事業所名

医療法人社団温故会

所在地

福岡県直方市

事業内容

精神科医療に携わる病院や介護・医療・看護のサポートを実施し、家庭復帰を目指す介護老人保健施設の運営

従業員数

146名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	受付事務
内部障害	1	看護師として訪問看護
知的障害	2	清掃(施設内)
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの具体的な内容
4. 取り組みの効果
5. 今後の課題

事業所外観（介護老人保健施設・病院）

1． 事業所の概要

昭和31年に直方保養院として開業した温故会は52年の歴史を持つ。精神科・神経科・心療内科として地域医療に貢献してきた。そして、平成8年に介護老人保健施設すこやかをオープン。現在は介護老人保健施設、通所リハビリテーション、ケアプランセンター、ショートステイを併設している。さらに、平成21年4月から20人が入居できる高齢者専用賃貸住宅をオープンする。

病院の理念は、「わたしたちは、奉仕の精神を持って自己の技能と良心を病める方にささげます」である。具体的な基本方針としては、人権の尊重、知識や技術を研鑽、地域での貢献、信頼ある病院作りの4点を掲げ、職員全体で取り組んでいる。

温故会では、理念や方針に掲げているとおり、地域での役割を果たし、医療機関の中でも中核的な役割を持ち、医療福祉のプロとして患者や利用者のニーズに応えるために努力を続けてきた。

中でも、教育には力を入れており、採用した職員の新人教育はもちろんのこと、医療・介護系の専門学校や看護学校などの学生の実習を受け入れている。

それは、人を育てることが社会貢献となるというばかりではなく、人に指導できるということは、教える職員自身のレベルアップにもつながることだからである。実習指導者を養成し、全職種で 実習 指導が可能になることを目標にしている。

現在は140名以上の職員が働いているが、その多くがフルタイムで働いている。若い職員も増えて、平均年齢は約40.92歳である。

毎年、4月に職員を採用している。中途採用は行わない。以前は、退職者が出るたびに補充するという形式を取っていたが、中途での採用は新人教育も行いにくく、計画的に採用したほうが効率がよいと、3年前から切り替えた。医療や介護の仕事は良い人材を採用し、教育していくという方針である。

2． 障害者雇用の経緯

このように教育には力を入れてきたが、医療や介護の職場で、どのようにして障害者の雇用を進めていけばよいのかわからなかったし、障害者雇用率（法定雇用率）を満たせていないのが実情であったので、そのような状況を変えていきたい、社会的な責任を果たしたいと模索していた。事務の仕事であれば、障害を持っている人でも可能ではないかと考え、それが障害者雇用へのきっかけとなった。3年前のことである。

もともと、高齢者のための施設なのでバリアフリーには問題がない。段差もないし、廊下は車いすがすれ違える幅となっている。大きな改修は必要なかったが、実際に車いすを利用する人を採用することになり、使いづらいところを確認した。その結果、トイレを改修し、ドアも開けやすいように改修した。駐車場を確保し、車いすであっても仕事ができる環境が整った。現在では、他の職員となんらかわりなく、仕事に取り組んでいる。

3． 取り組みの具体的な内容

（1）障害者の状況に配慮した取り組み

肢体障害者の他に、内部障害者、知的障害者と雇用が進んでいる。内部障害者は訪問看護の仕事をしている。治療が必要な期間があったが、昼休みに必要な治療を行えるように、部屋の確保などの配慮をしていた。

知的障害者を採用するにあたっては、経験のない職場内ではとまどいがあった。しかし、ジョブコーチの指導のおかげで、順調に進んだ。挨拶は丁寧にできるし、仕事もしっかりこなせる。仕事の効率もだんだん上がっていった。本人たちも働きがいを持っているようである。

ジョブコーチは、障害者の適性把握、作業能率の向上、コミュニケーションのサポート、家族との連絡・連携、仕事内容・指導方法についての助言や提案等、障害者が安心して働けるように、また、事業所が安心して障害者を雇用できるように様々な支援を行っている。ジョブコーチの援助がなければ、どのように指導してよいのかもわからなかった。知的障害のある人は、一度にたくさんのことを覚えることはできないので、ジョブコーチは、時間をかけて仕事の流れを教えた。職場でも専用の清掃用具を準備したり、スムーズに仕事ができる環境を整えた。トライアル雇用の制度も利用した。その後、これまで外注していた清掃の仕事をまかせられるまでになった。

本人たちも仕事への意欲が高まっている。働くことは収入へとつながる。しっかり働けば収入が増えるという喜びも働き甲斐へとつながっているようである。何かあればジョブコーチに相談し、引続き指導をしていただいている。

（2）コミュニケーションの対応

社内で忘年会や旅行を企画することがある。障害のある職員がいなかったころは、特に気にしていなかったが、今では、企画段階で、車いすでも利用できるかどうか、必ず確認するようになった。行き先だけではなく、途中に車いすでも利用できるトイレがあるか、また、駐車場が確保できるかどうか、全員が参加できるように、世話役となった職員は配慮するようになっている。外に出ると、食事する場所ひとつとっても障害のある人には不便である。いろいろな企画をするときに、職員が障害ある人の目線で、考えられるようになったことが変化であると言える。

（3）取り組みのまとめ

現在は4名の障害者が働いている。障害者雇用に取り組んで以来、さらに働きやすい環境作りが進んだ。また援助が必要な場合が生じたときにはジョブコーチの制度を活用できるので、今後もこういった制度を利用していければ、様々な対応ができると思われる。

事務所内

対象者の就業状況

障害者専用トイレ(車いす対応)

4． 取り組みの効果

実際に雇用するまで、障害のある人と接する機会がなく、接し方もよくわからない状態だったが、多くの職員の思い込みが解消された。障害者との距離が近くなった。一番大きく変わったことは、障害者を特別扱いしなくなったことである。

障害のある人も一生懸命仕事をして成果を上げているし、職員間の思いやりもさらに深まり、よい職場環境になっている。

また、仕事の効率も上がっている。最初採用した3人の知的障害者のうち1名が辞めることになり、そのあと仕事がまわるかどうか心配もしたが、あとの2人が働く時間を延長して仕事をこなし、もともとは外注していた仕事を効率よくこなせるようになった。

5． 今後の課題

身体が不自由でも、できる仕事はある。今後も事業内容に照らしあわせて、障害者を雇用できる機会があれば、前向きに検討したいとのことである。障害を持つということは、私たちの未来の姿である。高齢になると誰でも身体が弱ったり、いろいろな障害を持ったりするようになる。障害者と向き合うことは、未来の自分自身と向き合うことでもある。

法人としては、高齢者専用賃貸住宅のオープンで、医療・介護・住まいの問題に取り組んでいくことになる。よい人材は積極的に活用し、理念を心に、さらなる目標を持って、社会貢献していかれることを期待する。