知的障害者雇用のモデルケースづくりを目指す
- 事業所名
- 株式会社山陰合同銀行
- 所在地
- 島根県松江市
- 事業内容
- 地域金融機関
- 従業員数
- 2,685名
- うち障害者数
- 42名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 5 事務職 肢体不自由 20 事務職 内部障害 2 事務職 知的障害 15 ノベルティ製品製作 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
昭和16年創立、島根県松江市に本店を置く地方銀行である。島根・鳥取両県をはじめ、山陽・兵庫地域までをカバーする広域な店舗ネットワークを有し、経営理念「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」の実現のため、地域の皆様のあらゆる金融ニーズにお応えし、皆様の良き相談相手として、頼りにされる銀行を目指している。そして、地域に対する責任を果し、地域経済の発展に積極的に貢献している。
平成19年9月に、知的障害者が専門的に就労する事業所「ごうぎんチャレンジドまつえ」を開設、知的障害者を15名(平成20年6月1日現在)雇用している。
創立
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昭和16年7月1日
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本店
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島根県松江市
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資本金
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207億円
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従業員数
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2,685名(平成20年6月1日現在)
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障害者雇用の状況
障害種別 | 人数( )は重度 | 所属部署・職務内容ほか |
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身体障害者
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27(10)
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本支店
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知的障害者
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15(4)
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ごうぎんチャレンジドまつえ
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2. 障害者雇用の経緯、背景
現頭取の障害者雇用に対する熱い志が、「ごうぎんチャレンジドまつえ」開設のきっかけである。知的障害のある子供をもつ友人から、「自分が死んだらこの子はどうなるのだろうか?」という相談を受けたことから始まった。ちょうどその頃、障害者自立支援法が施行され、障害者の一般就労が強く謳われたものの、山陰のような田舎では企業が少なく働く場がない、ということが課題となっていた。
「まずは、当行で障害者の働く場を創ろう、そして、そのノウハウを取引先の企業等に広め、地域社会全体で障害者の自立を支援しよう。」との思いで取り組みを進めてきた。ポイントとして、慈善事業ではないこと、当行だけの取り組みではなく地域に波及・定着させることを考えている。
3. 取り組みの内容、効果
(1)経緯
頭取の意向を受け平成18年に知的障害者を専門的に雇用する事業所の設立計画がスタート。
当行では身体障害者の雇用経験はあったが知的障害者については経験が無く、まず多方面から情報を収集することから始めた。行政機関からは各種支援制度に関して、福祉関係からはハード、ソフト面に関して情報を収集、アドバイスを受けた。
また、「松江市障害者雇用ネットワーク委員会」に委員として参画。各種研修会への参加や東京、神奈川の特例子会社の視察等を通して、障害者雇用のノウハウを具体的に学んだ。
事業所責任者(所長)については当初、福祉経験者の新規採用を考えていたが、障害者就業・生活支援センターからのアドバイスもあり社内公募を実施。平成19年2月に、20年間の勤務経験のある行員を所長として選任し、具体的な準備に取りかかった。所長の他、事業所専任の職員は2名おり、1名は社内公募により経験豊富な行員を、1名は福祉・教育経験者を新たに採用、配置している。
