事業所名

大日本塗料株式会社那須事業所

所在地

栃木県大田原市

事業内容

塗料の基礎研究・開発及び製造

従業員数

325名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	事務作業
肢体不自由	0
内部障害	3	研究・分析、営業
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 経営理念、障害者雇用の理念
2. 障害者雇用の取り組みの経緯、背景
3. 取り組みの具体的内容、その結果
4. 今後の課題と展望

事業所外観

1. 経営理念、障害者雇用の理念

（1）経営理念

創業以来培ってきた防食技術をはじめとする独自の技術により、地球環境や資源を護り、広く社会の繁栄と豊かな暮らしの実現に奉仕するとともに、良き企業市民としての自覚を更に高め、法律遵守はもとより、会社倫理規範に適合した経営を行うことにより、顧客・社会の信頼、株主の期待に応えるものとする。

（2）障害者雇用の理念

障害者の社会参加と職業的自立を図るために、雇用・就労の場を確保することが企業の社会的責任であるとの認識の下に基本的な方針を策定しており、那須事業所においても基本方針に則り積極的に障害者雇用に取り組む。

2. 障害者雇用の取り組みの経緯、背景

那須事業所は昭和63年に神奈川県横浜市から工場を全面移転し操業を始めたが、横浜工場時代から既に障害者を雇用していたこともあり、ここ大田原では新規に障害者雇用をしていなかった。しかし、企業として地域社会に対して社会的責任（CSR）を果たすべきであるとの認識の下、当社の障害者雇用の理念、基本方針に則り、障害者を雇用することにした。

大田原での障害者雇用は初めてで、どこに相談すれば良いかわからず、ハローワーク、養護学校、障害者職業センター、雇用開発協会など関係あると思われる機関に相談した。

このような状況の中で、ハローワークからタイミング良く「障害者合同就職面接会」の案内があったので、即刻求人票に記入して申し込み、当日会場では障害者14名の方々と面接した。面接をした方々は、障害の種類や程度が異なり、双方が求める仕事内容や職場環境などのマッチングに苦慮したが、3名の再面接を申込み、最終的に2名の採用を決める事ができた。

3. 取り組みの具体的内容、その結果

（1）受入れ準備

新たに聴覚障害者1名と内部障害者1名の採用が決定し、配属前に、安全衛生委員会で構内安全などの受入準備をどうするかを話し合った。

また、聴覚障害者を受入れるにあたり、ハローワークからの紹介でジョブコーチ（職場適応援助者）による支援を利用した。受入部署では、作業内容の指示伝達をどう進めるか検討し、筆談するための小さな「ホワイトボード」を購入し、専門用語を含む細かな作業内容の説明を円滑且つ確実に図れるようにするとともに、一方で、職場では電話が鳴っていても電話に出られない事を全員に伝え理解させるなど出来る限りの準備を進めた。

（2）具体的取り組み内容

今回入社した聴覚障害者は、新たに専門学校を卒業し社会人一年生として入社したため、就業規則及び社会のルールの遵守など社会人としての基本的な心構えも含め、指導を進めた。当初の主たる仕事内容は、物品発注・図書管理・技術資料のPDFファイル管理・郵便物管理である。業務内容について説明する時には、大きな声でゆっくりと顔を向き合い、話をすれば通じることを予めジョブコーチから聞いていたが、説明者が不慣れなため、ついつい早口になり、上手く内容が伝わらない事が度々あった。その結果、依頼者が意図した内容と若干異なる業務を行ってしまう事もあり、ジョブコーチに相談したら「難聴者に対し、口話中心に伝達する場合、読み取れた話しの内容しか相手は話していないと判断し、その内容は伝わらない場合がある」と説明を受けて驚いた。そこで早速、「ホワイトボード」による筆記、メール等文字による伝達に切替えた。その後、認識の食い違いは大幅に減少し、問題なく業務を任せることができた。

ジョブコーチは当初2ヶ月、2名体制で週3日の頻度で支援があり、障害者支援だけでなく受け入れ側の事業主及び職場のメンバーに対するメンタル面のアドバイスなど、想像以上の大きな支援だった。約1年が経過した現在でも時々訪れ相談にのってくれるので助かっている。また、栃木障害者職業センターでの研修会に参加し、障害者に関する知識を習得できたこともさることながら、その時同席した他社の人たちとの情報交換の輪が出来、助かっている。

内部障害のある従業員は、消化器障害で他の従業員と同じ昼食が食べられないため、自宅から持参した弁当を食べる場所として、昼休みに個室を提供している。また、重い物を持つ作業が出来ないという制限、出張が出来ないなどの制約があるため、研究部で分析及び試験・テストを担当している。さらに、得意の英語力を活かし書籍調査及び来客通訳などの活躍も期待している。

事務作業風景

分析業務風景

（3）雇用の成果

聴覚障害者・内部障害者に対して、職場の仲間が一部条件を考慮すれば基本的には同じに作業をすることが可能であることを教えられた。職場のリーダーの話しでは、仕事に対するまじめで真剣な取り組み姿勢と勤労意欲の高さは、周囲の従業員の模範となり職場に良い影響を与えているとのことだった。

毎日明るい笑顔で挨拶する姿に、「いつもにこやかに仕事をしないと駄目ですよ!」と私たちが教えられることも多くある。

4. 今後の課題と展望

この度、那須事業所で初めて障害者雇用の取り組みを進め感じたことは、障害者だから特別な仕事しか出来ないのではなく、大部分は健常者と変らない業務が可能であるということである。少なからず私たちは、誰でもが優れた部分だけではなく欠点を持っている。企業としては、健常者と障害者の区別なく、それぞれの長所を活かし、また欠点やハンディを補い合って共に世の中に貢献できる仕事をすることで自分の夢を実現する、そのような就労環境を提供していく事が大切であると考えている。

今後とも「思いやりの風土づくりにより障害者受入れ!」をキーワードに障害者の雇用に取り組んでいきたい。