事業所名

株式会社  八仙閣

所在地

福岡県福岡市

事業内容

中華料理店・中華レストランやウェディングサロン・ブライダル等の運営

従業員数

230名

うち障害者数

6名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	清掃
肢体不自由	2	調理、ポップの作成
内部障害	0
知的障害	3	調理補助、配膳
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組みの具体的な内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の課題

事業所外観

1． 事業所の概要、障害者雇用の経緯

昭和42年創業の八仙閣は、福岡県では馴染みの深い中華料理専門店である。日本人に愛される中華料理をめざし、現在では福岡県内に9店舗を持つ。本格中華料理店の他、中華レストラン、ウェディングサロン等を運営している。

会社の方針の中には、「地域への貢献」がある。お客様に感謝し、誇りをもって働き、そして地域に貢献するという方針は、先代社長からずっと受け継がれてきた。

会社として、「企業は社会的責任を果たさなければならない。では、企業として地域へ貢献するために何ができるのか」と考えていたが、「障害者にも活躍の場を」という社長の考えのもと、障害者雇用を進めることになった。

しかし、障害者雇用を進めるといっても、実際にはどのような仕事ができるのか、サポートはどのようにすればよいのか、職場でのコミュニケーションは取れるのかなど、何をどのように進めればよいのか模索している状態であった。そのようなとき、就労支援センターの協力があり、障害者を職場体験実習生として受け入れるところから始めることになった。

障害者雇用へと踏み出せたのには、ジョブコーチ支援制度を知ったことによる。ジョブコーチ支援制度では、きめ細やかな専門家ならではのサポートがあり、障害者にとっても、会社にとっても大変よい制度であった。ジョブコーチの献身的なサポートを知って、これなら雇用を継続していけるのではないかと考えるようになった。

最初に実習生として受け入れたのは、聴覚障害者の方だった。さまざまな不安はあった。とりわけ、コミュニケーションの取り方が心配だったが、筆談などでコミュニケーションが取れ、本人の積極的な気持ちもあって、館内の清掃の業務で力を発揮してもらっている。

次に精神障害者を受け入れることになった。社内では経験もなく、どのように対応してよいのか心配だったが、ジョブコーチに支えられた。

このように最初は不安に思っていた障害者雇用であったが、ジョブコーチの力を借りながら徐々に推進していった。ジョブコーチには、今も適切なサポートをしていただいている。

2． 取り組みの具体的な内容

（1）障害者の状況に配慮した取り組み

現在、6名の障害者がそれぞれの業務で力を発揮している。肢体障害者の方はポップ制作の仕事に携わっている。パソコンでデザインし、ポップを作成する仕事である。肢体に障害があるので、階段の上り下りが困難である。そのために、一般の従業員は使用できない顧客用のエレベータを使えるようにするなどの配慮をしている。また、両手で操作しなければならない機械を取り扱う場合、同僚が援助するなど、助け合って仕事をする体制ができている。

知的障害者を採用するにあたっては、経験のない職場内ではとまどいがあった。しかし、ジョブコーチの指導のおかげもあり、理解が進んでいった。

勤務時間については、4時間、6時間などの短時間勤務としている。ジョブコーチのアドバイスを受けながら、短時間勤務から、無理のないように少しずつ時間を延長するようにしている。

ポップ作成の様子

調理作業の様子

配膳室の様子

（2）コミュニケーションの対応

当初はコミュニケーションの取り方が心配されたが、現在では、特に、障害者と他の従業員を区別することなく、助け合う体制ができている。

従業員の中で声を掛け合うということが自然にできるようになった。また、障害の状態によっては、いろいろな人が声をかけすぎると、本人の負担になることもある。そういった個別の事情があるということも理解できるようになって、お互いに仕事の仲間として、必要な援助ができるようになってきた。

また、障害者雇用にあたっては、家族とのコミュニケーションも大切である。ある障害のある従業員が会社でほとんど食事をしないということがあり、まわりの従業員は大変心配したが、家族に状況を聞くことでその理由がわかり、心配が解消できたということもある。家族とはしっかり連絡をとり、何かあればすぐに対応できるように配慮している。

重度の障害者には、サポートスタッフをつけている。職場でのサポート者が複数いると、混乱してしまうので、選任されたサポートスタッフが自分の仕事をしながら、障害者自身の仕事もサポートしている。いつも同じ指導者から援助があるため、障害者自身が安定して仕事をすることができている。

健常者であれば可能なことも、その障害のためにできないということがある。「根気よく指導してほしい」と職場のメンバーには理解を求めている。現在では、みんなで支え合える職場づくりができている。

（3）取り組みのまとめ

このように取り組みを進めてきたが、すべて順調にことが運んだわけではない。採用にいたらなかったこともあるし、残念ながら1名が退職した。

退職となったケースは、仕事にも慣れてきたので、勤務時間を30分変更することにしたことが原因だったようである。障害によっては、毎日のリズムが少しでも違うと対応できないことがあり、他の従業員にはなんでもないようなことが負担になっていたようだ。まじめな仕事ぶりだったので、退職となってしまったことは残念である。コミュニケーションの大切さを痛感したできごとだった。

3． 取り組みの効果

現在は、各部署で障害のある従業員が働いている。同じ部署に重なると、時として支える従業員の負担になることもある。しかし、現在はバランスのよい配置となっているので、支える従業員も無理なく気持ちよく支えられる。

コミュニケーションと同様、社内での障害者雇用に対する理解を深めることも大切である。社内では障害者雇用については、ミーティングなどで理解を求めるようにしている。なぜ、障害のある人の雇用が大切なことなのかを伝え、従業員全体で協力しようという気持ちを育てている。やはりトップである社長が強い意志を持ち「障害のある人たちと働く大切さ」を語っているので、従業員にもしっかり伝わっているようである。

障害のある従業員が、明るく積極的に働く姿は、職場を明るくしてくれる。思いやりの心も芽生え、会社全体に良い影響を与えていると思われる。

4． 今後の課題

障害者雇用は人員配置のできる本社に限られている。他の店舗でも雇用が進むとよいのだが、店舗では正社員数が少なく、アルバイト・パートが多いため、十分な対応ができる体制にまでは至っていない。

現在は、障害を有する6名の従業員は、自分の持ち場で自分の仕事に精一杯励んでいる。今後も実習生を受け入れ、必要な人材を雇用していきたいと考えている。それが、地域社会への貢献になると考えている。会社では、これまでどおり「長い目で見守る」という姿勢のもとに、障害者雇用を途切れることなく継続していきたいと考えている。企業には社会貢献・地域貢献という役割がある。障害のある人の雇用を通じて、今後も地域に貢献していくことが、会社としての目標であるとも言える。