ハローワークと岡山障害者職業センターとの連携及び助成金の活用による
新しい視点での雇用の開発
- 事業所名
- 富士ゼロックス岡山株式会社
- 所在地
- 岡山県岡山市
- 事業内容
- 複写機・プリンター等OA機器の販売と保守、ネットワークの構築のコンサルティング・施工と保守等
- 従業員数
- 205名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 電話受付 聴覚障害 0 肢体不自由 1 売上伝票入力 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 障害者雇用の動機
富士ゼロックス岡山では、10年前に車いすの障害者を雇用しており、その時フロアーのスロープ、手摺りの取り付け、トイレ、エレベーターなどの会社内の施設を整備してバリアフリー化ができていた。しかし、この障害者が退職してからは新たに受け入れを希望するも、ミスマッチで上手く結びつかず、雇用率は未達成の状況が続いていた。
「何とか雇い入れなければと思っていたが、社内を見渡してみても意外と障害者が働く場所が無く、会社の業態からすると外商が中心で、社内業務は、売上げ・納入等の伝票整理や配送、物品の在庫管理の業務に限られ、ビルの中の業務というと製造工場に比べると周辺業務もなく、又デスクワークの仕事も一つの仕事だけとはいかず兼務をしている状態である。それに加え管理部門の人件費の効率化も会社の方針であるので、ポストが空かなければ採用(補充)が出来ない。障害者を受け入れるにしても、条件整備が必要だなあと思っていました。タイミングを見ておりなかなか行動に移す機会が無かった」と武田部長は当時を振り返って話した。
その様な状況の中で、富士ゼロックスグループ全体で「企業の社会に対する責任として、障害者雇用を推進していく」計画が打ち出され、富士ゼロックス岡山でもこの方針に従い障害者を受け入れるべく積極的に検討に入った。
雇入れは、今までわれわれも共に働いてきた実績があり、又ハード面でも社内施設(スロープ、手摺り、トイレ、エレベーター)、駐車場の改善も不要なので、すぐに受け入れ可能なのは下肢障害のある人がいいのではないかと具体的な方向性が決まった。
2. 雇用支援機関との連携が大変うまく機能した
下肢障害のある人がいいのではないかと具体的な方向性を決めていたが、それでも幅広く障害者を受け入れる為、以前に助言を受けたことのある岡山障害者職業センターに相談をした。そこで「支援機器等を活用すれば、重度視覚障害者の人でも電話受付業務は可能ですよ」とアドバイスを受けた。正直、会社の側では視覚に重度の障害がある人の受け入れは全く頭になく、瞬間とても無理だと思ったが、持ち帰り会議を開き、ちょうど電話受付係が退職したばかりであったので、ハローワークと岡山障害者職業センターと連携してみようと云う事になったのである。早速ハローワークへ“電話受け付け業務”で求人票を出し、Uさんを紹介された。
岡山障害者職業センターでは「“職務試行法”という実習制度があり、3週間の限度があるのですが、会社に行かせてもらい実際に職場の人達と一緒に作業をして、どれだけの力を発揮することが出来るか一度試してください」と言われ、Uさんに会社へ来てもらった。当初は、お客様の名前の聞き間違い、聞き返しが少しあったが、支援機器を使用することによって期待以上の能力の高さは素晴しく大変驚かされ、感心させられた。早速経営会議を開き、職務試行が終わる前にトライアル雇用を活用せず、すぐに採用することを決定したのである。武田部長は「能力の高さが素晴しいのは勿論、Uさんのやる気と性格の明るさ、素直さにも惹かれました」と採用に踏み切った理由を語ってくれた。
Uさんの採用の一番のポイントは、ハローワーク・岡山障害者職業センター・岡山県雇用開発協会(助成金の活用)と大変上手く連携した結果、事業所の職場開発につながったことにあると思われる。
富士ゼロックス岡山では、“能力があれば障害の程度・種類は問題ない”と云う考え方になり、引き続いてOさん(23歳大卒男子、脳性マヒによる重度の両上下肢障害)を売上伝票入力及び電話応対業務で採用した。Oさんは赤磐市から毎日自動車で通勤している。UさんとOさんは同じフロアーで、デスクの位置は違うが頑張って働いている。この事もお互いが励みにもなっているようである。「まさに連携のお陰で障害者が働ける職場を開発してもらったと実感した」との事である。
3. Uさんの仕事~もうすっかり慣れました
Uさんは、病気で失明。岡山の盲学校を卒業後、大阪の視覚障害リハビリテーションセンター(社会福祉法人 日本ライトハウス内)に入所し寮生活をしながら、ビジネス科電話交換コースを修了し、地元のハローワークへ求職申し込みをしていた。自分では仕事があれば十分業務をやっていく自信はあったが、視覚の重度障害と云う事でなかなか結びつかなかった。
