特例子会社認定を目指し、障害者雇用の子会社を設立
社長を筆頭とした熱い想いがグループ全体へ浸透

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- http://www.anabuki.ne.jp
1. 取り組みの背景
今年5月、当事業所は障害者を雇用するための新会社『あなぶきパートナー』を設立した。当該子会社における主な業務は、従来外注していたチラシ広告の作成や印刷の一部、ダイレクトメールや社内報などの発送作業などのほか、グループ内企業周辺の清掃などである。
昭和39年に設立された当事業所は、当初、宅地物件取引を事業の中心としていた。その後、ホテル事業、不動産分譲事業、人材派遣業など多角な事業展開を行ってきたが、事業基盤は地元香川県にあった。
昨今、県外への事業展開も積極的に行っているが、企業の社会的責任(CSR)の一環として、また、地域密着型企業として、地元における雇用、特に、障害者雇用は障害者にも社会で活躍できる門戸を広げるとともに、障害者の生活自立支援という観点からも重要と考えている。
これまで穴吹興産本体においては障害者を雇用していなかったが、当事業所が管理している駐車場の管理員などとして障害者を雇用した実績があるほか、子会社のクリエアナブキ(人材派遣業)では障害者を派遣スタッフとして企業へ派遣するなど、障害者に対する理解は深い。
今回のあなぶきパートナー設立に当たっては、社長の英断が大きい。社長自ら養護学校などを視察し、そこで障害者と直接ふれあうことで、「仕事ができる喜び、働けることが幸せである」ということを強く感じ、社会的地位や名誉、お金などよりも、もっと大事な人としての原点を改めて感じ、理解したことが背景となっている。
現在、あなぶきパートナーで雇用している障害者は1名で、この他にトライアル雇用や職場実習などを受け入れている。障害者雇用に対する取り組みは始まったばかりという状態ではあるが、特例子会社認定を目指すとともに、将来的にはさらに多数の障害者を雇用すべく、さまざまな取り組みを行っている。

2. 取り組み事例
a.養護学校を訪問して感じたこと
- あなぶきパートナー設立にあたって、社長自らが養護学校における職場実習出陣・宣誓式に招待され、参列した。その場で、生徒たちを見て改めて気付いたことが多くあった。
- 生徒の目線で世の中を改めて見直すと、四苦八苦しながら利潤を追求するだけでは十分とはいえない。「仕事があるだけでも素晴らしい」ということに気付かされ、生徒たちの想いに共感することができた。
- 障害者雇用に関しての経験は皆無に等しく、さまざまな問題や不安もあったが、CSRの一環として、また、地域貢献という観点からも、障害者雇用に真剣に取り組むべきであると判断し、今回の取り組みが始まっている。
b.子会社設立に向けて
- 障害者雇用の子会社『あなぶきパートナー』設立に当たっては、社内でも賛成意見ばかりではなかった。障害者雇用は大切なことであるが、本社で雇用すればよく、何も子会社まで設立する必要がないという意見もあった。
- また、障害者雇用の経験もなく、実際の監督や指導をどのようにするのかなど、数多くの不安もあったほか、具体的に障害者にやってもらう業務をどのようにするのかなど、設立準備期間となった約1年間はさまざまな問題を解決していく時期ともなった。
- あなぶきパートナー設立への第一歩として、子会社へ出向させ、専任で業務に当たる職員の人選を行った。また、事業規模を拡大していくためにも専任1名では不十分なので、現場責任者とともに業務に当たる職員の人選も行った。
- この人選に当たっては、社員向けにアンケートを実施した。当初、どの程度希望者が出てくるか見当が付かなかったが、障害者雇用に興味のある従業員が予想以上にいることが分かったほか、社外ボランティアをしている従業員などもおり、新たな発見となった。
c.具体的業務について
- 現在、あなぶきパートナーで活躍している障害者は職場実習も含め3名という小規模であるため、業務についてもある程度限定的である。
- 主要業務として、午前中はグループ内企業周辺の清掃作業を行っている。監督スタッフ2名が手分けをして各現場に出向き、障害者を監督するほか、具体的作業については指導や補助なども行っている。
- 午後からは主としてオフィス内でダイレクトメールの発送作業や名刺などの作製作業等、軽作業にあたっている。障害者だけに作業を任せてしまうのではなく、監督スタッフも一緒に作業を行うことで、障害者の目線に立って作業の困難な点や指導のポイントなどを把握し、作業効率の改善に役立つようにしている。
- ・さまざまな業務を少人数でこなしているため、障害者にも分かりやすいよう、時間割を作成してスケジュール管理を行っている。また、休日なども把握しやすいよう、オフィス内にはカレンダーも掲示している。
d.雇用機会を広げていくために
- より多数の障害者を雇用したいと考えているが、そのためには業務の拡大が必須である。グループ内企業に幅広く声をかけるとともに、障害者のもつ能力を理解してもらうことで、少しでも業務の幅を広げるよう努力している。
- 現在、個人プレイ的業務が中心となっており、それぞれがスムーズに運んでいる。障害者個々人においては得意分野・不得意分野があるが、それを障害者同士が助け合って補っていくなど、良好な関係が築かれてきており、新規雇用をしても、職場に溶け込みやすい雰囲気作りができている。
- 将来的には農業などの分野を含め、さらに多角的に対応していきたいと考えている。特に、農業分野においてはグループ内にホテルも保有しているため、そこへの食材提供などを行うことで、直接消費者へ還元していくこともでき、障害者の社会参加(貢献)にもつながると考えている。
e.専門家との連携と自立支援
- 設立されてまだ数カ月という事業所であるため、養護学校の先生や施設のスタッフ、ジョブコーチなどとの連携を重要視している。
- 企業として個人の家庭にまで入り込んでいくことはできないが、ジョブコーチなどが事業所と家庭の橋渡し的役割も果たしてくれており、障害者のもつ悩みなども把握できている。
- 雇用障害者はいずれも若く、ゆっくり時間をかけて教育指導を行うことで作業内容等に対する理解を深めてくれている。今後、社会で自立していくためにも、一つ一つの作業を大切にし、きっちり身につけてもらえるよう配慮している。
- 賃金に関しても最低賃金はクリアしており、障害者の自立支援の一助ともなっている。

