事業所名

株式会社荏原九州

所在地

熊本県玉名郡

事業内容

開発・製造・販売するウエハ平坦化装置に代表される大型半導体製造装置の製造・据付・試運転業務

従業員数

156名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	1	コンピューター・インフラの整備
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 取り組みの概要
3. まとめ

事業所外観

1． 事業所の概要

（1）事業の概要

株式会社荏原製作所の100%子会社である。荏原製作所の精密、電子事業カンパニーで開発・製造・販売する大型半導体製造装置の製造・据付・試運転業務を担当している。ウエハ平坦化装置（CMP装置）に代表される大型半導体製造装置が主力製品である。受注はすべて荏原製作所からであり、最終納品先は国内および海外の半導体メーカーである。

（2）現在の業況と今後の展開

これまでは非常に好調だったのだが、今後は難しいのではないかと言われる。というのも、今は、北京オリンピック効果で家電の需要が期待されること等から、半導体そのものの需要が増えはしても減りはしないと思われるが、他方、国内景気が伸び悩み、ガソリン価格の高騰による消費行動が抑制される動きがみられる。

このようなことから、半導体メーカーの設備投資需要についても明るい見通しばかりでは語れない。これまでは右肩上がりできたのだが、今年の下半期はすこし下がってくるのではないかという囁きも聞かれる。

（3）採用の状況

採用については、親会社の方針に基づき、求人活動を実施している。採用は毎年定期的に実施しており、ほとんどが九州圏内からの採用である。熊本を中心に、九州各県の高専、大学、大学院に求人票を出している。

2． 取り組みの概要

（1）障害者の現状と従事業務

現在、雇用している障害者は1名である。障害の内容は内部障害の1級で、心臓に疾患を持っている。幼い頃から心臓に疾患を持っており、激しい運動はできないが、通常の生活や仕事には支障がないとのことである。ペースメーカー等の器具も使用していない。

社内での朝のラジオ体操も行っているし、昼休みには仲間とキャッチボールもやっている。日常の生活では、特に不安を感じるようなところはないように思われる。なお、公共交通機関での通勤が不可能なため全員がマイカー通勤をしている。当人も通勤は自家用車で、40分程度かけて通っている。

配属されているのは情報課で、主な業務として、社内のコンピューター・インフラの整備や、トラブル対応を行っている。機械を動かすためのプログラム開発ではなく、社内システムのメンテナンスなどを担当する部署である。

当該部署には、これまで2名配置されていたが、今回当人が配置されて3名の適正人員になったというところである。まだ入社して3カ月ではあるが、業務も順調にこなしているようである。

また、当社屋は3階建てだが、情報課は1階に位置し、業務では2階や3階に上がることは殆どない。社内メールでの連絡とあとはデスクワークが主であり、身体的な負担は非常に小さいといえる。

社内の様子

（2）障害者雇用の経緯

当社にとっては、彼が初めての障害者雇用の事例である。今年の4月、地元から採用したばかりである。普通高校を卒業したあと、歯科技工士の専門学校へ進んだが就職できず、地元公共職業安定所から福岡の障害者職業能力開発校（北九州市）を紹介された。そこで情報関係の勉強をした上で、今年の3月に卒業し、地元公共職業安定所の紹介で当社へ入社したのである。

但し、入社する前に当社との出会いはあった。彼は、昨年の8月に障害者職業能力開発校からのインターンシップ制度により当社で体験実習を経験している。インターンシップは、地元公共職業安定所からの紹介で行われたもので、期間は約1ヶ月間である。現在配属されている部署で実習し、会社の雰囲気も、仕事の内容も知ってもらった。

インターンシップを受け入れた時のことだが、当社としても障害者の受け入れは初めてであり、社内では本当に大丈夫だろうかという不安もあった。しかし、公共職業安定所の担当も心臓疾患であり、激しい運動はできないことを指摘した以外、あとは本人と話し合って決めていけばよいという程度で、特に条件的・制限的な話はなかった。また、本人との相談でも、特別な配慮が必要との話はなかったものの、当社の仕事がデスクワーク中心であったことが、本人のニーズに合った職種であったといえる。当初は不安もあったが、結果的にはスムーズに進行したといえるだろう。

もっとも、残業は体力的・身体的な負担ともなるだろうと思い、残業はさせないように配慮している。

（3）安心して働くことができる職場環境

日常の生活や仕事に大きな支障があるわけではなく、もちろん、車いすその他の器具を使用するわけでもない。また、仕事内容も特に社内を頻繁に移動するといったこともなく、重いものを抱えるといった場面もない。

但し、突然症状が悪化するといったこともあり得るので、一人きりにはならないように気は配ってある。また、当人の机の前には上司が座っている。何かがあれば誰かが気づく環境をとられている。

定期的な病院での健診は必要であるが、特に、平日にそのための時間を設けるといったことは行っていない。当社は、完全週休2日制であり、3カ月に1度の定期健康診断は土曜日を利用すれば十分だからである。

また、産業医による入社時の健診、そして月1回の面談を行っており、特に、その結果に問題はないとの意見をもらっている。産業医とは頻繁に情報交換し、医学的なチェックを怠らないようにしている。

（4）本人・周囲の合意の重要性

内部障害のために、外見ではまったく障害があるとは分からない。そこで、社内のどこまで知らせておくべきかという問題が生じた。プライバシーにふれることでもあり、知らなくてよい従業員にまで知らせる必要はないだろうという考え方もできるが、しかし一方、突発的な症状悪化もあり得るのであるから、やはり一定の従業員には知らせておくべきだろうという考えもある。

当社が取った方法は、上司とまわりのスタッフには知らせる。それも、どの範囲までにするのか、本人と話をした上で知らせる、というものであった。“制度”として全社化してしまうのも無理があるし、かといって“気配り”という個人の意識のみに責任を負わせるわけにもいかない。本人との合意のもとで、安心して働ける環境を作っていくことが重要であろうと考えるのである。

（5）関係機関担当者の役割の重要性

今回、インターンシップの実施と求人の方法については、公共職業安定所の障害者雇用促進の担当者がとても熱心に勧めてこられた。当初、不安を感じながらも、初めての障害者雇用がスムーズに実現した背景には、このような関係者の働きがあったのである。公共職業安定所の担当者は、北九州の障害者職業能力開発校にも出向き、先生とも情報交換されていたようである。

また、先日、その障害者職業能力開発校の担当者が、直接来所し、本人にも面談した。公共職業安定所と障害者職業能力開発校との連携によるバックアップ体制がしっかりとしていたことも、安心して採用することができた理由のひとつである。

3． まとめ

2000年に社屋を建設する際、いわゆるバリアフリーの社屋を採用している。フロアーはフラットで、車いすでの利用がしやすいように通路も広く、トイレやエレベータなどの設備も気配りのある設計になっている。つまり、障害者でも利用しやすく、共に働ける職場を意識した建築を行ったのである。

しかし、実際に障害者の雇用を行ったのは、今回が初めてである。たとえ環境を準備したとしても、関係者や本人との出会いや関係機関による連携などがなければ、初めの一歩を進めることができないだろう。実はこのことは、健常者の採用でも同じことがいえる。優秀な人材があっても、タイミングが合わなければ採用にはつながらない。関係機関との連携の重要性とその担当者の努力の大切さを改めて認識するものである。