事業所は松江城近くの街中にある旧北堀出張所を改修し整備。郊外ではなく街の中心で、ということを意識した。開設にあたっては、地元説明会を実施し、要望を伺い地元の全面的な理解と協力を得ることができた。
(2)業務内容
「ごうぎんチャレンジドまつえ」における主な業務内容は、①ノベルティの製作業務、②事務業務である。業務内容、職務開発にあたっては、新規業務の開発、既存業務の切り出しと集約、外注業務の内製化を念頭に置き、新たな経費負担を発生させない仕組みづくりを考えた。
①ノベルティの製作業務は、今まで外部から購入していたものを内製化した。知的障害者の芸術的分野の能力の高さを活用し、描いた絵を使ってノベルティに印刷する業務である。絵の才能を伸ばすため、地元の絵の先生に指導をしてもらっている。当行で取り組んでいる環境問題を考慮した森林保全活動とリンクさせ、間伐材を加工し通帳ケースをつくり、絵を印刷。
さらには、エコバッグに絵を印刷している。製作したノベルティは、株主総会や各支店でお客様にお配りしている。完成度の高さと絵の素晴らしさから大変好評を得ている。
②事務業務に関しては、当行本支店及び関連会社において、知的障害者が出来る業務の洗い出しと集約を行なった。その際、障害者就業・生活支援センターのスタッフに同行していただきアドバイスを受け、使いやすい道具を考案するなどの工夫をした。名刺・伝票類の印刷、入金票のゴム印押し、冊子、パンフレットの封入発送等の多様な業務を行っている。名刺印刷に関しては、全店舗分をカバーし、ほぼ全ての行員の名刺を「ごうぎんチャレンジドまつえ」で作成している。




(3)雇用スキーム
採用に関しては、ハローワーク及び福祉施設や特別支援学校に情報を周知、希望者を募り推薦して頂き、面接、実習を行いその結果で決めている。
面接で重視するポイントは3つ。1つ目は絵を描くのが好きだということ。2つ目は一人で通勤が出来るということ。3つ目は、働きたい、自立していきたいという意識を強く持っていること。
仕事自体は実際にやってみて、覚えていけば良いと考えている。実習に関しては就労移行支援事業所やジョブコーチ、障害者就業・生活支援センターにサポートしていただいている。
平成19年9月に福祉施設から6名を雇用、その後平成19年12月に福祉施設から4名、平成20年4月に特別支援学校の卒業生5名を採用し、現在15名の知的障害者が勤務している。
雇用形態は直接雇用。勤務時間は9時~16時 (週5日・1日6時間:健康保険、厚生年金、雇用保険等の社会保険加入) 月収は8万円程度である。
(4)取り組みの効果と今後
障害のある行員に関しては何よりも集中力、持続力の高さに驚かされる。特に、絵画制作の時間では、3時間集中力を途切らせることなく黙々と作業に没頭する。一人ひとり作業のペースに差があったり、得意不得意はあるものの、皆素直で真面目な性格。手を抜いたりさぼったりすることが無い。時折体調を崩すなどして休むことはあっても辞めた者はおらず、十分に能力を発揮してくれていると感じており、大きな問題は無い。
勤務時間以外での、家庭やプライベートの部分で問題が起こった場合には、関係諸機関のサポートを受けその都度解決しており、連携がうまくとれている。当初グループホームから通勤していた行員が安定して勤務を続け、支援を受けながらアパートでの生活へ移行したという事例もあり、「自立支援」という意味では少しずつ成果が出始めていると思われる。
また、「ごうぎんチャレンジドまつえ」における知的障害者雇用拡大に向けた取り組みは、地方銀行では初の取り組みであったこともあり、日本金融通信社より2007年度の「ニッキン賞」を受賞。受賞を記念し、島根県立美術館にて展示会を開催し、多くの一般市民に活動を知って頂く機会となった。

4. 今後の課題、展望等
勤務時間以外の家庭やプライベートの部分で問題が起こった場合には、本人・ご家族と会社だけでは解決が難しいことが多く、引き続き関係諸機関との連携、サポートが欠かせないと考えている。
今後20名まで雇用を拡大することを計画しており、業務量の確保が今後の課題である。ノベルティに関して新しい商品の開発や、別の新たな業務、職域の開発が必要となってくる。
また、知的障害者だけではなく、精神障害、発達障害など他障害をもつ方の受け入れへの要望も大きく、障害種別や一人ひとりに合わせた業務、職域の開発も課題となってくるであろう。
事業所開設以来、多くの視察見学を受け入れてきたが、特別支援学校や福祉関係の方が多く、地元企業は数少ない。いかにしてより多くの地元企業に雇用ノウハウを伝え、広めていくかも今後の課題である。
地域社会全体での障害者の雇用の促進や自立支援、地域におけるセーフティーネットづくりに繋がっていくよう尽力していきたい。
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