障害者が働きやすい職場をめざして
- 事業所名
- 株式会社シンコー
- 所在地
- 宮崎県都城市
- 事業内容
- 練りゴム、自動車タイヤ用チューブ、建設・農業機械用ゴムクローラ、その他の工業用ゴム製品製造
- 従業員数
- 177名
- うち障害者数
- 14名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 技術部施設課、製造部工業用品課 肢体不自由 4 業務部購買課、製造部工業用品課、技術部品質保証課、技術部生産管理課 内部障害 1 技術部品質保証課 知的障害 7 製造部クローラ課(接着剤の塗布作業)、製造部工業用品課(脱脂・塗布作業) 精神障害 0 - 目次

1.事業所の概要
宮崎県と鹿児島県とに境を接する秀峰 高千穂の峰を仰ぎ見る都城盆地に、昭和44年8月6日、宮崎県及び旧高城町(平成18年1月1日都城市と合併)の誘致企業として九州新興ゴム株式会社が設立登記され、昭和45年2月に練りゴム、自転車チューブ・タイヤの生産を開始する。その後、平成4年1月1日に株式会社シンコーに社名を変更、平成20年8月6日創立40周年記念式典を挙行し現在に至っている。
業務内容は、創業当初は自転車・リヤカー等のタイヤを製造していたが、企業の大韓民国及び中華人民共和国の2ケ国への進出に伴い、これらの製品の製造はそちらへ移り、現在は練りゴム(900t/月)自動車タイヤチューブ(50000本/月)建設・農業機械用ゴムクローラ(3850本/月)工業用ゴム製品(キャスター・水田車輪・苗送り・除雪車用タイヤ・足ひれ・まな板・パッキン等)と、産業用から家庭用品までのゴム製品を製造している。
(※ゴムクローラとは、「芯金と補強帯をエンドレスにゴムで包んだ履帯」のこと。従来の鉄クローラに変わって、農業機械から建設機械まで幅広い用途に使用されている。)
会社の基本理念は
① Quality | : 最高の技術で信頼に応える品質を保つこと |
② Creativity | : 時代に合った独創的な製品を作り出すこと |
③ Sincere | : 誠実な対応、誠意ある姿勢で取り組む |
と、創業以来「最高の品質」、「独創性」、「誠実さ」を基本としている。この基本理念の下、会社組織は代表取締役社長以下、経営企画室と営業・業務・技術・生産管理・製造の5部門を設け、それぞれ目的達成のために全社員一丸となって邁進している。
現在の組織構成は、常用雇用者177名、そのうち障害者14名が雇用され、雇用率は11.29%となっている。障害者の内訳としては下記のとおりである。
視覚 | 聴覚・言語 | 肢体 | 内部 | 知的 | 精神 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
総 数 | 0 | 2 | 4 | 1 | 7 | 0 | 14 |
うち重度障害者 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 | 6 |
(単位:人)
2.障害者雇用の経緯・背景
障害者雇用に至ったのは、昭和61年頃、当時新規事業(工業用品部門)への拡大で人手が不足になり、当時は、求人を出しても3K職場と言われていたことから、雇用しても直ぐ辞めていくことの繰り返しが続いていた。そんな折り、「身体障害者や知的障害者の雇用に関する事業主の義務」が社会的に取り上げられ報じられるようになり、公共職業安定所の担当官から「職域によっては障害者でもできる仕事があるのでは、試しに短期間でも雇用してみたらどうか」と勧められたことに始まる。雇用当初はなかなか仕事が捗らないことも多かったが、徐々に仕事にも慣れるに従い健常者にも劣らないことが分かり、その後も雇用を続けるようになった。現在では、重度知的障害者のなかで上司の指導の下、接着剤の作成を任せられるようになった者もおり、グループのサブリーダー的役割についている。
雇用経路としては、特別支援学校(養護学校、ろう学校)、ハローワークからの紹介や福祉施設・縁故での雇用となっている。なお、内部障害者については、雇用当初は健常者であったが、中途から心臓疾患で内部障害者となった者である。
障害者の従事業務・職場配置については、製造工・製品検査・資材倉庫の管理等それぞれ障害の特性に応じて配置されているが、業務の作業内容や配置としては次のようになっている。
聴覚・言語障害者 | : 技術部施設課・製造部工業用品課 |
肢体障害者 | : 業務部購買課・製造部工業用品課・技術部生産管理課 技術部品質保証課 |
内部障害者 | : 技術部品質保証課 |
知的障害者(重度を含む) | : 製造部クローラ課(接着剤の塗布作業) 製造部工業用品課(脱脂・塗布作業) |
3.取り組みの内容
