多様性を認める企業文化と障害者雇用
- 事業所名
- 富士ゼロックス熊本株式会社
- 所在地
- 熊本県熊本市
- 事業内容
- 各種OA機器の販売、ネットワークシステムの提案及び販売並びにアフターサービスの提供
- 従業員数
- 183名
- うち障害者数
- 1名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 1 営業推進課(社内文書の整理・作成、情報連絡、社内報の作成等) 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
(1)事業の概要
主な事業は、富士ゼロックスのデジタル複合機、デジタルフルカラー複写機、各主要メーカーパソコン、プリンター、その他各種OA機器、ネットワークシステムの提案および販売並びにアフターサービスの実施である。
以前は、単体製品を販売さえすればよかったのだが、デジタル時代、ネットワーク時代へと環境が変化し,当社の業務内容にも変化が求められるようになった。
企業のオフィスは外部とネットワークで結ばれ、社内はLANによってネットワーク化されている。販売する複合機も、最近はコンピュータ機能が搭載され、これまでのようにコピー、ファックス、スキャナーといった単体機能だけではなく、サーバー機能が求められるようになってきた。
つまり、異なるメーカーの機器やパソコンと連結して、コントロールできなければならない。以前のように、メーカーが違うので互換性がないということでは済まなくなってきている。しかも、24時間365日体制で対応しなければならない。トラブルが発生した時に、異なるメーカー、異なる機種、あるいはネットワークシステムのどの部分が原因なのかをいち早く突き止め解決することが要求される。
(2)現在の業況と今後の展開
当社のような事務機器業界は、これまで長い間、好不況に影響されにくいと言われてきたが、昨今は経済環境の変化に伴って明るい話ばかりではなくなっている。お客様である企業におけるコスト削減意識が高まっており、これまで5年目で更新していた機器を6年間使いたいとか、あるいはこれまで100万円していた機器は、機能を高度化しても70~80万円で購入したいといった要望が多くなってきたので、より高機能な製品を購入していただくとか、新たな機器を合わせて購入していただくとか、販売方法の工夫をしていかなければならない。さらに、お客様に購入したくなっていただくためには、お客さまの仕事の内容について、より深く掘り、仕事上の問題を解決可能にする提案を行っていく必要がある。それが、直ぐに販売につながればありがたいし、そうでなくても、長く続く信頼関係を構築できれば1年後、2年後の販売につながっていく。
目先の売上ではなく、長期的な信頼関係をつくることを目指し、そのためのソリューション力を高めて行く方向へ仕事の考え方が変化しているという。
(3)採用の状況
毎年、新卒中心に定期採用を行っている。以前は20名程採用していたが、近年は3~4名程へと減少している。今後は、グループ全体の方針としてさらに採用を抑制する方向にあるという。
(4)人材に求められるもの
取引企業に対して提案する力が求められ、以前のように製品の知識だけあれば良いという考え方は全く通用しなくなっている。お客様の仕事内容に関心を持ち、どこに可能性があり、どこに問題があるのか、そこまで入って行けるかどうかが求められているという。
技術者も故障を直すだけでは当たり前で、さらに高度なサービスを付加できないかを考えなければならない。専門的なスキルだけではなく、より広い視野や柔軟な発想力が求められるのである。
このように仕事への考え方が変化し高度化すると、人材育成が非常に重要なテーマとなる。その際、1人1人の能力を高めていくのも大切だが、チームワーク力を高めていくことも大切である。
1人でオールマイティにできても限度がある。ある専門領域は詳しいが、それ以外は不得手だという人がほとんどだろう。そこで、得意分野を持った各人たちのチームワークによってお客様の課題解決に取り組み、付加価値を付けていこうということである。
そのため、チームワークやコラボレーションの能力が求められるし、お客様のニーズをうまく聞き出すヒアリングやコミュニケーションの能力も大切である。以前は、採用にあたってもバイタリティや行動力が高く評価されていたが、やる気と体力だけではダメな時代になってきたのである。
(5)人材育成
OJTは基本的な人材育成手法だが、指導する上司や先輩の能力次第だというリスクがある。指導するのが上手い上司がいる部署では人が育ち、指導が苦手な上司がいる部署では人が育たないのでは困る。そこで、管理職のマネジメント能力をいかに高めるのかが重要になってきている。
管理職は人材育成のプロで有る必要があるが、必ずしもそうとはいえない。だからマネジメント能力が低い管理職にはスキルアップの教育を行う。それでも、どうしても指導は苦手だという人には部下を持たせないことも必要になってくる。人材育成が苦手であれば違う分野でのプロになってもらえればいい。管理職の人事評価において多面的な評価を行い、それぞれが学ぶべきスキルや課題の明確化を図っている。上司が部下の業績評価をすることは一般的に行われているが、部下が上司を評価したり、他のセクションのスタッフが隣の部署の管理職を評価したりするのである。このような多面評価により、業績の達成度は高いが他部署からの評価が良くないとか、結果は出すがそのプロセスが良くないとか。このように、多面評価を何期かつづけていくと、現状の管理者能力がはっきり見えてくる。それを基に個別ヒアリングを行うと伴に指導をしているという。
