小集団活動により「分かりやすい職場づくり・作業手順・清潔で明るい職場環境」を推進し、永年勤続を実現している企業
- 事業所名
- 東京ホールセール株式会社
- 所在地
- 東京都府中市
- 事業内容
- 毛皮・皮革・和服・絨毯・ぬいぐるみ等のクリーニング、低温低湿保管、防水・撥水・防虫・防災等の特殊加工
- 従業員数
- 164名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 インテリア仕上げ、皮革仕上げ 肢体不自由 0 内部障害 2 営業ルートセールス、インテリアカーテン全般 知的障害 3 和装包装、インテリア入出庫、皮革仕上げ 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
(1)概要
会社設立 | 昭和30年12月 |
資本金 | 1億6千万円 |
従業員数 | 常用雇用者164名(うち 障害者7名 平成21年2月6日 現在) |
*社名のホールセール(Whole Sale)は卸売業という意味であるが、実際には街のクリーニング屋さんではその処理が難しい皮革などのクリーニングを街のクリーニング屋さんから受注している企業である。
(2)経営基本理念
①私たちは、クリーニングを通じて、世の中をより美しく、より明るくするために、常に最善のサービスをもって、社会に貢献する。
②日私たちは、堅実なる経営に専念するとともに、常に旺盛なる開拓者精神をもって、新しい 分野の開発、技術の革新を図り、絶えず前進する。
③私たちは、誠実、和協を旨とし、明るい職場、よい人間関係を確立する。
(3)営業内容
① クリーニング業
毛皮、皮革、和服、ウエディングドレス、高級衣料、絨毯、皮革ソファー、靴など
② 保管業務
毛皮・皮革・和服・その他高級衣料の低温低湿保管
③ 特殊加工業務
防水・撥水・防虫・防災等の加工、毛皮・衣類の真空パック、染色、リフォームなど
④ 絵画レンタル業務
クリーニング店舗、ホテル、レストラン、オフィス、一般家庭
2. 障害者雇用の取り組み
(1)同社は、歴史的に創業者の障害者に対する理解が原点となり、社会福祉の一環として経営理念として位置付けられ、創業当初から障害者雇用に力を注いできている。
その実績の証として、昭和35年9月の障害者雇用週間に東京都知事よりの表彰を受け、その後、障害者雇用促進の寄与による労働大臣表彰、障害者自身の優秀勤務者として労働大臣表彰、社団法人東京都障害者雇用促進協会(現東京都雇用開発協会)表彰など、数々の表彰を受けている。
雇用障害者は、現在勤続年数が40年を超える社員が2名おり、そのほか大半の人が永年勤続者である。
昨今の厳しい経済環境の中でも社風である「人を大事にする」という思いが全従業員の中に脈々と流れ、障害者の永年勤続の支えとなっている。
(2)障害者雇用の現状(平成21年1月末現在)
・雇用障害者数:7名 (カウント数:9カウント)
・障害種別の人数
身体障害者:4名(うち重度障害者:2名) 知的障害者:3名
・実雇用率:5.4%(9カウント/164人)
・障害者の障害種別、年齢、勤続年数、職域
障害者 | 障害の種類 | 年齢 | 勤続年数 | 職域 |
---|---|---|---|---|
A | 聴覚2級 | 59歳 | 41年 | 工場作業(インテリア仕上げ) |
B | 聴覚6級 | 56歳 | 31年 | 工場作業(皮革仕上げ) |
C | 内部3級 | 60歳 | 6年 | 営業集配(営業・ルートセールス) |
D | 知的4度 | 59歳 | 43年 | 工場作業(和服包装) |
E | 知的4度 | 45歳 | 25年 | 工場作業(インテリア入出庫) |
F | 知的4度 | 29歳 | 11年 | 工場作業(皮革仕上げ) |
G | 内部1級 | 51歳 | 1年 | 工場作業(インテリアカーテン) |
*クリーニングは、大型洗濯機で行われるが手作業による部分も多く、ここでは殆どの障害者が長年の経験により職人的な技術を身につけ、ベテラン社員として認められている。
(3)障害者雇用に対する職場環境づくり
レインボーサークル(RC)活動
同じ職場の人たちが、より良い仕事を行うために自主的・自発的に集まった小グループをレインボーサークルと定め、このサークルがお互いに知恵を出し合い、誰もが常に安全に、正しい仕事ができるように職場環境の維持・管理及び改善を継続的に行うグループ活動である。
現在、全社で25のサークル(小集団)が下記の活動を積極的に行っている。
このような活動にも障害のある従業員は、積極的に参加し実績を挙げており、みんなでその活動を評価し合っている。
活動内容は、下記のとおり。
① 5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)
活動は、各職場から選出された8名(1職場、1名)による5S委員会のメンバーが 毎月2回(1日、15日)、各職場を巡視し、下記の要領で審査を行い、2回の総合点で 1位から5位までの順位を決め社内表彰(報奨金を含む)を行うとともに全職場の結果を掲示している。 更に優秀な職場については、年間表彰も行っている。
*審査内容
・作業服装(帽子、三角巾、作業服、作業靴など)(躾)
・作業態度(躾)
・整理・整頓(机、棚、バスケット、機械工具、清掃用具など)
・清潔・清掃(エアコン、機械清掃、ゴミなど)
*評価方法と評価基準
・各委員が「5S採点評価表」に基づき1項目、5点満点で評価を行う。
・評価基準
5:大変きれい、4:きれい、3:普通、2:汚い、1:汚れが目立つ


