経済環境変化の中で障害者の職域拡大を指向する
- 事業所名
- 株式会社文真堂書店
- 所在地
- 群馬県高崎市
- 事業内容
- 各種商品小売業
- 従業員数
- 1,417名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 事務処理、清掃、商品管理 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 1 商品管理、検品、コミック本の袋詰め 知的障害 8 清掃、コミック本の袋詰め、検品 精神障害 0 - 目次


(タイムクリップ群馬町店)
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
創業: | 昭和27年 |
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店舗数: | 56店 群馬38店 埼玉10店 栃木 8店 (今回、訪問した事業所 タイムクリップ群馬町店) |
全労働者数: | 1,417人、正社員255人パート・アルバイト1,162人 |
現在、障害者は10人で知的障害者8人、身体障害者2人が就労している。勤続期間が一番長い者は4年3か月。
2003年、障害者雇用率0.24%であることからハローワーク前橋の指導を受けて、3か年計画の雇入計画書を作成する。その後、ハローワーク、障害者職業センターの助言・支援により雇用形態・仕事内容について考え方を知ることになった。
当初、知的障害者中心の雇用を考えて、仕事内容は整理、清掃などの補助的業務にして、レジ・接客は行わないことにした。障害者の居住地から容易に通勤可能な大型・中型店を配属先とした。その理由は、商品量の多い店舗ならば一日分の仕事量を確保できるからである。
2. 取り組みの内容
(1)募集、採用、就職面接会
2004年3月、ハローワーク主催の面接会で障害者を初めて雇用した。最初、1カ月のトライアル雇用を行い、その後正式に採用した。この成功によって、担当スタッフは自信を深めることができた。その後、ハローワーク主催の春秋の面接会に出席を続けている。ハローワーク主催の面接会で求職希望者がいる場合、面接会後に本社で正式の面接を行う。そのとき、模擬作業をしてもらい採否を決定する。合格後、ジョブコーチの協力を得て1カ月間のトライアル雇用を行い、雇用可能と判断した場合、その後正式に採用する方法をとっている。
(2)養護学校の実習を活用
養護学校の在校生の職業実習を受け入れている。本人の能力が高く当社での勤務を希望した場合、卒業後の雇用に向けた実習を続けることもある。
(3)職場配置
現在、高崎、前橋、伊勢崎、桐生地区の10店舗に障害者を配置している。これらの店舗は、本社から障害者担当スタッフが容易に駆けつけることのできる距離にある。群馬県外の店舗には障害者を雇用していない。当社が、初めて障害者を雇用してから5年間経過しようとしている。今後、他の店舗での雇用の試みが求められていることを自覚している。新たに埼玉県内の店舗で障害者の職業実習を受け入れ始めた。ささやかな試みを続けて障害者雇用を図りたいと考えている。
(4)作業内容
作業内容は商品整理、商品棚の清掃、コミック誌のパッキング業務、商品の検品、ラベラーによる商品の値付け、ケースから商品の品出し等である。
知的障害のある従業員と身体障害のある従業員の職務について、明確に区分する方針は取っていない。しかし、職務内容を充実することによって職務満足度と就労モラールを高められると考えている。したがって、個々人の状況に応じて商品販売レジや発注業務まで担当させて職域の拡大を図っている。


(5)職域開発、組織再編
すべての店舗に障害者を雇用・配属させることは、彼らの能力を発揮させる機会を飛躍的に増やすことになる。それは、企業の雇用管理の理想としての「青写真」でもある。この「青写真」を実現するには、彼らに所定労働時間分の仕事量を提供できるかどうかにかかっている。1日分の仕事がなく、それが半日すなわち4時間程度の短時間就労となってしまうと拘束時間の減少や疲労蓄積などの労働者福祉の面では好都合であるとはいえ、職業生活の自立から後退してしまい、労働のもつ充実感や収入の多寡に影響を与えてしまう。また、短時間就労では、社会保険に加入できないことになる。したがって、1日6時間以上の仕事量確保が障害者雇用の越えなくてはならないハードルである。
仕事量確保についての出発点は、たとえ困難であって直ちに実現できない場合でも、店舗内で創意工夫すれば道が開かれるとする考えを持つことである。それは仕事量確保の問題から逃げないということである。単なる雇用率達成を目的とする義務的雇用管理を乗り越えて、従業員として迎え入れられる障害者の職業生活を確保するために、避けてはならない努力だと考えている。
(6)人的支援
店舗には障害のある従業員を指導・育成する担当者を選任している。職務経験、他人への配慮・明るさなどから選任される。他の従業員と同様に声かけを行い、特別にやさしい言葉を使うこともなく、会話を普通に行うようにしている。
(7)問題発生時の社内体制
時として問題行動が見られることもある。それに対する対応方法は次の3点である。
① 縁あって当社に入社してくれた人である。その人の幸福を願う方向で対処する。
② 一度の問題発生で解雇などの結論は考えない。再度チャンスを与えて改善を願う。
③ 家庭内の問題が影響して職場で問題行動が発生することがある。そのような場合、直ちに家族に連絡を取り、協力を要請する。
(8)労働条件
拘束時間:障害のある従業員9:00 ~ 16:00 他の従業員 9:00 ~ 18:00
店舗の閉店時間は24:00であるが、障害の状況等に留意し他の従業員が就労する。
(障害のある従業員の状況によっては終業時刻が 17:00,18:00のこともある)
(9)通勤時の安全配慮・コミュニケーション
視力障害のある従業員の自転車通勤について、通勤時に交通事故に巻き込まれる心配があるため、障害の状況に留意し、できるだけ日没前に自宅に着くように明るいうちの退社を促している。
シフト制などの勤務形態が個々に異なるので、コミュニケーションを促進するイベントの実施は困難である。社員の送別会などが交歓の場になっている。
3. 最後に
(1)経済環境変化と職域問題
書店を取り巻く経済環境も当然、市場社会の競争原理の下にある。コスト削減と合理化の取り組みは、企業競争力を高めるための基本的課題である。当社でも障害者が従事しているコミック誌のパッキング業務は、店舗単位で行うのではなく流通加工センターで統一的・集合的に行うことが進んでいる。それに伴い障害者が行う業務が縮小してきているのも事実である。今後は、障害者の業務の幅を広げることも必要となるが、店単位での障害者雇用だけでなく、特定業務を行う専門職的位置づけでの新たな雇用の道も考えていく必要がある。
(2)職務充実などの課題
会社スタッフは、障害者の職務の充実を常に考えている。所定労働時間のすべてを商品棚の清掃をするだけでは、職務満足度は十分なものにはならず、長期雇用も懸念される。職務の充実感を高めることによって、所定労働時間中に店舗の担当者に対して依存することも少なくなると考える。職務充実と自立性は相対関係にあると考えている。担当者も責任ある自己の業務を抱えており、それに必要な時間も割かなくてはならない。
障害者雇用についてのマニュアル(手順書)などが必要だと考える。また障害のある従業員の評価制度などの導入も考えられる。これらの実施によって職務課題への挑戦を高めることができるならば、職務満足度の向上に効果あると考える。
健常者と同様に、障害者も職場を生活設計と生きがいの場にしている。このよろこびを共有できる組織としてあり続けたい。
当社のキャッチフレーズは、やさしい・あたたかい・たのしさである。このフレーズは当社の接客の心としてだけでなく、同じ職場の仲間への心としても考えている。


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