事業所名

FSグリーンネット株式会社（古河スカイ株式会社の特例子会社）

所在地

埼玉県深谷市

事業内容

工場内の緑化・清掃などの美化作業
名刺印刷（古河スカイグループより受託）
アルミ材の研磨作業（技術研究所より受託）
アルミ加工品の組立て（関係会社より受託）

従業員数

18名

うち障害者数

10名（知的の重度6名）

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	10	緑化、清掃等美化作業、名刺印刷、研磨作業
精神障害	0

目次

1. 事業の概要と設立の経緯
2. 取り組みの内容
3. 支援機関との連携と対応
4. 今後の課題

事業所外観

1. 事業の概要と設立の経緯

・2007年1月15日設立。4月に事業開始。5月に古河スカイ特例子会社の認定を受けた。会社設立にあたっては、障害者雇用と自立支援について企業の社会的責任を基軸におき「社会に貢献できる事業に取り組もう」の古河スカイ初代社長加藤仁氏の強い思いが込められている。その後も、親会社経営幹部の強い意志は、事業の支えとして引き継がれ、当社の経営基盤となっている。会社名「FSグリーンネット」は、親会社社員からの公募231件のなかから選ばれたもので、会社の中核事業「緑化」をイメージし、本社を置く深谷市を中心に地域および親会社各事業所へのネットワーク展開を想定したものである。

・親会社に関係する付帯事業が中心であり、現在は、深谷工場 15万坪の緑地帯の管理、構内清掃を中核として、親会社全事業所の名刺印刷、技術研究所付帯作業の材料研磨、関連会社のアルミ加工品組立てなどを行っている。

・スタートメンバーは6名で、特別支援学校の新卒者1名、親会社からの転籍者2名、系列会社からの転籍者3名の構成だった。2009年3月で10名になったが必ず事前に実習を行い、その間に双方で納得できる人間関係を構築することに努めている。

・従業員数：18名（うち障害者数 10名（知的の重度6名））

・勤務時間：原則 月～金 8時～16時40分

2. 取り組みの内容

（1）作業内容

・現在、深谷工場内の緑化・清掃作業には全員就労を基本とし、非定常作業である名刺印刷、材料研磨、アルミ加工組み立てには、個人特性と業務の特性をマッチングさせることに留意している。指導員を4名配置し、業務の難易度と作業適応状況をみながら、直接・間接に指導を行っている。

・10名全員がフルタイム就業で、「8時から16時40分（実働7.75時間）」である。毎朝、就業前に輪になってラジオ体操を行い、朝礼、安全唱和の後、定められた場所で業務に就く。

※作業の概要

①緑化作業

・年間を通じて、15万坪の敷地面積を持つ深谷工場緑地帯の維持管理を行う。緑化用治具、工具を用いて樹木の剪定、芝刈り、除草、落ち葉回収を行うが、夏場には大型トラクターによる芝刈りと並んで、手作業による芝生内の雑草取りがあり、機械化が困難な作業が併存する。

②清掃作業

・工場事務所、研究所の床・トイレ、ロッカールーム、浴場清掃を行う。この作業は、毎日行うもので、大型清掃機（助成金受給設備）を使用した床清掃も定期的に行い、モデル工場としての美観確保に留意している。

③名刺印刷

・親会社役員をはじめ、全事業所社員の名刺を印刷している。FAXを介して受注、即日印刷し、社内便を利用して1～3日中に納品できる体制をとっている。

④材料研磨

技術研究所におけるアルミ組織マクロ観察に必要な試料表面の鏡面研磨を行う。そのため、作業室を改造して機器を設置。約1年間の研修、実習を行い、現在、3名の障害者がオペレーションに就いている。材料研磨機、試料装着機器、乾燥機、顕微鏡など作業に必要な機器類一式は総額で数百万円の高額となり、これに助成金が適用出来たことは職域拡大に非常に役立っている。

朝の安全唱和

高木の枝打ち作業

芝刈り

トラクターで芝刈り

センター周辺の清掃

ロッカー室の清掃

名刺印刷

研磨

（2）定着への配慮

・知的障害者の持つ「個性」を重視し職務配置を行っている。定常作業と非定常作業を組み合わせ、作業の連続性による精神的疲労、不安定に配慮し、作業の組み替えローテーションの活用を通じて一人一人の業務遂行能力と意欲の向上を図っている。

