事業所名

株式会社汎建製作所

所在地

奈良県川西町

事業内容

各種エンジンマフラー、建設機械用の板金製品、燃料タンク、住宅関連 部材等の製造

従業員数

227名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	製造
内部障害	0
知的障害	3	組立て及び検品作業補助
精神障害	1	塗装業務補助

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
2. 障害者の従事業務、職場配置
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景

「建築を汎める（ひろめる）」を意味する“汎建”を社名に冠する当社は、大正12年の創業である。当初は、鋼製建具の製作から始め、現在は各種エンジンマフラー、建設機械用の板金製品、燃料タンク、住宅関連部材等の製造を行っている。

2次元CADによる図面作成、3次元CADによる図面展開から金型の設計・製作、製品の加工・溶接等最新の技術で顧客のニーズと信頼に応えられるよう、様々なことにチャレンジし続け、国内では奈良・大阪・石川・茨城の4ヶ所で稼動。また、インドネシアのジャカルタに海外生産拠点を設立している。

また、当社は、常に環境にやさしい新しい技術、プロセス、材料を追求し、製品開発・サービスの提供に努めるとともに、環境改善に関する活動の継続的改善と汚染の予防に努めている。従業員に対しては、環境教育を推進し、廃棄物の削減、省資源・省エネルギーの推進を徹底している。

当奈良本社事業場は、奈良盆地のほぼ中央部、西名阪自動車道郡山インターチェンジの南西方に位置する。

現在知的障害者も含め5名の障害者が在籍し、平成19年9月にはその功労に対し独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長表彰を受けた。

障害者の雇用はかなり以前から行ってきた。きっかけは養護学校の先生やハローワークからの勧めである。金属製品の製造工場内での作業であるため、体力がないと務まらない。雇い入れた障害者がすべて定着するとは限らず、これまで離職した者も多いが、勤続10数年の者もおり、適性と能力があれば会社にとって貴重な戦力になる。このことは健常者も同様で、障害者雇用に特別な意識は抱いていない。

2. 障害者の従事業務、職場配置

5名の障害者はいずれも男性で、3名が知的障害者、1名が精神障害者、1名が肢体不自由者（いずれも軽度）である。

知的・精神障害者4名のうち知的障害者2名は、耕運機のマフラーの取り付け並びに商品の検品作業を担当している。検品は、商品の外観の確認や、内部に異物が混入していないかを音で確認したりするもので、定型作業とはいえ、一定の注意力が必要とされる。この2名は、自分の担当業務だけでなく、他の作業で手が足りないときに援助することもできる。たとえば溶接ロボットを使っての商品の溶接・検品作業なども、障害者だけで一連の工程を黙々と繰り返し行える。上司の忍耐強い教育と指導の結果だが、仕事を憶えるのに数ヶ月もかかった訳ではない。

あと2名の知的・精神障害者は、商品の塗装業務に従事している。塗装業務といっても、粉体塗装設備のトロリーコンベアのハンガーに、さまざまな形状と大きさの商品を掛け、塗装完了後それをはずす作業である。この塗装設備では塗装する色も商品等に応じて変わるため、単に次から次へと機械的にハンガーにかけるのではなく、設備の操作にあわせて判断しなければならない。そういった設備の操作に関してもベテランの障害者が担当しており、しかも微妙なコツを心得ているため、ラインのなかでは欠かせない存在である。

肢体不自由者は中途障害者である。手の指に欠損があるが、通常の勤務をこなしている。

検品作業風景

塗装作業風景

3. 取り組みの内容

当社の業務には、一定水準以上の技術が必要である。しかも危険な業務が多いため、安全面を考えても障害者を配置できる職場は限られる。安定した心理状態で作業に従事するためには上司や同僚との協調性も欠かせない。そのため、障害者を雇用するにあたっては、事前に職場実習を行い、体力や対人関係等の適応性の把握に努めている。職場実習では、まず比較的安全な単純作業の部署に配置し、可能性があれば他の部署にも配置転換している。

当社は製造する商品が多種多様であり、時には製造しなくなるものもある。特定の商品しか担当できないのでは困るので、採用後も能力や適性に応じて複数の業務をこなせるよう指導している。

障害者の職場定着推進チームは障害者職業生活相談員を含め4名で構成している。障害者の家族や関係機関と常時連絡を取り合うことまではしていない。何かトラブルがあったとき、必要に応じ相談、対応する。ただ、障害者就業・生活支援センターの相談員は適宜訪問してくれている。

作業に関して問題がなくても、班長など上司が交代したときなど、すぐに順応できずに精神的に不安定になったりすることがある。そういう場合は相談員などが根気よく相談に乗り、定着を図る。

なお、助成金に関しては、報奨金以外特段の受給事例はない。

当社では、障害者だからといって特別の雇用上の配慮はしていない。業務の教育・指導にしろ、職場配置にしろ、健常者について行うことと同様の扱いをしている。「特別なことをしない」ということこそが障害者雇用の取り組みの基本的姿勢であるともいえる。

4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

仕事ぶりを見る限り、当社の障害者は健常者と何らの変わりはなく真面目である。

忍耐強いのも障害者の特徴である。たとえば夏の工場内は気温も高く、重い金属製品を扱う作業は相当過酷なものであるが、懸命にこなしている。勤務態度については障害者が健常者の手本になれる部分がある。

また、勤続2年余りの23歳の知的障害者の一人は、労働局で行われた会合で自分の仕事についてスピーチを行うなど、自信と能力を備えている。障害者といって特別視する必要がないほどの人材を確保できることが当社にとって大きなメリットとなっている。

執筆者 ： 大西労務経営事務所  社会保険労務士  大西  守