事業所名

株式会社エーエスオー

所在地

兵庫県尼崎市

事業内容

一般労働者派遣業、有料職業紹介事業、業務請負業、空港手荷物取扱業、生保・損保代理店業

従業員数

260名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	2	施設内保安業務
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 障害者の勤務状況
4. 取り組みの内容
5. 障害者雇用の効果・メリット
6. 障害者自身のコメント

1. 事業所の概要

当社は、大阪富士工業株式会社の100％出資の子会社として平成6年7月に設立された。大阪富士工業株式会社より空港事業部門を独立させ、株式会社エアポートサービスオフィックとして泉佐野に事業所を開設した。

平成13年2月に社名を現在の株式会社エーエスオーに変更すると共に本社を尼崎（親会社の構内）に移転した。

事業としては、次の三つの部門からなっている。

①請負業務

平成6年9月に開港した関西国際空港の開港と同時に、空港での手荷物ハンドリング業務を中心とした空港関連業務を行っている。平成17年2月に開港した中部国際空港においても手荷物ハンドリング業務と新たに輸出入貨物品の取扱い業務も行っている。また、主として親会社である大阪富士工業株式会社の保安管理業務を行っている。

②人材派遣業務

親会社である大阪富士工業株式会社の製鉄業でのノウハウを活かして、製鉄分野への人材派遣業務（工程生産管理業務等）を行っている。

③保険代理店業務

生命保険・損害保険の自由化にともないお客様に喜ばれる代理店をめざし生命保険・損害保険の代理店業務を行っている。特に、ガン保険については、業界のパイオニアでありリーダーカンパニーであるアメリカンファミリーの代理店としてその業務を行っている。

企業理念は、「人と人を結び、社会に求められる独自の技術を創造し、時代とともに成長する企業である」として、親会社の会長（先代社長）が目指した社会貢献を旨とする考え方が活かされている。

2. 障害者雇用の経緯

障害者雇用に取り組むこととなったのは3年前、平成17年2月に開港した中部国際空港で手荷物ハンドリング業務を中心とした空港関連業務の開始にともない従業員が一気に増加したため、障害者雇用に関して法律上2名の不足を生じることとなった。

そこで、保安業務に1名（身体障害2級）雇用したが1週間くらいで退職した。また、施設清掃等の作業として精神障害者を1名雇用したが、3日目くらいから体調が悪くなり2～3ヶ月休むこととなり、復帰を期待したが復職できずに退職となった。

独自に障害者雇用に取り組んだがうまくいかなかったので、ハローワークに依頼して良い人材を紹介してもらうこととした。障害者を雇用するうえで、どのような仕事が可能であるのか検討した。製綱の工程生産管理業務は迅速かつ完璧な対応が必要となるので、経験のない人は無理である。保険業務は資格が必要となる。そこで、保安管理業務について、過去の失敗で不安はなかったわけではないが、下肢障害者以外であれば対応できるのではないかということで決定、ハローワークに依頼した。

平成19年6月にFさんを、平成20年3月にKさんを紹介してもらい雇用に至った。Fさん（身体障害2級）、Kさん（身体障害4級）の二人はいずれも上肢障害者である。

3. 障害者の勤務状況

保安管理業務は、事業施設・構内全域の巡回、来客の応対、駐車場への車両誘導、警備設備（セキュリティ）の管理・対応、門扉の開閉作業、保安日誌の作成・報告等を行う業務で、障害者も健常者も全く同じ業務内容である。

障害者2名の勤務時間は、8時～15時までと15時～22時までの時間帯で夜勤はない。夜勤（22時～8時）は健常者2名が担当している。健常者の昼勤が1名配置されているので、計5名が交代で24時間勤務している。（勤務場所は守衛室）

巡回対象の親会社社屋(8階建)

駐車場の状況

4. 取り組みの内容

雇用後、Fさん、Kさんに対して、警備業務の資格を有する職員が講師となって保安管理業務に関する研修を実施した。

親会社の大阪富士工業株式会社の新社屋（8階建）が平成20年4月に完成した。守衛室も新設されたのに合わせて、門扉が重たかったので障害者に配慮して軽いものに取り替えられ、以前に比べて楽に開閉ができるようになった。