・管理面で最も重視することは「安全の確保」であるが、同時に「障害者は、その歩みは遅くとも必ず能力の向上は図れる」ことを念頭に「あきらめないこと」を指導方針として就労定着に留意している。そのために製造企業の通念である「5S（整理、整頓、清掃、清潔、しつけ）」に加えて「3S（始末、習慣、相談）」を現場作業の重要課題と位置づけ、特に「相談」については、個人の悩みに対して会社として積極的に関わっていくこととした。そのため、社長による全社員定期ヒアリングの他、随時「生活相談員」による相談体制を敷いた。

・知的障害者が抱える問題には、企業外で起こるものが多く、それも生活拠点である家庭やグループホームに関連する場合が多い。本来、企業が関与すべきことではないが、就労に影響がでる場合が少なくないため、関係機関と連携を取り、必要に応じて支援会議を開いて対応している。

（3）助成金の活用

・市場経済の中で収益を上げ経営を維持していくことは、特例子会社にとっては重い課題であるが、そのため、これを支援する国の助成金制度は大変重要である。当社は設立準備段階から関係機関の助言を得て、助成金の活用を図ってきた。（次のとおり）

＊障害者福祉施設設置等助成金（集会室）

＊障害者作業施設設置等助成金（名刺プリンター/研磨機/大型清掃機）

＊業務遂行援助者の配置助成金（障害者指導員）

特に、2008年の秋に職域拡大のため開始した材料研磨作業は、作業に必要な研磨機とその付帯機器が高額であったため、これに対する助成金の認定は事業推進に大きな力となった。

3. 支援機関との連携と対応

・会社を立ち上げるにあたっては、多くの支援機関のサポートを受けている。深谷市を中心とする社会福祉法人、授産施設、特例子会社など、障害者が実際に就労している現場を見学し、「障害者との接し方、問題点への対応の仕方、就労への動機付け、管理指導体制」など直接聞く機会を得たことは、会社の立ち上げと事業開始に大変役に立った。訪問した法人数は50ケ所以上になる。

・一方、行政機関との連携は「必須」であり、当社においては深谷市、ハローワーク熊谷、障害者就業・生活支援センター、埼玉障害者職業センター、埼玉県雇用開発協会、埼玉県障害者雇用サポートセンター、等からの支援、および本庄養護学校をはじめとする近隣の養護学校に多くの支援を受けている。

・「支援会議（連絡会議）」は、各支援機関担当者が10名程度出席して行う場合が多く、 ここでは、本人の特性や就労上の留意事項について協議する。また、就労後もジョブコーチの支援を利用することが多く、必要に応じて来社し、本人との面談や当社への助言などにより対処している。これらの会議を通して「問題の共有化と解決の方向付け、実施結果のレビュー」を行っており、就労定着を図るうえで、大変役立っている。

4. 今後の課題

（1）職域の拡大に向けて

・障害者雇用は、毎年3名前後を計画している。さらに雇用を拡大するためには、「優秀な指導員の確保」と並んで「障害者の特性にマッチングした職域拡大」が必要である。現在その事業の殆どを深谷地区で展開しているが、現在計画中の職域拡大案件は、古河スカイ小山工場への展開、深谷市公共施設緑地帯の定期除草、関係会社のアルミ加工品組立て作業の拡大などである。

・小山工場への展開は、2009年度下期に指導員、知的障害者数名を採用して、緑化、清掃業務を行う計画である。

・親会社以外の外部の仕事を請負うことは「付加価値のある事業展開」の成否を占うもので、経営上最も重視すべき課題と考えている。

（2）当社の目指すもの

・当社の2009年度会社方針は「安全を守り仲間と協力する」ことと「新しい仕事にチャレンジする」ことを掲げた。知的障害者に、仕事をすることの意義をメッセージとして伝えるためのシンプルな指針とした。

・一方、親会社の経営理念の一項に「徳のある企業を目指す」とあり、行動指針には「社会貢献活動を推進・支援する」ことをうたっている。こうした理念のもとに、親会社は「特例子会社」を設立するにあたって、就労可能な障害者は企業が雇用し、就労困難な障害者には、別な形で支援することとした。

・深谷地区では、「深谷市古河スカイ障害福祉基金」を設立し、毎年寄付を行うことを通して市内の社会福祉法人や授産施設など支援を必要としている施設に「施設改善」の支援を行っている。企業が、社会的責任を果たすには様々な方法があるが、当社は親会社の理念を共有し、一層質の高い社会貢献を目指す。

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