し、その後も助成金の活用や、種々の取り組みにより多数雇用の定着を果してきた。

2． 障害者の従事業務、職場配置（障害者の従事している具体的な作業内容や配置）

入荷品の前処理（シミ抜き、工程区分け）1人、ワッシャー投入1人、ランナー1人、ハンガーアップ1人、仕上げ（ズボンプレス・万能プレス・平台）3人、アイロンプレス1人、アッセンブリー1人、襟揃え1人、折りタタミ1人、立体包装1人であり、殆ど全作業に亘っている。その他責任者補佐（障害者）2人を配置している。

工程区分け作業

ワッシャー投入作業

仕上げ作業
（ワイシャツプレス）

仕上り品と伝票合わせ作業
（アッセンブリー）

3． 取り組みの内容（取り組みの具体的な内容、活用した制度や助成金）

・平成6年10月1日「職場定着推進チーム」（社長・人事課長・障害者職業生活相談員・現場指導員・障害者代表）を設置し、障害者の職場適応力の向上と定着を図っている。特に、障害者職業生活相談員は、日常の生活・悩み等の相談にキメ細かく個々に対応して、必要に応じて家族、職場関係者と連絡を取り問題解決に当っている。

・平成9年から16年まで1人、平成10年から16年まで1人「特別雇用管理第3種・業務遂行援助者の配置」の助成金を活用して援助者を配置し、障害者の業務遂行を通じた雇用管理のために必要な援助及び指導を行った。

・平成16年から18年まで「重度障害者介助等・業務遂行援助者の配置」の助成金を活用して援助者1人を配置し、対象障害者の援助を行った。

・平成6年「重度障害者多数雇用事業所施設設置等1種」（対象障害者16人）の助成金の認定を受けて、設備及びレイアウト等の改善による障害者の働きやすい環境の整備及びキメ細かい取り組みの実施により、障害者の職務適応力の向上を図り、多数の障害者の雇用拡大を行った。

・平成19年「重度障害者多数雇用事業所施設設置等2種」千葉県雇用開発協会の職員による設備更新のアドバイスにより、（対象障害者16人）の助成金の認定を受けて、設備の更新を行い、設備老朽化及び障害者の高齢化による生産性の低下及び品質の不安定を防止し、障害者の職務の確保と経営の安定化を図った。

①障害者の募集及び採用

・募集は、平成5年までは公共職業安定所（ハローワーク）・船橋中学校・千葉障害者職業センター・市立養護学校・近所の親等であったが、それ以降は公共職業安定所（ハローワーク）を通じて募集している。

・採用に当っては、面接と現場実習を2週間、2回実施して、やる気・能力を確かめて職場適応力を評価して採用を決定している。

②障害者の配置・定着・職場適応

・新採用者は1番やり易い仕事（襟揃え・立体包装）に配置し、先輩（障害者）がマンツーマンで、やって見せ、教えて、やらせ、褒めて、怒鳴ったりして教えていたが、なかなか時間が掛かるので、責任者補佐（障害者）を任命し、繰り返し、辛抱強く訓練して職場適応と定着を図っている。

・難しい仕事（前処理・アッセンブリー）は能力のある者を選抜して、配置し、責任者（健常者）が実務を通じてOJTで根気良く訓練し、職場適応を図っている。

・責任者補佐（障害者）は、能力のある者を選抜して、任命し、新採用者を教育する仕事を根気良くやらせて、先生・生徒の信頼関係と双方の能力向上を認めてやることにより自信を持たせて定着と職場適応を図っている。

③障害者の能力開発・教育訓練

・教育訓練については、前項で述べたごとく先生を決めてマンツーマンでOJTを主体として辛抱強く障害者の教育訓練を行うことで職場適応力の向上を図っている。

・能力開発については、障害者のローテーションを計画的に行い、新しい仕事につかせて先生を決めて、実践で辛抱強く教育訓練を体験させ、能力向上の成果を先生・生徒と共に認め合うことにより双方の資質の向上につながっている。

障害者の教育訓練の状景

④職務の再開発・組織の再編

・組織は、必要の都度再編しているが、現在の工場部門の組織は、以下の通りである。

・職務再開発は、営業及び作業改善提案制度を設けて、健常者・障害者が協力して作業のし易さを改善し、障害者の職場適応の場を広げながら職務の再開発を図っている。例えば、アッセンブリー作業でのミス防止のためのタグの連番数値表示、折り目無しの判断のためのサクランボの絵がついたタグの開発等により、障害者の職務再開発を行なった。

タグの連番数値表示及びサクランボタグの事例

⑤労働時間等の労働条件

労働時間は、午前8時から午後5時までで、休憩時間1時間、1日実働時間8時間、週40時間である。

⑥定年・継続雇用・退職

定年は、60歳で、定年後は希望者で一定の基準を満たす者は「改正高年齢者の雇用の安定等に関する法律」での規程年齢まで再雇用することにしている。現在の障害者の最高年齢は、48歳であり、現在まで定年該当者はいなかった。

⑦健康管理・安全衛生

・健康診断は、年1回受けているが、個々の病状が異なるので、2～3ヶ月に1回、個々に専門の医師による診察、指導を受けている。

・衛生管理は、保健所から配布された「クリーニング所の自主管理点検表」に基づいて管理し、定期的に保健所へ報告をしている。

・安全管理は、関係行政機関・団体等の指導を受けたり、作業改善提案等により不安全個所の安全化を図っている。

・消防訓練は、定期的に全員で行っている。

⑧就業環境の整備

・全般の就業環境については、「クリーニング所の自主管理点検表」に基づいて整備を行っている。

・工場内は、床の清潔を保つために上履きに履き替えることにしている。

クリーニング所の自主管理点検表

4． 取り組みの効果（取り組みを実施したことによる効果、障害者雇用のメリット、障害者自身のコメント）

・前述の各種助成金を活用して設備、レイアウトの改善等により、障害者の働き易い職場環境を整備し、キメ細かい職場適応の取り組みにより、障害者の多数雇用を定着することができた。

・障害者を適材適所に配置し、個々の特性を捉えて、その人格を尊重し、職場適応のための根気よい教育訓練により企業の戦力にすることができて、更なる雇用拡大への自信を得た。

・障害者のひたむきな態度は、接触している健常者にとっても、良き範となり、相互に前向きな考え方、行動が習慣となってきた。

・障害者が自ら責任を持って働いて、自分の居場所を持てるようになった様子が伺える。

5． 最後に

（1）今後の課題・展望

・今後は、健常者6人が従事しているインターネット店の受注品が増加しているので、この前処理作業についても、ICタグ読み取り等の教育訓練の取り組みにより、障害者の職務再開発の可能性を探って行きたい。

・今後の課題として、障害者の高齢化による機能低下への対応が必要となる。

（2）評価

・経営者・健常者・障害者が一体となって、実践で辛抱強く汗まみれになって、職場適応を図り、成長の喜びを共有し、次の発展に取り組んでいる姿は、あらゆる企業の人材育成の範ともなる。

・障害者の障害者（責任者補佐）による職場適応力向上の努力は、目線を揃えた相互信頼による相互の資質の向上となり障害者の教育訓練として最良の方法であり広く推奨したい。

・時宜を得た助成金の活用と積極的な取り組みにより、障害者の多数雇用を定着させている努力は、障害者の自立を支援する社会的責任を果す好事例として参考になることと確信している。

執筆者  ：  経営士・中小企業診断士・技術士  障害者雇用推進技術顧問  川崎  秀雄