また、親会社の新社屋の完成後、新社屋に警備会社の警備システムが導入され、警備会社からセキュリティに関する研修が実施された。この研修は1回きりであったが、保安業務に配置されている5名全員が一人勤務であるため、全員が必死に取り組んだ。当初は、警備システムの解除を誤操作し、警備会社に自動通報されて警備会社から駆けつけてきたこともあった。警備システムについては、実践していく中で覚えていった。

新社屋の巡回は8階建てであるので、上から順に1階づつ確認しながらの巡回は時間もかかり大変であるが、Fさん、Kさんとも何の問題もなくこなしている。

写真左がFさん、右がKさん

勤務場所の守衛室付近

5. 障害者雇用の効果・メリット

当社の基本理念である社会的貢献の一環として、障害者に開かれた職場を提供するという観点から取り組みをしたもので、FさんKさんとも何の問題もなく働いてもらっている。二人とも障害があることすらも感じさせない。ハローワークから良い人を紹介してもらって感謝している。

特に、Fさんは、保安職員5名のリーダー的存在で頑張ってもらっている。雇用に至るまでは障害者が保安業務をこなせるか不安もあったが、その心配は当たらず今ではなくてはならない存在となっている。安心して任せられ、デメリットは何もない。

また、Fさんは60歳を超えているが、世代交代が進む中で、退職後の補充についても社会的貢献として障害者雇用を進めていきたいと考えている。

当社のモットーとしている「時代に、社会に、そして人にやさしくもっとしなやかに」ということが活かされ、柔軟に対応できたと考えている。

今後の障害者雇用として、空港関連業務において、特別支援学校から知的障害者に来てもらい体験実習を行った。来年度、数名採用の方向で検討している。

6. 障害者自身のコメント

Kさん（身体障害4級、左手不自由）

前職は塗料等の製造会社で倉庫管理の仕事を交替でしていました。ハローワークの紹介で当社に就職しましたが、守衛の仕事も前職でやっていた仕事とあまり変わらないので違和感はありません。

発電所建設作業に従事していた時、歯車に左手を挟まれ受傷、障害者となりました。

毎日、3本の旗を揚げるのが始めはちょっと苦労しましたが今はどうということはありません。

遅番は夜10時までなので、日曜の夜だけは一人になることもありますが、それ以外は溶接など夜勤をしている人がいますので全く一人になるということはありません。

Fさん（身体障害2級、両手不自由）

奄美大島から神戸の自動車会社に就職。20歳くらいの時、高圧線に接触して受傷、3年間闘病生活をしいられました。その後、ダンボール会社に就職、30年間勤めましたが、合併による工場閉鎖で退職。雇用保険をもらいながら何か資格を取ろうと思い自動車運転免許を取りました。また、フォークリフトの免許を取って、印刷会社でフォークリフトに乗って8年間勤務しました。私は一つの所に長く真面目に働くことを信条としています。

この度、ハローワークの紹介で当社に就職することができ、体力的には楽な仕事ですので妻も私もすごく喜んでいます。

私は障害者になって45年になりますが、障害者であるということを自覚して人より早く会社に行き真面目に仕事に打ち込んできました。

今この会社に入って、会社のスローガンに心を打たれました。会長が私にまでやさしい声をかけていただき感謝しています。真面目に勤めたお陰で、こうして今、保安の仕事を任されるようになり、充実した日々を送っています。

※保安担当部長のコメント

最初の雇用で失敗したので、うまくいくか不安でしたが、二人とも仕事に対する姿勢がとても熱心で、今や保安業務になくてはならない存在です。警備システムの導入後、各メンバーへのフォローは、Fさんがいなければできなかったと思います。保安のリーダーとして持ち前の責任感の強さで頑張ってもらっています。守衛の仕事は会社の顔であり来客に対する丁寧な対応が一番重要ですが、これが出来ており今は何の心配もなく安心して任せています。

執筆者 ： 元社団法人兵庫県障害者雇用促進協会職員  辻井  宣八