Uさんは会社から徒歩とバスで15分の所のマンションで単身生活をしている。朝会社に着くと、他の社員と同様デスク周りの清掃を行い仕事にとりかかる。Uさんの従事する業務は、会社にかかってくる電話の対応、その取次ぎと外出している営業社員へ連絡をすることである。先ず、代表電話にかかってくる電話をイヤホーンで聞き、点字ディスプレイへ打ち込み、確認して社員に用件を伝える。又さらに外部の営業社員への連絡は、数字・内容・名前を間違ってはいけないので、パソコンに内容・用件を打ち込み、もう一方のイヤホーンにより、PCスピーカーの音声で確認して携帯へメールで配信している。
1日に100本~120本の電話受付処理をしている。電話受付なので当然、声だけで明るく、丁寧に接客をしなければならない。その点でも物の見事に愛想よくテキパキと処理をしていた。仕事の合間、Uさんに話を聞くことができた。今は素晴しくベテランのように振舞われているけれど、たった1年でそれだけ出来る様になったのか、初めはどの様な失敗があったのかと尋ねると、「リハビリテーションセンターの訓練施設で基礎動作は訓練していたので、仕事のハード面についての戸惑いは無かったが、やはり実践となると伝達の内容やその量・スピードは比べようもなく、得意先のお客様の名前を聞き間違えたり、聞き返してクレームや注意をされたことがあった」しかし、総務部の上司からお得意様の名簿一覧表(エクセルで作成し、音声認識ソフトで聞く)を作ってもらったり、慣れによって徐々に間違いも少なくなったという事である。

4. サポート体制
Uさんの職場は、セキュリティーの厳しい正面玄関を入り右側の管理本部の1Fフロアーの中にある。部屋は仕切りもなく、十数人の仲間と一緒に業務をしており、お互いフォローしあっている明るい雰囲気の職場である。寮生活や集団生活の中で培われた協調性や自分で出来る事は何でもしていこうという自立心はきちんと身についていたので、他の社員と同じ様に同僚とランチしたり、飲み会にも積極的に参加し、すぐに仲間に溶け込んだそうでUさんには、特別なサポートは必要なかったと言う事である。
会社は、寮生活し職業訓練修了をしたというキャリアがあると聞いても、実際どうなるものか、視覚障害者を受け入れるのは初めてなので大変心配したそうである。そこで「気配りの出来る中堅の男子社員を隣のデスクに移動させたり、私自身もバスに無事に乗れるのか毎日ビルの正面玄関まで出て、見送っていたのですが、全く心配いらなかったですね」と武田部長。ただ、慣れるまではUさんに声をかけるときは、名前を名乗ってから声をかけるようにしていたとの事。大変行き届いた気配りである。
5. 目指すやさしい会社へ前進 ~他の社員へ良い刺激となった~
視覚障害者の受け入れは初めてだったので、会社全体も、管理本部の社員も不安視する声があったのは正直な話である。自分たちの仕事もしなければならないし、その上いわゆるお世話をしなければいけないのではないか、負担が多くなるのではと心配であったそうである。今では“案ずるより産むがやすし”で、視覚障害者というより、ただ目が悪いのかなあという感じしかない、というのが印象だそうである。
会社がモットーとしている『お客様にも、社員にもやさしい会社』へ前進したのではないかと思われるとの事である。2人の重度障害者の仕事上の頑張りは大変インパクトがあり、他の社員にも、自分自身もう少し頑張れるのではないかと見直すきっかけになり、全体のモラルアップになったそうである。
6. 活用した助成金制度
幸い富士ゼロックス岡山はOA機器及び関連諸商品を取り扱い、パーソナルコンピューターのソフト、インターネット関連等は専門商社であったので、この採用がスムーズにいったともいえる。
※重度障害者通勤対策助成金
重度障害者等用住宅の賃貸助成金
※障害者作業施設設置等助成金
第1種作業施設設置等助成金(設置・整備)
・視覚障害者の電話受付を支援する設備の導入
1.PC talkerXP
パソコン操作を音声で案内するソフトです。ソフト導入により、パソコン操作を視覚障害者でも容易に出来る。
2.MMメール2
パソコンのメール操作を音声ガイダンスを通して容易に操作出来るようにするソフトウェア。
3.音量調節アンプ
電話受付時、両手をパソコン操作に使用する為にヘッドセットを使用している。
周囲の状況によりヘッドセットからでは聞き取りにくい場面があり、その際にボリュームを調整する為の装置。


視覚障害者のためのメモ帳
(Uさんの私物です)
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