障害者を雇用するにあたり、ミスマッチを防止するために仕事ができるかどうかを見極める必要がある。このことから先ず実習を行い、仕事ができると判断した場合にトライアル雇用、この間必要に応じてジョブコーチの支援を受け、その後常用雇用に移行している。また、宮崎県雇用開発協会から独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構(当時)の各種助成金の紹介を受け、より多くの障害者の新たな雇用や、継続雇用するために各種の助成金を活用している。特に、重度知的障害者雇用については、障害者介助等助成金(業務遂行援助者の配置助成金)を活用している。この他に、平成元年度に、重度障害者特別雇用管理助成金の認定を受け通勤対策用のバスを購入し送迎していたが、平成12年頃に廃車、その後は各自で通勤していた。しかし、平成17年10月、自転車で通勤していた重度知的障害者のA氏が帰宅途中に交通事故に遭遇した。重度知的障害者についてもそれまで自転車で通勤することを認めていたが、この事故を教訓として会社で責任を持って送迎することにした。宮崎県雇用開発協会に相談した結果、初回の申請・認定から10年を経過していること等から新たに重度障害者通勤対策助成金が活用できることが分かり、早速再度送迎用バスの購入と運転従事者の委嘱の助成金を申請、認定後納車されるまでの約6ヶ月の期間については就労支援機器の貸し出しを利用することにし、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構(当時)(福岡駐在事務所)から通勤用自動車(ワゴン車)を借り受け活用した。
(※通勤用自動車(ワゴン車)の貸出は現在行われていない)


また、取り組みにおけるこれまでの問題点は次のとおり。
① 作業中に上司の言葉から差別されていると訴えてきた。また、親からもそのような電話を受けたことから、早速上司から事情を聞き、差別と思われるような言葉使いに気を付けるように注意をする。対策として、呼び捨てをしない。君付けにする。大声で指示しない。命令口調をやめる。
② 職場が暑くなると休みが多くなる。(1人休むと翌日から次々に休むようになった)対策として、夏季期間には工場内が暑くなり作業環境の悪化が懸念されるために、障害者が従事している業務場所に部分的ではあるがスポットクーラーをリースで借り受け、また、午後には1時間に10分間ずつ交替で休息をとらせるようにし、作業能力が落ちないようにしている。
③ 健康管理については、事故に繋がる恐れがあることから、毎日始業前に所属長が安全朝礼で健康面をチェックしている。その結果、体調不良の者や前夜の酒が残っているような場合には、健常者を含めて即刻帰らせるようにしている。
4.取り組みの効果
平成3年からの総務・人事担当者は、身体障害者は外見や仕草で多少の状況判別はでき対応できるが、知的障害者に対する対応の仕方が分からなく、当初はできるだけ彼らに接しないようにし、会話の少ない時期があった。そんな折り、朝夕の送迎をするようになったことが彼らとのコミュニケーションをとれるきっかけとなり、朝の「おはようございます」帰りの「さようなら」と、会社の中には健常者でも挨拶すら出来ない、いや、しない従業員がいるのにと思うようになり、それからは遠慮せずに普通の同僚として付き合うようになった。
現在は、朝送迎バスから降りてきた後に、リフレッシュコーナーで「おはよう・元気か」と声をかけながらその日の体調の様子を伺っている。終業後にはリフレッシュコーナーで帰りのバスが出るまでの時間、雑談に割り込み「お疲れさん」で送り出すようにしている。しかし、仕事の上で事故に繋がるような怠慢な行為があるなど、必要な時にはきつく叱ることも重要であると、言われている。
電車や路線バス等の公共交通機関の不便な本県では、重度障害者の通勤手段は悩ましいところである。当事業所では重度障害者の通勤対策として助成金を活用しバスを購入、事業所の責任でもって送迎している。このことから、対象障害者本人は勿論のこと、グループホームに入居している者の関係者、また、自宅からの通勤者の近親者には交通事故の心配をすることなく安心して会社へ送り出すことが出来ると大変喜ばれている。
また、障害者を雇用したことにより、一時的には差別的言葉や態度をとる従業員もいたが、事業所において適切な対応をとった結果、これらも見受けられなくなり、従業員の障害者に対する思いやりも生じている。
また、障害者雇用にあたっての注意点と考えていることはつぎのとおり。
① 募集の際はハローワークへ相談する。
② 実習をとおして「できるかどうか」を見極める。
③ トライアル雇用を併用する。
④ ジョブコーチの支援を得る。
⑤ 就労支援機器等の貸し出しを活用する。
⑥ グループホーム・施設などの協力を得る。
⑦ 安全の確保・健康管理の維持。
5.最後に
障害者・健常者に関わらず安全で安心して働ける職場が第一である。当事業所では重度障害者についての通勤は会社が責任を持って送迎している。また、職場環境も施設や設備の関係から一部には夏季に熱気が籠もる状況もあることから、その場所にはスポットクーラーをリースで借り受け設置する等の配慮がなされている。また、重度知的障害者の作業着・安全靴・手袋等は所属長の判断でその都度無償で取り替えることが出来る等の配慮がなされている。障害者の職場定着率も高く長期継続雇用に繋がり、平成19年度・20年度と2年続けて重度知的障害者が優秀勤労障害者として宮崎県雇用開発協会長の表彰を受けていることから、経営者の障害者に対する理解が深い事業所であると感じた。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。