創業以来、障害者雇用を継続し、今後も障害者の経済的自立に向け、地域雇用の場としての役割を果たしたい
- 事業所名
- 中村ソーイング株式会社
- 所在地
- 高知県四万十市
- 事業内容
- 衣服、その他繊維製品製造業
- 従業員数
- 111名
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 4 縫製・裁断・生地の管理 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 9 縫製・プレス作業・ボタン穴の目打ち作業 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
設立年次:昭和52年6月 | |
資本金:1,000万円 | |
従業員数:111名 | 知的障害者9名(重度1名) 聴覚障害者4名(重度2名) |
事業所・施設:中村工場、大用工場、竜串工場 | |
関連事業所:社会福祉法人高知県知的障害者育成会 福祉工場「中村」 |
中村ソーイング株式会社は、昭和52年6月1日、同和対策事業として創業を始めた。ワイシャツやブラウス、ユニフォームを専門とする縫製工場である。大手制服メーカーの協力会社として、全国約200校の制服や企業の制服等、年間25万点を製作している。高品質な製品づくりを通じて社会に貢献するとともに、創業当時から障害者の雇用に積極的に取り組んでいる。現在、中村工場のほか、大用工場、竜串工場がある。全従業員数は111名のうち、知的障害者9名(うち重度1名)、聴覚障害者4名(うち重度2名)が働いており、障害者職場定着率の高い会社である。多い時は30名ほどの障害者雇用があった。
制服、ユニフォーム、ブラウス、ビジネスシャツ、ドレスシャツなどの縫製を行っているが、シャツはパーツとともに作業工程も多く、工場によって分業化されており、大用工場では高級ドレスシャツの製造等も行っている。 最終仕上げは、四万十市具同にある知的障害者福祉工場「中村」で行っている。ここは平成14年3月まで中村ソーイングの「具同工場」だったが、知的障害者の自立を支援していくために高知県知的障害者育成会に建物、設備を無償贈与し、運営を移譲している。地域の障害者雇用に大きく貢献している。


2. 企業理念、障害者雇用についての認識
(1)企業理念「継続は力なり」
従業員には、体力、気力、知力を養おうと話している。物を縫っていく上で必要な事ではないか。小さなほころびが製品に出る。それが営業にも関わってくるので、製品だけではなく、小さなほころびを出さないように心がけている。
(2)障害者雇用についての認識
昭和52年の創業当時から障害者を雇用している。高知県立中村高等養護学校の進路担当の教員等と話し合いながら、毎年、春と秋に2年生、3年生の実習訓練を受け入れており、雇用につなげている。主に知的障害者で、個人の能力の差はあるが、少しでもレベルアップを図れるように指導していく。
3. 障害者雇用の取り組み
(1)施設・設備などハード面の工夫
雇用の中心は、知的障害者、聴覚障害者である。施設として、障害者の身体への軽減等、作業の効率化を図るために設備機器の更改など積極的に実施している。
(2)ソフト面の工夫
①雇用管理
<採用>
現在、働いている障害者は、高知県立中村高等養護学校の卒業生が主である。高等部の2年生、3年生を毎年、春と秋の2回、実習生として受け入れ、学校の進路担当者と話し合って雇用している。
<賃 金>
賃金は、障害者は最低賃金適用除外申請を行っている。3年に一度、仕事ぶりを見ながら賃金を見直し決定をしている。利益によって、決算賞与も支給している。
<労働時間>
勤務時間は、健常者と同じく、日勤者は8:20~17:15まで。正規、パートに分かれている。正規社員は雇用保険、社会保険に加入している。休憩は昼45分間、午後3時に10分間。学校の制服の縫製が多く、受注によっては休日が変則的になる場合もある。平日に休日をとるようにし、週40時間就労となるように調整している。


