障害者雇用で誰にもやさしい店舗づくり
- 事業所名
- 株式会社ヨークベニマル
- 所在地
- 福島県郡山市
- 事業内容
- 総合スーパーマーケット
- 従業員数
- 16,773名
- うち障害者数
- 151名
障害 人数 従事業務 視覚障害 3 店舗事務、衣料品発送 聴覚障害 10 データ入力、本部事務、精肉調理加工 肢体不自由 68 データ入力、検品荷受け確認、店舗事務 内部障害 21 データ入力、検品荷受け確認、店舗事務 知的障害 42 商品の品出し、商品陳列・整理 精神障害 7 商品の品出し、商品陳列・整理 - 目次


1. 事業所の概要
昭和23年郡山市で開業した丸紅商店がその前身であり、「商売はしても商人にはならない」という創業者の強い信念のもと、正量販売、責任販売、少量販売の原則を実践して客の信頼を得ていった。 昭和29年チェーン経営を採用。昭和36年には対面販売からセルフサービス販売方式へと転換するなど業務方式の転換と拡大を図ってきた。昭和48年にはイトーヨーカ堂と業務提携を行い、昭和55年には東証2部へ、昭和59年には東証1部へ上場を行った。
また、県内のみどりやスーパー、株式会社藤越、茨城県のスーパーかどやの子会社化を図り、現在、宮城県、山形県、栃木県、茨城県の店舗数は154店舗で売上高(08.2月期)3,199億3千1百万円の我が国有数のスーパーマーケットに成長してきた。更に、平成18年には、株式交換により株式会社セブン&アイホールディングスの事業会社となり、スーパーマーケット事業の中核会社としてグループの企業価値の向上に努めている。業務は、食品、日用品等のチェーン展開による小売りであるが、商品管理、販売、発注、配送まですべてコンピュータによる効率的な管理を行い、特に生鮮食品の提供に力を入れている。
2. 障害者雇用の方針と現況
(1)方針
昭和63年福島市の平野店がハートビル法の認定を受けるとともに、ノーマライゼーションの理念をベースにした障害者、高齢者、乳幼児を含め誰もが利用できる店舗づくりを推進したことを契機に、会社の方針として障害者雇用を本格的に開始した。以前にも障害者の雇用は行っていたが、会社にいるだけで良いという程度の位置づけであった。会社として多様なお客さまが利用できる店舗の整備を進めることで、障害者等が働く場所としても多様な提案ができるようになったという。
(2)雇用状況
平成20年6月現在、県内外の店舗等に、151名の障害のある常用雇用者がおり、全従業者数に対する雇用率は2.0となっている。障害のある従業員の概要は別記のとおりであり、内車いす使用者は18名となっている。採用はハローワークに募集をかけているが、養護学校や障害者施設にも情報を提供している。採用窓口は、人事担当マネージャーが行っており、性格、コミュニケーション能力、協調性を重視して採用しているという。その他、常時、臨時の採用も行っており、時間単位で働いている非常用雇用者は37名に上る。その内訳は、聴覚障害者1名、視覚障害者2名、 内部疾患2名、知的障害者30名、精神障害者2名となっている。
常用雇用の障害者の主な配置先及び業務は、スーパーマーケットの売場、店舗事務及び本部事務等であり、商品陳列・整理、検品、荷受け確認、仕入れ伝票入力などの仕事に従事している。配置に当たっては、障害の種類や程度、能力、性格・意欲などに考慮して行うととともに、業務についても、障害に応じてその作業工程に配慮している。通勤は公共の交通機関を利用し、自宅から通勤している者がほとんどである。給与体系は他の正規雇用者と同じで、日給・月給制及び時間給となっている。
3. 障害者雇用の実際
(1)障害者雇用は職場雰囲気を豊かに
障害者の雇用により、障害者の指導等に時間が取られ、仕事に支障が出るという意見も一部にあるが、大半の社員は、「社員の意欲向上に結びついている」とか「社員同士の融和に役立っている」という意見が多いという。例えば、知的障害者は一般的にまじめで明るく、素直で親しみを感じられる方が多いと言われているが、このような持ち味が一つの価値として認められると職域の拡大が期待されるのではないかと思われる。また、障害のある従業員に対してお客さんからも「がんばって」とよく励ましの声が掛けられるようである。
