「障害者に自立の場・成長の場」を作りたいという熱い思いに支えられて
1. 事業所の概要等
（1）概要
創業は、平成18年6月23日。事業内容は、輸送用機器部品の製造・設計及び設計支援。従業員数は31名である。その内、障害者を27名雇用。障害程度の内訳は、重度10名。重度以外が17名である。CAD業務に上肢障害3名・ 上下肢障害1名。製造業務には、知的障害（身体・知的障害1名含む）23名。重度7名、重度以外が16名。
グループ企業の一角に会社は設置されている。
左 西方正工場長
（2）障害者雇用の経緯・背景・方針
群馬県桐生市に本社を置く株式会社ミツバと、そのグループ会社11社による「特例子会社」として設立した企業である。
そこには、「障害者に自立の場・成長の場」を作りたいとの、株式会社ミツバ日野昇会長の強いリーダーシップが感じ取れる。
H17頃より、障害者雇用の事業継続の可能性調査を開始。一過性のボランティアとしてではなくて、事業として継続できることを前提としている。会社として「儲け」を捻出することは考えていないが、品質面・コスト面・雇用管理面など競争力を確保しつつ、グループ企業にサービスを購入してもらえる水準を目指している。
2. 取り組みの内容
（1）障害者の従事業務・職場配置
みどり市、太田市、桐生市、足利市などの養護学校の紹介により実習を実施。実習の期間内に障害者の適性を見ながら受け入れている。
・製造業務は、モーターの巻き線業務、ワイヤーハーネスのリード線加工業務、自動車電装部品の組み立て、自動車運転座席リクライニング部品組み立てなどである。作業の間違いを防止するため、作業指示書が写真入りで明示され、作業の「見える化」がこと細かに実施されている。作業テーブル極小化などの作業改善への取り組みなど、障害者が自ら全員参加で職場改善へ取り組む姿は、障害者が自立への道を歩みはじめたひとつの証である。
・CAD業務は、紙ベースの図面を電子データ化するための作業となっている。平面に表された図面から、複雑な3次元形状を読み取って、電子データ化している。部品図面を新たに企画開発する作業ではないが、それと同等の作業をこなしている。
（2）職場環境改善対策
・ 製造部門では、安全確保対策として通路と製造場所の区分表示、通路の確保、整理・整頓・清掃・清潔4S・（5S）が徹底されている。作業工程ごとに写真入の作業指示書、完成品の見本サンプル、NG製品との相違点・間違えやすい製品現物表示など、作業の「見える化」が徹底されている。
・ CAD部門では、清潔な作業場に一人一人贅沢なほどの広いスペースが与えられ快適な職場環境が確保されている。
・ その他、エレベータの設置や食堂スペース（別法人が設置）も確保されている。
（3）障害者雇用における取り組みの効果
障害者は、福利厚生事業（社員旅行・バーベキュー大会、工場祭等）や社員食堂における交流などにおいて併設企業の健常者と生活を共有しており、さらには、サッカーやリレー競技など地域のスポーツ大会などにも企業ぐるみで積極的に参加するなど、会社の内外において障害者自身の自己表現ができるようになり、自立に向けた環境が醸成されてきている。
3. その他
（1）今後の課題
ミツバグループの一員という位置付けにあり、グループ各社から仕事を受注しているが、このところ自動車関連の不況のあおりを受け、受注も減少し、仕事の確保が大きな課題となっている。
（2）最後に
「障害者の自立の場・成長の場」を作りたいという、日野会長の願いは、「障害者の中からリーダーが育って欲しい」というところにある。現在のところ、健常者が工場長や監督者を努め全体を把握しているが、近い将来には、障害者からリーダーが育ち、障害者だけの会社でも「会社」として立派に自立して欲しい。「日本一の特例子会社」を目指したい。そんな「熱い思い」に支えられている企業なのである。
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