事業所名

小野建株式会社

所在地

大分県大分市

事業内容

「鉄」と「建材」の流通商社で、鋼材・土木建築資材の卸売業

従業員数

355名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	一般事務
内部障害	1	営業事務
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・経営理念
2. 障害者雇用の経緯、背景
3. 障害者の従事している具体的な作業内容や配置等
4. 取り組みの具体的な内容、効果

事業所外観

1． 事業所の概要・経営理念

商社はつねにユーザーに忠実であれ、という基本を忘れず、業界の前例に縛られない柔軟な経営戦略を貫き、これまで三期に亘る転機を見事にクリアーし、急激に成長・発展し全国展開してきた鋼材・建築資材の流通商社である。

小野建の創業は大正15年、金物商としてスタートし、昭和24年株式会社小野建材社を創業の地・大分市に設立した。小野建発展の第一の転機は、「もはや戦後ではない」と言われた昭和30年代前半、鉄の町・北九州小倉に支店を開設し、鉄鋼商品の販売を本格化したときにある。当時、北九州には鉄鋼を扱う商社が数多く存在しており、後発の小野建は大きく遅れての出船であった。そこで当初は発生品、いわば「鉄のアウトレット商品」から取り扱いを開始し、アングル1本、鋼板1枚といった小口注文にもきめ細かく対応。「顧客第一」の姿勢で着実に信頼を築きながら取扱商品の幅を広げ、今に続く事業基盤を固めていった。第二の転機は、昭和58年大阪進出を機に、業界に先駆けた鉄鋼商品の輸入取扱いを開始した時である。当時、国内メーカーが強力な生産体制を整えており、輸入はタブー視されていたが、先見性をもって台湾、中国、東欧、オーストラリア、南米と、世界中に鋼材調達のネットワークを構築した。鉄はいまや国際相場商品である。状況に応じて安くて安心の鋼材を提供できる柔軟な供給体制はこのときに基盤が構築された。第三の転機は、平成7年東京支店を拠点に東日本への進出の時である。大口ストックヤードを背景に大口小口を問わずきめ細かく需要に対応する「スーパーマーケット型」の事業展開を確立した。

発展一途の小野建の経営理念を問うた。即座に「存在感」と言うことばが返ってきた。ユーザーにとっても、メーカーにとっても「存在感ある企業」であることが、創業以来一貫して守り抜いている経営理念とのことである。「調達力」「在庫力」「販売力」の3つを備えた流通商社である。

2． 障害者雇用の経緯、背景

平成20年8月28日現在、従業員数355人と急成長を続ける大手企業であるが、障害者の雇用は、中途障害者の1名以外なされていないところであった。「障害者雇用に関しては、後追いである。今後チャンスがあれば、大いに取り組んでいかなければと考えている」と、管理部経理課長：三浦康則氏の弁。

「ただ、業種・事業の形態として、障害者を専門的に雇用したり、部署を別個に設けてといったことは現在考えていないし、将来的にも考えられない」「そもそも扱う材料が鋼材・建材であるため、重量のあるものが大半だし、かなりの体力を必要とする。デスクワークにしてもただ机上で帳簿を整理したり、電話での応対したりだけで終えるものではなく、受注に対して在庫資材との精査など、俊敏なフットワークと正確な現状把握が要求されるし、且つ即戦力が期待される」等々の話があったが、業務内容の性格からして、障害者雇用に眼が向かなかった理由の一つだと推測できる。

今回の障害者雇用のきっかけは、「厚生労働省の障害者雇用に関する実態調査が毎年6月にあるが、一昨年度、雇用者300人超の社員を雇用する会社に見合った障害者雇用率が達成されていないことについてハローワークから指導があった」、「大分の社員数は50名弱のため、現状でよいと理解していた。支店も含めて、324名に対する雇用率という認識がなかった等々、正直なところ認識不足の面があった」とのことであった。「現在もオペレーターで適当な方がいればと、ハローワークにお願いしているところ」とのことであるが、オンデマンドでは、なかなか募集に応じる方が無いとのことである。

3． 障害者の従事している具体的な作業内容や配置等

○作業内容：一般社員に準ずるデスクワークと在庫管理

（1）「特別扱いしない」ことが最善の対策

障害者雇用の基本的スタンスは、「障害者を特別扱いしない」こと。入社時に、朝礼ではっきりと障害者のハンディなどを従業員に紹介する。そして、特別扱いすることで他の従業員との“壁”をつくらないことを重視している。

他の従業員との“壁”をつくらない方針は、障害者の“甘え”は容認しないことにもつながる。特別扱いしない思想は職場のデスク配置にも如実である。役職者も一般従業員もワンフロアーに机を並べている。壁もついたてもない。もちろん社長室もない。賃金格差もない。勤務態様も一律である。

（2）オンデマンド採用に対する段階的な業務習得対策

一般従業員と変わらない仕事をこなしてもらうことを期待している。その為にもOn the Jobで仕事を覚えてもらうようにしている。商品の種類と数、取り扱い数と在庫の関係、建築現場等々について専門的な知識が必要とされるからである。この業界では、机上の伝票処理だけでは仕事とは言わない。採用後数ヶ月の今は、まず商品を覚えることから電話での商談の仕方等々、OJTで徐々に仕事を覚えてもらうようにしている。

事務所内部(分け隔てのない配席)

左上下肢に障害のある従業員の仕事風景（一般事務）

4． 取り組みの具体的な内容、効果

（1）通勤対策の助成金の活用

採用された障害者T氏は自動車免許を取得し自家用車で通勤している。採用前の住宅からでは1時間以上の通勤になるため、通勤対策の助成金制度を活用して、会社から近い賃貸住宅を借り受けることにした。「通勤時に費やすストレスを考えると、大変ありがたいことで、感謝している。その分、仕事に専念できる」と、答えた。

（2）駐車場の配慮

少しでも身体的なハンディを軽減するために、駐車場の位置を玄関アプローチに近い場所を確保するなどしている。その他にも現状で可能な限りの配慮はしていきたい。

（3）安全対策：障害に対する配慮・・・他の従業員に徹底

特に在庫倉庫の環境は、他の従業員と区別なく、誰でも安全で快適に業務が遂行できるように整備されている。作業スペースについても可能な限り、少ない歩数で移動できるように機材を配置している。また、資材によってはかなり重量のある商品があるため、T氏の身体的負担を配慮して他の従業員が代替するような分担の徹底が期されている。このことについて、障害者T氏は「特に負担に感じることがないくらい、自然体で他の従業員が代替しているので、その分、別の仕事で、私ができることを代替したいと思っている」等、よい雰囲気の人間関係が従業員の間に根付いていることを強調した。

事業所玄関