![]() |
![]() |
|||
氏名:Sさん | 青果担当 入社1.10ケ月 | 氏名:Yさん | デイリー担当 入社2.10ケ月 | |
入社経緯 | 養護学校生のときから、実習にきておりいつも明るく前向きに仕事に取り組んでくれていたので、卒業後に先生の紹介で入社した。 | 入社経緯 | 障害者福祉センターからの紹介で実習から始めた。まじめな仕事ぶりに採用を決めた。 | |
仕事内容 | 商品の品出しや売り込みの店内放送 他にもパソコンを使っての媒体作りも実施している。 |
仕事内容 | 商品の品出し、店内放送、値下販売 以前は発注もしていました。 デジプラも媒体作りもできる。 |
|
赤塚店に勤めて・・・ | 赤塚店に勤めて・・・ | |||
「青果に入って、焼き芋のリーダーをやらせて頂いて、店内放送などで売り込んで、売上が上がったのがうれしかったです」 | 「毎日、楽しいです。」 |
(2)支援体制
職場に馴染むために、採用時には新採用研修を行うととともに、経験年数に応じて他の社員と一緒に教育研修を行っている。現場でのOJT等は、各配置職場の店長等に任せており、ジョブコーチ等の外部支援は受けていないが、現在のところコミュニケーション等で大きな問題は起こっていない。余暇等についてはまったく本人に任せており、会社としては特に関与していない。基本的に、障害者の相談・指導は各配属部門の責任者、マネージャーに任せており、この部門マネージャーが困った時は、業務統括マネージャーが相談に乗っているという。
(3)養護学校等、関係機関との連携について
本事業所は、積極的に養護学校や施設から実習生を受け容れている。会社としては実習を障害者理解の機会にしているという。実習に当たって養護学校等に望むことは、挨拶や返事などの基本的な生活習慣、意欲・態度、コミュニケーション能力など、社会生活能力の育成をしてほしいこと、また、生徒の情報をきちんと伝えてほしいこと、相談したい時に、いつでも相談に乗って欲しいことであるという。特に、相談については、雇用後についてもぜひ継続して実施できるような体制をとって欲しいのが会社の強い希望であると語っていた。
(4)雇用率の達成に向けて
会社としては、非常用雇用の障害者をできるだけ常用雇用に結びつけたいと考えているがなかなか困難であるらしい。その主な理由としては、体力や意欲、通勤の問題があげられるという。これらの問題を克服し常用雇用に結びつけるためには1~3年を要するため、特に、知的障害者については、指導を繰り返し、励まして、早く環境や仕事に慣れるように地道に取り組んでいる。特に、継続的に働くためには通勤をスムーズに行うことが大きな要因であるので、家族にも通勤の支援をしっかり行って欲しいという。
4. 今後の課題
障害のある方、高齢者を含め、老若男女を問わず、どのようなお客様にも利用しやすい店舗づくりが、障害者にとっても働きやすい職場であるという基本的な考え方に立っていると感じられた。「現在は、各職場に任せて会社としては特別な支援は行っていない」とのことであるが、現在のところは、直属の上司となる各部門マネージャーや業務統括マネージャーの理解が職場環境に影響を与える大きな要因となっているような感がした。今後は、障害者にとって働きやすい職場となるよう「会社の弱いところである支援体制や教育研修体制の更なる充実を目指したい」と人事担当者は力強く語っていた。また、継続的な雇用のためには、障害者についての情報の共有と養護学校、ハローワーク等の関係機関との連携の強化が必要であると語っていたのが印象的であった。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。