事業所名

特定非営利活動法人たすけあい佐賀

所在地

佐賀県佐賀市

事業内容

訪問介護、通所介護、居宅介護支援事業、託老所、託児所等の運営

従業員数

68名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	4	介護補助、洗濯・掃除、食事の準備・後片付け
精神障害	1	介護補助、洗濯・掃除、食事の準備・後片付け

目次

1. 事業所の概要
2. 取り組みの経緯、背景
3. 取り組みの内容、効果
4. 今後の課題・展望

1． 事業所の概要

（1）沿革

平成6年5月、ふくし生協佐賀準備会を設立。「困ったときはお互い様」をモットーに、子ども、障害者、お年寄りの生活上の困ったことに市民の立場でお互いに助け合うため、会員を募集しボランティア活動として事業を開始する。

平成11年11月、NPO法人「たすけあい佐賀」を設立、宅老所「ながせ」を開所し24時間対応のサービスを開始する。平成12年、介護保険制度が施行され、通所介護サービス事業所としての指定を受ける。その後、宅老所は7ケ所、知的障害者のグループホーム2ケ所、障害児の児童デイサービス事業等、地域の様々な福祉ニーズに応えて事業展開を図り現在に至っている。

障害者雇用については、平成17年9月、知的障害者施設から雇用要請を受けて採用して以来、採用を続け、平成20年8月現在、5名を雇用している。

（2）従業員数  68名  うち障害者5名（平成20年8月11日現在）

（  ）内は重度障害者

（3）事業内容

訪問介護、通所介護、居宅介護支援事業、宅老所、託児所等の運営

2． 取り組みの経緯、背景

従業員数は68人、そのうち障害者の雇用数は5名（うち重度障害者3名）で、雇用率は11.76％となっている。障害者雇用は、平成17年9月より、知的障害者を雇用したことから始まる。障害者施設からの依頼により、職場実習を受け入れたところ、実習態度や仕事の習熟度等が良好であったため雇用した。

その後、3級ヘルパー講習を受講した知的障害者を4名雇用し、現在5名の障害者が宅老所で働いている。また、現在も2名、ハローワークから職場実習を受け入れており、9月から常用雇用の予定である。

このような障害者雇用が進んだ背景には、高齢者や障害者支援、子育て支援等、「困ったときはお互い様」をキャッチフレーズとして活動し、地域の中で支えあいの市民活動を続けてきた「たすけあい佐賀」にとっては、自然な成行きだったといえる。また、「たすけあい佐賀」の事業内容が対人福祉サービスであるため、介護補助業務や食事作りの準備や後片付け、掃除・洗濯等、障害者の能力や障害の状況に応じた作業過程が継続的、かつ、安定的に存在していたことなどが、その要因と考えられる。

障害の種別では知的障害者の雇用が4名と最も多い。これは、職場実習を実施することで職場での作業環境への適応性や、作業工程への適性を見定めることができることや、真面目に一生懸命作業に取り組む姿勢が評価されたためと考えられる。

3． 取り組みの内容、効果

（1）障害者雇用の取り組み

知的障害者との関りは、知的障害者の福祉工場を作るということで県内から知的障害者を募集することになり、そこで働く者の生活の場がないという県からの相談を受けて、宅老所の2階にグループホームを設置したことに始まる。また、同時に、佐賀県が単独事業として小規模グループホーム事業を行うことになり、宅老所の2階の一室を提供し、2名の知的障害者を受け入れた。

現在4名の知的障害者と、1名の精神障害者が5ケ所の宅老所にてそれぞれ働いており、介護の補助や掃除・洗濯・除草等の環境整備、食事の準備の補助的業務や、後片付け等の業務を任っている。

障害者5名のうち、3名は重度の知的障害者でもあるため、自主的に仕事の時間配分を行う、その場の状況判断を一人で行うことは難しいため、障害者個々の理解力や作業能力に応じて、具体的な作業の指示や声かけをこまめに行っている。

また、障害者就労支援機関とも連携し、障害者個人の特性や能力に応じた作業工程の工夫や、作業能力向上のための協議や検討も継続的に実施している。

宅老所「ながせ」食事作りの準備

宅老所「鹿の子」除草作業

宅老所「絆」庭の掃除及び除草作業

1階が宅老所絆で2階がグループホームになっている

地域共生ステーション「ぬくもいホーム大野原」配膳準備作業

（2）雇用の効果

障害者の働く場が宅老所という家庭的な環境であるため、他の職員や利用者と自然に関りながら仕事を行うことも多い。特に、お年寄りと波長が合うようで、お年寄りに優しい面が見受けられる。

知的障害者の場合は、作業工程の適性を検討し、指導体制をとっていても、作業効率という視点からみれば他の従業員と必ずしも同じではない。しかし、欠勤をしないことはもちろん、就業時間より前に来て働く準備をしたり、仕事に対する一生懸命さや、決められたことをきちんと守るという真面目な勤務態度は、職場全体に良い影響を与えている。

（3）生活面での支援

障害者は宅老所ごとに働いており、責任者が配置されているため、仕事に関することだけでなく生活面についても相談ができ、細やかな配慮がなされている。また、不定期ではあるがボーリング大会やカラオケ等、職員と一緒に参加したりしている。時には落ち込んだりすることもあるので、その時は職員が気をつけてコミュニケーションを取るようにしている。

法人として、特別に生活面での支援というのは講じられてはいないが、家族の理解や協力は欠かせないため、障害者の家庭との連絡は随時行っている。また、仕事が休みの時、余暇利用を自主的に行うことは難しいため、ショッピングや病院への通院補助、お墓参りなど、随時生活面の支援は行っている。

知的障害者施設や養護学校、佐賀県高齢・障害者雇用支援協会等関係機関とは、必要に応じて連絡調整ができる体制がとられており緊密な連携が取れている。特に、知的障害者の雇用が多いことから、知的障害者施設との関係は緊密になされている。

4． 今後の課題・展望

最近、障害者の施設生活から地域生活への移行が課題となっており、それを推進するために、関係機関からの就労支援や、障害者施設、養護学校等から新規雇用の要請が多く寄せられている。このような状況の中「たすけあい佐賀」では、1宅老所1名の障害者雇用を目標に9月より2名の知的障害者を新規雇用し、7ケ所の宅老所で障害者の雇用がなされることになる。

宅老所の1階が働く場で2階が生活の場としてのグループホームという形態は、知的障害者の雇用形態としては、生活支援もトータルで可能となることから障害者の地域生活の成功例となりうるものと考えられる。また、佐賀県が独自の施策として推進している、小規模グループホーム事業は、宅老所では、比較的スムーズに受け入れが可能であり、就労の場としても適しているため、県下70ケ所の宅老所において、障害者雇用が進展していくことが望まれる。その意味で、「たすけあい佐賀」の障害者雇用の取り組みは、一つのモデル事例となりうるものであった。