引き戸とスロープを設置し、車いすにも対応している

障害はハンディキャップとなっていない

地道な作業だが、丁寧に行っている。


施設からの応援も

箇所の清掃は、より慎重に行うよう指導
3. 全体としての評価
当事業所は設立されてまだ数カ月という若い事業所である。これまで、親会社においても障害者雇用がほとんど行われておらず、新しい観点や視点から障害者雇用に取り組んでいる。障害の有無にかかわらず、企業を進展させていくのはまずは人と考え、人と仕事のバランスに配慮しながら、日々の業務をこなしていっている段階である。
現在はグループ内企業からの業務を中心に行っている。徐々に実績を積み上げること、さらに障害者のもつ能力を理解してもらうことで、グループ内企業からの受注量や業務内容の拡張なども図ることができてきている。今後、特例子会社の認定を受けるためにも、さらに業務を拡張し、雇用できる障害者数を増やすことが課題と考えている。
知的障害者においては採用以前の段階から、職場実習やトライアル雇用などを通じて、障害者本人の適性を見極めている。障害者自身にも職場を体験してもらうことで、スムーズに職場に溶け込めるように配慮している。養護学校との連携も密であり、養護学校の先生にも実際の職場や職務を見学してもらうことで職場の雰囲気や職務内容を理解してもらい、職場環境により適した障害者を紹介してもらえるようにしている。ただ、毎月複数件数の照会はあるものの、なかなか雇用に結びついていないのも事実である。
障害者の教育指導には時間がかかるが、長い目で教えることによって、必ず業務を習得してくれる。また、グループ企業周辺の清掃作業などにもあたるため、色々な人と出会う機会も多い。人見知りをせず、みなから愛される人物であることも、業務を進めていく上では大切な要素である。
社長を中心として、企業全体が前向きに取り組んでいる現状下、問題も多々あるものの、人と人とのつながりを大切に、地域に貢献することを念頭に、障害者雇用の更なる発展に資していきたいと考えている。
※この内容は調査時点でのものであり、その後、本事例で取り上げられている「あなぶきパートナー株式会社」は平成21年2月3日、厚生労働大臣より特例子会社として認定を受けています。
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