2. 取り組みの概要
(1)障害者の現状と従事業務
現在、雇用している障害者は1名で、気管支に疾病を持っている。酸素経鼻チューブを使用しているために簡易型ボンベを携行しており、移動に多少の不便はあるものの業務に支障はない。
所属部署は、毎日、各部署や各スタッフに情報や通知を配信することを業務とし、営業の後方支援を行う営業推進課である。従事している業務は、パソコンを使っての社内文書の整理・作成や情報連絡及び社内報を作成といったものである。
本人は、もともとパソコンを使い、電子文書の作成をすることが得意らしく、この部署への配置は適切であったと思われる。
(2)施設環境の状況
キャスター式の簡易型ボンベを携行しているので、駐車場は遠くまで歩かないですむように、社屋に近い場所にするという配慮をしている。事務所の1階から2階への移動またその逆の移動についてはエレベーターを利用できるので問題はないが、階段の昇り降りも特に支障はないようである。
(3)障害者雇用の経緯
入社は本年4月である。新卒入社組と同時入社で、新人研修もほとんど一緒に受けた。
雇用のきっかけは、まず昨年11月にハローワーク等関係機関の主催の障害者合同就職面接会が熊本市内のホテルで開催され、それに参加したことによる。
障害者雇用を行うのは今回が初めてではないが、ここ数年間、障害者雇用が無く、なんとかしなければとの思いがあったところにこの面接会を紹介されたのである。
どのような人と接点が持てるのか、とりあえず参加してみようとブース出展を決めたところ、当社のブースに多くの人が面談に来てくれた。その時に、合いそうだと思った数名に後日連絡をし、改めて面接を行い、1名に絞って採用に至った。
(4)関係機関のサポート
今回、安心して雇用を行うことができたのには、関係機関からのアドバイスを得られたのが大きかった。採用にあたって会社としてどのような準備をしておくべきか、どのような配慮が必要かなど、不安に思うことを事前に解決しておくことができたことである。事前に本人と話をするのはもちろんだが、関係機関からもサポートが得られることを今回改めて知ることができた。
ハローワークからもアドバイスをもらったが、本人が学んでいた職業能力訓練校から「どのような分野が得意なのか」や「こういう技術は学んでいるが、こういう知識はまだ浅い」といったアドバイスをもらうことができた。このような情報はとても参考になり、どのような部署でどんな仕事をしてもらうかを考える上での貴重な資料となった。
障害者雇用の斡旋の場を作るということだけではなく、個別に「この人の場合は、こういう能力があって、こういう配慮が必要だ」といったアドバイスがあったことで、意思決定がとてもしやすくなった。また、事前にお互いに情報を知り、準備をすることで入社後もスムーズに就労できる。このような点からも、サポート体制が整っていることはよいことだという。
(5)社内のコミュニケーション
今回の雇用にあたっては、事前に関係部署のスタッフに話をし、無用な緊張をしないように、あるいは互いに慣れるまでの時間を短くするような環境づくりを心がけた。
だからといって、特に何かをしたかというとそうではなく、互いに知り合うということを前倒しにしたということなのだが。しかし、本人自身もコミュニケーション能力が高く、予想よりも早く会社やまわりのスタッフに慣れることができたようだ。
また、内勤の部署であり、所属長やまわりのスタッフが常時近くにいるほか、総務部のスタッフも時々声をかけるなどして、コミュニケーションを図っている。

3. まとめ(個人の多様性を認める職場環境)
障害者雇用をする以前の健常者ばかりの職場になにも問題がないかといえば、そうではなく問題ばかりである。本来、職場とはそのようなものだろう。疾病や怪我といった障害はなくても、性格の問題等はどこにでもある。だからこそ、どこの職場でも社内教育をやっているのだろう。
また、障害の有無だけではなく、いろんな個性や能力を持った人々がチームを組み、あるいはコラボレーションして目標の達成に取り組んでいくことが、企業の成長にも繋がっていくのではないかと考えている。
当社ではそれを「多様性」と呼び、重要に考えている。性別が異なり、年齢が異なり、価値観が異なり、能力が異なる。でも、違いがあっていいじゃないかと。この部分はあなたが得意だね、この部分は自分が一番できる。そうやってそれぞれの得意とする分野を組み合わせていく。1人のスーパーマンにみんながぶら下がるのではダメなのである。
このような考え方は、ゼロックスグループ全体が共通して掲げているミッション・ステイトメント(私たちが目指すもの)の中でも「多様性の尊重」として挙げられている。多様性とは、人種や民族といったグローバルな差異から性格や能力などの異なることを意味しているが、そのような差異を排除するのではなく、いろんな違いがあることを事実として認めながら、どのようにやればチームとして最大限のパワーが発揮できるのかを考えようというものである。そのような考え方を持てば、自然と発想が変わってくる。
また、そこには自ずと「やさしさ」や「支え合い」が生まれる。「やさしさ」や「支え合い」がなければ、そんなことはできないのである。
障害者雇用もまた、人の多様性を認め合う企業文化の中で自然に行われ、さらなる企業文化の成熟に寄与していくものでありたい。当社ではそのように考えられている。
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