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多様な雇用部門で個々の特性を最大限に活かす取り組み
- 事業所名
- 米子信用金庫
- 所在地
- 鳥取県米子市
- 事業内容
- 地域金融機関
- 従業員数
- 295名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 1 パソコン操作・事務処理業務 肢体不自由 4 守衛・電話交換、印刷、メール便搬送 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
米子市に本店を置く唯一の金融機関として、西は松江市まで島根県内4店舗、東は琴浦町まで鳥取県内17店舗の合計21店舗で営業を展開しており、総勢約300人の役職員・短期嘱託職員(パートタイマー)が地域と密着した金融サービスを行っている。
(2)障害者雇用の経緯・背景
会員をはじめとする地域のすべての利用者に支えられている当事業所は、地域社会の発展のために貢献することが社会的役割であり使命であることから、障害者雇用率の充実の必要性も背景にあり、ハローワーク米子の紹介で平成14年度から身体障害者を継続雇用している。
[障 害 者 数] 5名
障害名 | 勤務時間 | 担当業務内容 | 配慮事項 | |
---|---|---|---|---|
A さ ん |
上肢機能障害 | 07:30 ~ 15:30 |
守衛、電話交換 | 重い物・大きい物を取り扱う必要がない、守衛・電話交換業務に配置。 |
B さ ん |
下肢機能障害 | 09:05 ~ 17:30 |
メール業務、ATMの管理 | 責任感と業務の慎重性を有している者の能力が発揮できる業務への配置。 |
C さ ん |
上肢機能障害 | 10:00 ~ 18:00 |
印刷業務、守衛 | 重い物を取り扱わない、印刷部署及び、守衛業務への配置。 |
D さ ん |
聴覚障害 | 08:50 ~ 17:00 |
事務処理業務 | 電話・顧客応対業務以外の、パソコン操作・事務処理業務部署への配置。 |
E さ ん |
上肢機能障害 | 09:00 ~ 17:00 |
窓口業務 | すべての業務が可能であり、特別な配慮を必要としない。 |
[雇 用 率]
年度(6 / 1 現在) | 労働者数 | 身体障害者数(うち重度) | 雇用率( %) |
---|---|---|---|
平成14年 | 310 | 4(2) | 1.94 |
15年 | 300 | 3(1) | 1.33 |
16年 | 296 | 3(1) | 1.35 |
17年 | 293 | 3(1) | 1.37 |
18年 | 297 | 5(1) | 2.02 |
19年 | 290 | 5(1) | 2.07 |
20年 | 295 | 5(1) | 2.03 |
2. 取り組みの経緯、背景・効果
(1)多様な雇用部署で個々の障害を活かす取り組み
当事業所の金融サービスの主要業務は、営業店での預金・融資窓口業務と本部業務に大別される。現在雇用する障害者5名中4名が本部勤務であるが、個々の障害の特性を最大限に活かした部署にそれぞれ配属するよう配慮されており、1名は営業店の預金窓口で他の職員と変わることなく、来店客への明るい応対を得意とした「テラー」として活躍している
(2)障害者の特性を活かした作業への配置
① 上肢機能障害(Aさん)
重い物・大きい物を運ぶことは難しい上肢機能障害であることを考慮し、本店通用口の守衛・受付、電話交換等の部署へ配置している。業務上、7:30から営業時間の終了する15:00過ぎまでの実働7時間勤務としている。
なお、宅配便の荷物を受け付けた場合、本部の各担当グループが受け取りに行くように配慮されている。


② 上肢機能障害(Cさん)
Aさんと同様、重い物・大きい物を運ぶことは難しいため、本部の各グループで必要な資料等の印刷や部数の多いコピー作業を、印刷機・コピー機等を完備した専用室で行っている。完成した印刷物・コピーは依頼した各グループが専用室に出向き、運搬するよう配慮している。業務内容に変化をもたせることにより就業意欲が持続できるよう、15:30からは、Aさんから本店通用口の守衛を引き継ぎ、担当している。
③ 下肢機能障害(Bさん)