②職場配置
本人の個性、障害の程度に配慮しながら、適性を見極めた上で、それぞれの作業に配置している。軽作業で、ボタン操作による立体プレス作業、ミシン操作、目打ち作業、生地の管理、裁断などを受け持っている。「知的障害者の中には特殊な能力を持っている人もいて、中村工場には4桁の数字をすぐに覚える能力を持った子がいます。うちは生地の反物を扱う事が多く、その反物はほとんどが4桁なので、彼のその能力を生地の管理 に生かしてもらっています」と岡崎社長。
彼はその90%以上の製品ナンバーを記憶しているそうだ。入社26年目になる加用さんは目打ちの専門。「目打ちは位置を合わせるのが難しい。少しでもずれるとボタンがつけられなくなるので、気を抜くなと注意されています」という。定年まで働くつもりだ。
また、関連会社である福祉工場では主に仕上げのアイロン掛けをしているが、障害や特性に合わせてアイロン掛け作業も分業にしている。「自閉症の人はこだわりが強いので、少しの汚れやミスも許さない。そのこだわりを生かして最終チェック、検品を担当してもらっています。お互いに共存していく上で、自分たちも不良品を出さないように注意しています」と、山沖施設長はいう。



③教育・訓練
中村高等養護学校在学中に、ここで2年間、職場実習を受けているため、入社後、特別な教育や訓練は行っていない。上司や先輩から実際の作業を通じて教えていく。現在、働いている障害者は、勤務年数も長く、周囲も障害者意識がなく、コミュニケーションは上手く図られている。そのため、お互いの弱い部分、足りない部分をお互いにフォローする体制になっている。また、障害者の定着率が高く、高校卒業後、30年近く働いている従業員もいる。「みんな、辞めませんね、就労の場が少ないので、ここで頑張りなさいと話をします」と岡崎社長。
職場定着のために、障害者職場定着推進チームを設置している。その構成メンバーは、事業主、工場長、人事部 課長、現場指導員、職業生活相談員等5名である。また、職業生活相談員も4名選任している。「仕事を任せるところは任せていますが、やはり間違いもあるので、みんなである程度、注意して見守っていくようにしています。うちの場合は、創業以来ずっと障害者と一緒に働いていますので、とりたてて特別に何かをしなくても、見守るシステムが社員同士の中に自然に定着しています」と居本工場長。岡崎社長は、現在も社員と一緒にミシン掛けの仕事をしていて、従業員を引っ張って行っている。
④福利厚生・健康管理
福利厚生については、忘年会などを毎年行っており、障害者も全員参加している。健康管理については、年1回の法定の健康診断を実施している。
また、社会生活自立のために運転免許証の取得も奨励しサポートしている。
⑤地域との連携・交流
地域雇用の場として、信頼も厚い。知的障害者はそれぞれグループホーム、通勤寮から通勤している人が大半で、アパートで一人暮らしをしている人もいて、地域の人たちが日頃から温かい目で見守ってくれている。
⑥助成金や各種支援制度の活用
障害者雇用納付金制度に基づく、報奨金の受給をはじめ、様々な制度を活用し、障害者の雇用の促進や雇用の定着を図っている。障害者介助等助成金として、職業コンサルタントの配置または委嘱助成金、業務遂行援助者の配置助成金を受けている。また、障害者作業施設等助成金として、第一種作業施設設置等助成金を活用し、プレス機を導入し、障害者の身体への軽減や作業の効率化を図っている。県の設備投資に関する補助なども活用し、新しい作業機械の入れ替えやCADシステムの導入等を行っている。
(3)取り組みの効果
障害者の雇用継続のために何か特別なことがあるわけではない。労働条件、設備等は基本的には、障害者と健常者は全く同である。従って、就労することが本人に与える効果は「就労することで多くの刺激を受けて自身が更に成長すること」「経済的に自立すること」など、障害者であろうと健常者であろうと、全員同じである。


4. 今後の課題、展望等
かつて、8工場200名の従業員がいたが、現在は101名と減少。仕事自体も減少している。障害者雇用もそれに伴い停滞している。現在は飽和状態で、以前のように継続的な雇用は困難になってきている。しかし、障害者の地域雇用という面で、中村ソーイングが果たしている役割も大きく、これからも貢献していきたいという意欲がある。また、製品は各メーカーからの評価や信頼度が高く、「中村さんからの製品は納入後の検査も要らないと思えるほど品質がいいと言って下さる。不景気な時代ですが、従業員一丸となって信頼に応える仕事をしていきたい」という。現在、制服、ユニフォーム縫製の他、高級ドレスシャツの縫製需要も伸びており、新たなジャンルへ挑戦していこうとしている。
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