キレイにする事で心の成長も出来る会社を目指して
1. 事業の概要
昭和43年、鯖江市のゴミ収集運搬委託者として開業した。
昭和51年には法人化の上、廃棄物の収集運搬部門・環境整備部門・ビルメンテナンス部門など多角的に営業範囲を広め、そのような中、昭和60年にリサイクル及び中間処理業務を行うシゲン開発センター株式会社を設立して、空き缶リサイクルを中心にリサイクル部門を独立させた。
公益センター株式会社は、創業時から創業者の経営理念があり、「常に感謝の精神で物事を考え行動する」の社風を受け継ぎ、現在に至っているところから、その考え方が従業員一人一人に浸透して会社の支えになっている。
この経営理念を今後も推進し、社会環境をキレイにすることで、自分自身の心もキレイになれる会社づくりを目指している。
2. 障害者雇用の経緯
リサイクル部門の独立時は、空き缶の集まる量も少なく、収集運搬のスタッフが手の空いた時に行う程度であったので、事業活動も休眠状態が数年間続いた。
平成4年頃になると、時代の流れにより資源の再生利用が全国的に叫ばれ、リサイクル事業そのものが追い風となり、地道な営業努力も実を結び、次第に量が増えてきた。
その折、今後の事業運営並びに雇用確保などを考え、平成8年に新たに出作工場（鯖江市出作町）を建設した。
この頃、ハローワーク武生及びハローワーク朝日へ求人の申し込みをおこなったところ、市の社会福祉事務所並びに特別支援学校から工場見学の要請があった。
企業としてこれらの要望に応えながら、この見学会が2～3年続いた頃に、職場体験を是非してみたいと言う生徒等が数名現れ、平成9年にトライアル雇用制度をハローワークとの連携により活用した結果、正社員として雇用したのが障害者雇用の最初であった。
以来、社会福祉事務所、特別支援学校、雇用支援協会、ハローワークとの連携により、多くの障害者を紹介して頂き、雇用してきた。
初めて受入れた時には、身の回りの世話から仕事の指導まで、担当者を一人付けて行ってきた。
一日作業をすると、衣服や靴だけでなく体も汚れてしまうので、帰りの電車の中で恥ずかしい思いをさせないために、工場内に洗濯室とシャワー室を完備して、本人自身が衣服の洗濯とシャワーを浴びて体を清潔にしたうえで帰宅するよう配慮した。
これらの福利厚生を含め、辛抱強く育てた成果が、今、大きく花咲いるところである。
3. 取り組みの内容
（1）作業工程
粗選別  | 持ち込まれるリサイクル品は、缶・ビン・ペットボトルが混在した状態のため、ペットボトルの多く入った袋は、最初に取り除く。 |
選別ライン  | 粗選別の終わった物を破袋機に入れ袋が取り除かれた状態で手選別により、空き缶、ビン、ペットボトルを分ける作業を行う。 |
選別ライン  | 洗浄作業により外洗側をきれいにして磁石（磁石選別機）でスチールを取り除き、最後にアルミ缶だけ出てくる。 |
圧縮成型（プレス機）  | 選別作業が終わった物を圧縮成型建屋に運び、更に磁石と手作業で、最終選別をしてから、プレスする。アルミとスチールが混ざらない純度を高めた製品を生産している。 |
以上の内容で仕事をしているが、この仕事で最も大切な作業が選別作業である。選別が悪いと良い製品が出来ず、出荷する単価にも反映され、売上に影響する。
この大事な選別作業を担っているのが障害者である。
（2）教育・指導について
毎朝、朝礼を実施して1日の安全作業や段取りを確認しているが、毎日出勤できない従業員が数人いるので配置の確認は大切である。
毎日出勤できない従業員については何度も話をして指導しているが、どうしても直らないので、1週間のうち2日は休むという前提で配置を計画し対応している。
大切な工程である選別作業は、仕事自体は難しいものではないが、正確さと根気が必要である。
障害者は、一旦仕事を覚えると毎日一生懸命に頑張る従業員が多く、貴重な戦力として欠かせない存在になっている。
彼らの与えられた仕事を黙々と一途にする姿は、他の従業員への良い手本として活用している。
指導上、特に重要視しているのが、笑顔で挨拶することと仕事は安全第一ということである。
笑顔で挨拶が出来る従業員になれば、会社での人間関係は良くなり、仕事の能率も上がり、お互いが気分良く働けることになるので、そのことが、永く勤続するための秘訣と考えている。
また、作業場では機械も動いているので、注意散漫になると怪我をする場合があり、怪我をすると自分自身が痛い目に合い、大変なのはもちろんであるが、他の従業員の作業負担が大きくなり迷惑を掛けることにもなり兼ねない。
チームワークを大切にして仕事をしているので、人間関係がぎくしゃくすると働く意欲が低下しがちであり、せっかく仕事を覚え、会社にも慣れてきたのに退職しなければならないような事態が起きると、本人はもとより企業としても誠に残念な結果となるので、笑顔で挨拶することと安全第一をモットーに、従業員教育として常に繰り返し伝えている。
（3）支援体制
障害者の通勤も、安全対策上、検討すべき重要課題であった。
平成10年には重度の知的、身体障害者を7人雇用していたが、各々、自宅から電車等の公共交通機関を利用して通勤していたので、彼らが通勤途上で交通事故に会う危険性は常にあり、始業時間までに出勤しなかったり、遅れて来た時などは随分心配した。
そんな頃、福井県雇用支援協会から障害者雇用アドバイザーが、障害者の職場定着のフォローアップのために訪れ、「重度障害者等通勤対策助成金」を活用し、通勤バスが購入できるとの説明を受けたことから、早速、申請手続きのうえ、障害者用通勤バスを購入した。
公共交通機関の駅と会社までの間を通勤バスで送迎するようになると、交通災害から彼らを守ることができるとともに、出勤時間、帰宅時間が正確になり、安心して仕事に従事できるようになった。
また、「業務遂行援助者の配置助成金」を活用して、彼らの作業を日常的に指導・支援する援助者（役職者、リーダー）を付け、コミュニケーションをとりながら作業を進めた結果、リサイクル事業において重要な工程である選別作業を彼らに任せることも出来るようになった。
4. 今後の課題
障害者雇用を始めてから11年が経ち、特別支援学校を卒業して就職した従業員も、やがて30才になろうとしている。
育ててくれた両親も高齢化してきており、このままの状態では経済的にも自立して生活できるのだろうか？また、より多くの障害者に働いてもらいたいものの、事業規模に限界があるのではないか？
この問題は、経営者である私達には常々大きな課題でもあり、私達に出来ることは、障害者である彼らを健常者と同様な立場で認め合い雇用の場の拡大を図りつつ、共生社会の手本となれるように、微力ではあるが一層の企業努力をしたいと考えている。
執筆者 ： 公益センター株式会社 代表取締役社長 川上 広志
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