下肢機能障害のために車両の運転業務は行わないが、長期の勤続により金融業務に精通していることから、同乗しての各支店へのメール便搬送業務及び自動受払機(店外ATM)の管理、現金精査など現金・有価証券を扱う、責任感と慎重性を必要とする業務を担当している。移動等に配慮し事務所のデスクの位置は出入り口に近い場所に設置している。


④ 聴覚障害(Dさん)
両耳とも聴覚障害があるため、日常会話は簡単な手話と読唇により行い、業務上の複雑な内容の伝達は、主に筆談で行っている。なお、筆談については磁石式筆談ボードを導入し、相互にスムースな意思疎通が図れるよう配慮している。聴覚障害により、電話・顧客応対の業務は困難であるため、システム機器およびパソコンのデータ入力操作・各種事務処理業務を担当している。
⑤ 上肢機能障害(Eさん)
一般職員と同様に金融業務全般の担当が可能であり、現在営業店の窓口業務係(テラー)を行っている。来店客への明るい応対を得意としており、本人の特性を最大限に活かせる業務に就いている。
(3)職場配置の配慮と作業意欲を醸成する環境作り
① 職場配置
特に下肢機能障害者の安全な環境での勤務を考慮し、エレベーターを利用でき 広い作業スペースのある、本店本部を勤務地とするよう配慮している。 また、所属部署は 人事・法務グループとしており、職場環境等にその都度配慮することができる態勢にしている。
② 駐車場
本店本部の敷地内に、職員用として十分な台数(140台)の駐車スペースを用意している。また営業店にも近隣に専用駐車場を確保し、自家用車での通勤を行い易くしている。
③ 空調検査・館内清掃
本店本部の各階ごとに、2ヶ月に1回 空気環境の法定検査を実施している。また、館内の清掃頻度は全フロアが毎日清掃されており、良好な勤務環境である。
④ 分煙
本店本部内には、空気清浄機を完備した分煙専用室・スペースが設置されている。
⑤ 人的配慮
本店本部内の各職場には、常時複数の職員が共同で就労しており、管理監督者も、丁寧で穏やかな指導ができる人材が配置されているため、安心して勤務できる雰囲気がかもし出されている。
(4)その他の配慮
● メンタルヘルスケア対策
中国地区信用金庫健康保健組合をはじめ、外部専門機関との提携サービスを利用し、24時間対応の電話相談やカウンセリングを通じて、職員が抱える問題が深刻なレベルに達するまでに、心の負担軽減・安心感の醸成を図れるようなシステムを徹底している。
● ヘルプライン
職場内で相談できないこと、上司やカウンセラーに言えないこと、自分、同僚、先輩、後輩、部下にかかわる個人的なこと等、どのようなことでも、人事・法務グループ宛のヘルプラインを利用すれば、プライバシー厳守で問題を解決するようになっている。
(例) 差別やセクシャルハラスメント・パワーハラスメント
● 職場復帰支援(リワーク支援)
うつ病などで休職中の職員の復職を検討する場合、家族と医師と事業主だけで取り組もうとせず、リハビリ出勤を考慮し障害者職業センターと協調した体制を取るようにしている。
3. 取り組みの効果及び今後の抱負
一般的に金融機関の業務内容は、営業店の窓口業務と本部のデスクワーク業務が主体であると思われがちであるが、ほとんどの金融機関にはメール便搬送業務、現金精査業務、重要印刷物・伝票類管理業務、印刷業務、守衛・電話交換業務などの業務を受託する子会社「○○ビジネスサービス」がある。よなごしんきんビジネスサービスもその業務内容は多種多様であり、職員数も数十人単位と多いため、それぞれの特性を活かせる部門に金融機関の臨時職員として出向することができる。また勤務時間についても5分単位で最大限の調整を行うようにしており、障害者の個々の生活実態に即した構成ができるため、安心して生き生きとした勤務ができる要因になっていると思われる。もちろん正職員、短期嘱託職員での採用も実施してきており、障害者雇用率の向上を目指す必要性を十分に認識しながら、今後も金融機関の業務に適した人材であれば、障害があることにかかわらず適切な部門に採用していくことは可能であると考えている。
(角 人事・法務グループリーダー 談)
会社の業務内容を多角的に分析し、障害の特性を十分に把握したうえで各部署へ配置している。それぞれの部署内で人的、物理的な就労環境が構築されている本事業所は、障害がある人たちにとって自分を生かせる最適な就労の場である。
執筆者 : 私設相談おしゃべりルーム 代表 八木 啓子
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