事業所名

株式会社柿の木農場

所在地

長野県長野市

事業内容

えのき茸生産販売及び各種きのこ販売

従業員数

40名

うち障害者数

22名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	2	ケース巻き作業、収穫作業 接種作業補助、箱詰め作業
内部障害	0
知的障害	16	菌掻き作業、ケース巻き作業 収穫作業、掻き出し作業
精神障害	4	接種作業、検品・箱詰作業 掻き出し作業

目次

1. 事業所の概要
2. 障害ってなんだろう・・・当社の障害者雇用への取組
3. 共に学び共に育つ・・・障害者に配慮した職場の環境改善及び体制の整備
4. 地域で必要とされる企業を目標に
5. 協会業務との連携・協力

事業所外観

1. 事業所の概要

えのき茸の生産販売をとおして、障害者雇用に積極的に取組み、すべての障害の内容を受入している重度障害者多数雇用事業所として、地域への貢献を目指している。

〔会社沿革〕

2. 障害ってなんだろう・・・当社の障害者雇用への取組

障害者雇用第1号の三木君への対応

・養護学校の先生の粘り強い交渉から「職場体験実習」を受入れた。

・それまでは、「障害者に何ができるの?」と深くは考えても見なかった。
あるとき、従業員が不注意にも三木君に対して仕事中「このばかやろう」と怒鳴ったところ、大騒ぎとなり、三木君は、「ぼくのことをばかと言った。」と、怒った。
重度知的障害者でも自分の意思を表現できるではないか。
このことから、社長は、自分も「差別者」ではなかったのかと、気づかされた。

・十人十色。障害だって、1人ひとりの個性じゃないか。
そうとらえることが出来たとき、社長は、進むべき道を確信した。

・三木君は、その後、仕込みから収穫まで1人でできるようになり、現在は、班長として、後輩の知的障害者の指導者として活躍している。勤続20年である。

・その間、三木君の作業日誌    49冊。成長の自己記録である。

菌掻き作業中の三木班長

3. 共に学び共に育つ・・・障害者に配慮した職場の環境改善及び体制の整備

・野球に興味のある少年には、新聞から試合結果の話をし、それを仕事に結びつける。
こだわりに強い性格のある自閉症の少年には、ひとつひとつ指示して仕事をさせる。
遅くてもいい、少しずつ上手になろうねと。
毎日毎日、その場その場で直面する課題に、直ちに対応して問題を処理していく。
その場が試験場。健常者と障害者、支援のなかでの育ちあい。20年の財産です。
周囲の女性がお母さん集団に変化していくことに時間はかからなかった。

・周囲が変わると障害者たちも変化した。職場という集団のなかで成長していく姿にみんなが影響を受けた。

・社内に「なんでも相談室」を常設し必要に応じ精神障害者などの相談を行なって職場定着に努めている。

・その間重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の障害者能力開発助成金(第1種)、障害者作業施設設置等助成金(第2種)及び障害者介助等助成金の業務遂行援助者の配置助成金等の活用を図り、職場環境の改善と体制の整備を促進した。

・仕事だけでなく、余暇活動についても積極的に企画・活動している。
専務、工場長が参加するバスケットボール部活動で障害を有する従業員の余暇活動の支援
長野市、長野県、全国大会など自治体や国が主催する障害者各種スポーツ大会に選手を積極的に送り出し各大会で優勝者を出すなど、スポーツを通じた自立支援を積極的に行っている。

摂種作業（精神障害を有する従業員）

掻き出し作業（知的障害を有する従業員）

収穫作業（知的障害を有する従業員）

ケース巻き作業（知的障害を有する従業員）

4. 地域で必要とされる企業を目標に

・もう一つの役割として、障害者の実習のための受入事業所として位置づけている。それが、障害を持った人たちの社会自立への踏み台となればと考えている。

・障害者の安定した職業生活を維持するためには、安定した社会生活が必要という実践結果からNPO法人を設立しグループホームの運営や、継続就労支援B型事業の運営にも取り組んでいる。
昨年開設したグループホーム「どんぐりの家」には7名受入。
「どんぐりファーム」（B型事業）には17名の利用者がいる。

・現在「第2どんぐりの家」の建設に取りかかっている。

・会社設立30年  障害者雇用延べ  28名  内退職者  6名

5. 協会業務との連携・協力

・社長をはじめとするスタッフの豊富な経験をもとに、障害者雇用管理に卓越した見識を持っている。

・柿島社長の肩書き

①  高齢・障害者雇用支援機構（当時）の雇用管理サポート事業協力専門家

②  長野労働局の障害者雇用アドバイザー

③  全国重度障害者雇用事業所協会より障害者雇用管理コンサルタント

④  地域の特別支援学校の保護者、児童生徒、教員らの視察見学などを年に数回受入れて障害者の就職への啓蒙に力を入れている。

⑤  長野県雇用開発協会主催の講習会を始めとする各種セミナーの講師委嘱

・長野県雇用開発協会主催の障害者職業生活相談員講習会を積極的に受講させ、障害者3人に1人の割合で障害者職業生活相談員を職場に配置しており、状況に応じた職場定着を図っている。（障害者職業生活相談員の数  8名）

・障害者職場定着推進チーム構成員（社長、専務、工場長、主任等）による職場定着推進会議を定期的に開催し、多数の支援者による障害者指導を実践している。

執筆者 ： 社団法人長野県雇用開発協会障害者業務部障害者雇用アドバイザー  遠山  亨