*工場の環境美化
業界としては、年間の中で4月から7月までの繁忙期と2、3月の閑散期があり、この閑散期に従業員の諸々の訓練や日頃できない職場の整理・整頓・清掃を集中的に行っている。工場の環境美化は、例えば床の塗装などはできる限り社員が行うようにしている。その理由は、自分が手をかけたものは、心が入り大事にするからである。

② VM活動
VMとは、Visual Motivationの頭文字の略語。「視覚に訴えてヤル気を起させる動機づけ」を促し、職場内の危険個所や改善を要する所などを写真に撮り、視覚に訴え、自発性を引き出すこと。即ちスナップショットによる改善法と呼ばれるのがVM法のルーツである。
同社では、この手法により、分かりやすく、一目でその内容を伝えるために、文字の大きさ、色の配分などを考え、部署、職場名の表示を行っている。このような発想が新たな工夫を生み改善活動にも寄与している。また、職場の現状を撮影した写真を通して見ることは、より現場を客観的に見ることができ改善提案の原点にもなっている。
この活動によりもたらされた効果は、下記のとおりである。
*日頃から不備、不安全箇所に注意することから、他の色々な所にも目配り、気配りができるようになった。
*気配りができることで、改善の着眼点が分かるようになり、提案ができるようになる。
*小集団活動との相乗効果も大きくなった。
*インテリジェンスにあふれた職場になり、自分の職場に自信が持てるようになった。
・CD(Color Dynamic) の事例
色に意味を持たせ、工程や納期管理等に活用している。職場は人生で一番多くの時間をすごす場所であるからこそ、働く喜びを醸し出す職場環境を作るためにも明るい色を使うことを心掛けている。




・ピクトグラムの事例
絵文字は、健常者も障害者も同じ認識を持つことができ、然も言葉による伝達に比べ時間がかからない利点がある。




③改善・提案活動
同社の提案活動は、日常化した活動として定着しており、平成元年からの提案件数の推移は次のとおり、積極的に取り組んでいる。平成元年~6年 年間総件数約4,900件から約8,700件、一人当たり約31件から57件、平成7年~19年 年間総件数約700件から約1,600件、一人当たり約5件から10件。上記のデータは、スタート当初の6年間は、改善する事項が多数あり、その後は、改善項目が徐々に減少してきたものと思われる。また、提案内容も質的に変化してきている。提案に対する報奨金制度も充実しており、社員の提案に対するモチベーションアップに繋っている。提案内容は、前述のCDの事例やピクトグラムの事例などに見られるように職場の至るところに活かされている。

(4)ユニークな取り組み
① 朝礼時の「文字掲示」による講話
毎日の朝礼で職場のリーダーから最近の世の中のトピックス、新規事業での新しい試みなどをテーマに3分程度の講話を言葉だけでなくその概要を簡単に纏めた「文字掲示」で行っている。このような講話をすることでリーダーのプレゼンテーション能力向上にも役立っている。

② 基本動作訓練
毎月曜日の朝礼では、講話を行っており、その際に下記の基本動作訓練を行っている。
1.「休め」:休めの正しい動作の見本を示し、全員がそれに倣う。
2.「気を付けい」:正しい姿勢の見本を示し、全員がそれに倣う。
3.「おはようございます」:唱和する。
上記を6回、繰り返し行う。
(5)助成金の活用
東京都雇用開発協会に申請の障害者雇用納付金制度に基づく「奨励金」の受給。また、ハローワークに申請の「特定求職者雇用開発助成金」を受給している。
(6)ボランティア活動
社団法人「小さな親切運動」運動本部に加入し、毎月第3火曜日を「参加の日」として定め自主的に朝7時半に出社し、工場の前と付近の公道約200~300Mを清掃している。このような活動にも特に勤続の長い障害者の方が積極的に参加している。
3. 今後の課題
障害者雇用に対する、創業当初からの姿勢を変えることなく、今後も継続的に取組んでゆく中で、障害を持つ人たちが「一人三役」の仕事ができるようにするための職場環境と管理体制(職業教育、工程管理など)作りに取り組んでゆくことである。
副理事長 小林 幸夫
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